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研究概要(2021年度)

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研究概要

生物薬品部は,生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)の品質・有効性・安全性確保に資するレギュラトリーサイエンス研究を行っている. 令和3年度は,前年度に続きコロナ禍にあったが,2年間のパンデミックの経験により,国内での医薬品の開発・製造・安定供給の必要性が強く認識され,政府施策としてワクチン開発・生産体制強化戦略や緊急時薬事承認制度について議論が進む等,今後の新興再興感染症やその他の疾患の予防・治療のための創薬基盤整備を図る機運が高まった.バイオ医薬品に関しても,上記戦略の中で,バイオ医薬品・ワクチンのデュアルユースの製造設備といった技術的には難易度が高いと思われる新たなコンセプトも提示された.
 規制関連では,令和3年10月29日にICH Q12「医薬品のライフサイクルマネジメントにおける技術上および規制上の考え方に関するガイドライン」に関する国内通知が発出され,承認後の様々な変更管理の円滑化に役立つ枠組みが示された.また,改正薬機法施行の一環として,これまで製造販売承認書における製造方法欄にのみ認められていた軽微変更届け出対象事項が規格及び試験方法欄にも導入される等,ライフサイクルマネジメントの効率化のための取り組みが続いており,令和4年3月にステップ2に達したICH Q14「分析法の開発」とも連動して,医薬品の管理戦略構築と変更管理全般において,リスクベースの取り組みがより普及していくと考えられた.
 新たな製品の承認に関して,令和3年は,18品目の新有効成分バイオ医薬品が承認され,うち11品目は抗体医薬品であった.抗体医薬品11品目のうち2品目は抗体薬物複合体,2品目は新型コロナウイルスに対する抗体であり,その他に,二重特異性抗体や,これまでにない標的分子やその受容体に対する抗体医薬品も含まれ,抗体医薬品の開発品目数の増加と多様化が更に印象付けられた.バイオ後続品は4品目が承認された.
 このように,アンメットメディカルニーズを満たす新規バイオ医薬品の開発と,臨床上の有用性が確立されたバイオ医薬品に対する後続品の開発・普及への期待が高まる状況のもと,バイオ医薬品等に関するレギュラトリーサイエンス研究として,生物薬品部では以下のような研究と厚生労働行政への協力を行った.
 新型コロナウイルスに関連する生物薬品部での研究としては,前年度に続き,厚労省事業による抗体検査の性能評価に関する研究や,AMED研究による治療用モノクローナル抗体の研究が進展した.本邦で2品目目として承認されたmRNAワクチンへの異物混入問題では,注射剤の不溶性微粒子試験第2法に関する研究成果を活用し,所内各部で連携して取り組んだ異物の評価に貢献した.
 ICH Q12及び改正薬機法により設定された新しい規制ツールの一つであるPACMP(承認後変更管理実施計画書)については,欧米でバイオ医薬品での利用が多いシステムであり,本邦でもバイオ医薬品において有効活用されることが期待されることから,抗体医薬品原薬のスケールアップを伴う製造所追加に関するモックアップをAMED研究班で作成し,生物薬品部HPで公表した.規格及び試験方法への軽微変更届出事項の導入に関しても,オリゴ糖プロファイルを例に対象事項の事例を検討し,厚生労働省事務連絡として発出された.
 バイオ医薬品の品質評価に関する研究では,AMED創薬基盤推進研究事業における官民共同研究を継続し,バイオ製薬関連企業26社及び大阪大学と共に,先端的分析技術を用いたタンパク質凝集体評価法,宿主細胞由来タンパク質試験法,糖鎖分析法等に関する研究を行った.研究班での取り組みの成果として,バイオ医薬品の不溶性微粒子試験における有用性が期待されるフローイメージング法や,N結合型糖鎖分析手順等に関する日局参考情報案を作成した.多重特異性抗体に関する研究では,Fc結合性ペプチドを利用した新規標識手法により作製された抗体の特性解析や,低分子二重特異性抗体の生物活性等に関して,品質確保に有用な知見が得られた.また新たに,次世代抗体医薬品の品質確保に関する技術的研究として,クライオ電子顕微鏡を用いた解析,LC/MSを用いたMulti-attribute methodの活用,部位特異的に修飾された抗体薬物複合体の特性解析等の取り組みを開始した.
 特筆すべき成果として,令和3年9月6-7日にオンライン開催された第28回日本免疫毒性学会学術年会において,青山道彦研究員が抗体薬物複合体の非標的細胞への取り込みと毒性に関するポスター発表 “Fcγ receptor-dependent internalization and off-target toxicity of antibody-drug conjugate aggregates“を行い,第28回日本免疫毒性学会学術年会 年会賞を受賞した.本発表の内容は,Pharm Res. に原著論文としても受理・掲載された.
 これらの他,バイオ医薬品の中でも新しいモダリティーとなるエクソソーム製剤に関して,PMDA科学委員会「エクソソームを含む細胞外小胞(EV)を利用した治療用製剤に関する専門部会」の議論に協力し,確立すべき評価手法等について検討を進めた.
 令和3年度に生物薬品部から発表された主な論文は,以下の通りである.鈴木,橋井,多田,石井による論文“The influence of antibody engineering on Fc conformation and Fc receptor binding properties: Analysis of FcRn-binding engineered antibodies and an Fc fusion protein”(mAbs 2021)では,FcRn親和性改変抗体とFc融合タンパク質について,水素重水素交換質量分析(HDX-MS)やFc受容体結合性解析を行い,これらの改変がFcの立体構造や機能に及ぼす影響を明らかにした.
 柴田,原園,木吉,石井による論文“Quantitative Evaluation of Insoluble Particulate Matters in Therapeutic Protein Injections Using Light Obscuration and Flow Imaging Methods”(J. Pharm. Sci. 2021)では,市販タンパク質医薬品注射剤10製品について,含まれる微粒子をフローイメージング法と現行法である光遮蔽法で測定し,含まれる微粒子の特性(粒子径,形態,数など)を明らかにするとともに,フローイメージング法の有用性を明らかにした.
 柴田,原園,石井らによる論文“日本薬局方注射剤の不溶性微粒子試験法 第2法 顕微鏡粒子計数法に関する検討”(医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス 2021)では,第2法顕微鏡粒子計数法(顕微鏡法)におけるフィルターの種類と照射方法の違いが計測結果に及ぼす影響を評価すると共に,顕微鏡法でタンパク質に由来する不溶性微粒子を測定する際の留意点や問題点の一部を明らかにした.
 青山,多田,石井らによる論文“Fcγ Receptor-Dependent Internalization and Off-Target Cytotoxicity of Antibody-Drug Conjugate Aggregates”(Pharm Res. 2022)では,抗体薬物複合体(ADC)の凝集体によるオフターゲット細胞毒性について評価を行い,ADCの凝集体はFcγRの活性化を介し,抗原を発現しない非標的細胞内に取り込まれることで高いオフターゲット細胞毒性を示すことを明らかとした.
 柴田,西村,石井らによる論文“Evaluation of the analytical performance of anti-SARS-CoV-2 antibody test kits distributed or developed in Japan”(Bioanalysis 2022)では,新型コロナ患者血清を混合して調製した標準品を使って,国内で開発又は市販されている抗コロナ抗体検査キットの一斉性能評価試験を実施し,殆どのキットで新型コロナウイルスに対する抗体を検出可能で,測定の精度に大きな問題はないと考えられたが,各キットで陽性判定基準が異なることが明らかになった.
 柴田,日向,石井らによる総説” バイオ医薬品の連続生産に関するPoints to Consider”(日本PDA学術誌 GMPとバリデーション 2021)では,産官学で構成されたワーキンググループでの議論に基づき,バイオ医薬品の連続生産の管理戦略を検討するにあたり考慮すべき主要な事項についてまとめた.現時点でバイオ医薬品に特化した連続生産に関するガイドライン等は発出されておらず,連続生産を導入するにあたり有用な指針となることが期待される.
 令和元年度から開始された厚生労働省の後発医薬品等品質確保対策事業では,引き続き,バイオシミラーの品質確保のための調査と製品の試験を行った.国内で流通しているバイオシミラー製剤の試験は,公的試験検査として,4製剤を対象に,生物活性試験あるいは純度試験を実施し,規格への適合性を確認した.バイオシミラーに関しては,ジェネリック医薬品で問題となった品質管理体制の不備に関する指摘はなされていないが,安定供給には問題が生じており,その一部は海外からの原薬の供給の問題と言われている.バイオシミラーに関しても,国内での製造・品質管理の体制を強化する必要があると考えられ,このような品質情報の継続的な収集と検証が必要と考えられた.

研究業績

1.バイオ医薬品の品質評価に関する研究

1) バイオ医薬品の凝集体/不溶性微粒子試験法の開発と標準化
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

動的光散乱法と超遠心分析法に関する共同測定を実施し,機関間差及び機種間差などの分析性能を評価した.フローイメージング(FI)標準的試験法案を最終化した.

2) 標準的な糖鎖試験法の開発
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

O-結合型糖鎖プロファイル法の共同測定を実施し,O-結合型糖鎖プロファイル法の分析手順を作成した.また技術の進歩に対応した日局糖鎖試験法の修正案を作成した.

3) 宿主細胞由来タンパク質試験法に関する研究
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を用いたHCPの同定法・定量法におけるバリデーション,システム適合性及び試験成立条件の要件を整理し,実施例を提示した.また,新たな試料調製条件を用いて,LC/MSによるバイオ医薬品製剤中のHCPの検出感度が向上することを確認した.

4) バイオ医薬品の分析法開発におけるAnalytical QbD活用に関する研究
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

バイオ医薬品の品質評価に用いられるcell-based assayによる生物活性試験及びサイズ排除クロマトグラフィーによる純度試験を例に,AQbDを活用した分析法開発の具体例を検討し,事例として示した.また,生物活性評価に用いられるバイオアッセイの信頼性確保に関する重要事項をまとめ,日局バイオアッセイ一般試験法の案を作成した.

5) Fc受容体固定化カラムを用いた抗体医薬品の特性解析法の開発
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

G2の糖鎖を持つFcとFcγRIIIaとの複合体を調製し,東大との共同研究により結晶化を行った.得られたタンパク質結晶を用いてX線結晶構造解析を行い,構造を明らかにした.

6) LC/MSを用いた血中抗体後続品の構造特性評価に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

前年度に引続き,共同研究機関により収集された臨床検体由来抗体医薬品先行品及び後続品の糖鎖プロファイリングを行い,比較データを収集し,先行品と後続品で糖鎖プロファイルの変化の傾向に差異は認められないことを明らかにした.

7) バイオ後続品の同等性/同質性に用いられる生物活性評価法に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

アフコシル糖鎖含量の異なる抗体医薬品モデル試料を用いて,FcγRIIIa受容体との結合,FcγRIIIa発現レポーター細胞の活性化,末梢血単核球に対する抗体依存性細胞傷害活性評価系を対象に,各評価系の分析性能に及ぼすFcγRIIIa遺伝子多型の影響と各評価系の生物活性の識別能を解析し,バイオ後続品の同等性/同質性評価に用いる生物活性試験の選択における留意事項を明らかにした.

8) バイオ後続品の同等性/同質性評価に用いられる品質評価手法に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

バイオ後続品について複数ロットを入手し、凝集体及び不溶性微粒子の他,電荷不均一性,糖鎖プロファイル,抗原及びFcγRに対する結合活性などの品質評価項目についてロット分析を行い、製品間差やロット間変動が認められたものの.品質に著しく影響しそうな変動は無いことを確認した.

9) 次世代抗体医薬品のバイオトランスフォーメーション解析に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

Lys修飾型及びCys修飾型ADCを測定対象として,インタクトMSによるヒト血漿中ADCの分子不均一性評価手法を構築するとともに,インキュベート期間の異なるヒト血漿中ADCの薬物抗体比(DAR)の変化の解析に応用できることを確認した.

10) 次世代抗体医薬品の安定性評価手法に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

CCAP(Chemical Conjugation by Affinity Peptide)法によってペプチドをコンジュゲートした抗体と、DOTAをコンジュゲートした抗体に関して,細胞アッセイ,熱安定性評価,親和性解析などの特性解析を行った.コンジュゲートによって,抗体分子全体の物理化学的性質や生物活性が顕著に変化する分子メカニズムを明らかにした.

11) バイオ後続品に関する市販後安全性調査と品質確保に関する研究
  (一般試験研究費)

国内で流通するバイオ後続品製剤の品質・安全性および供給に関する情報を収集した.一部の製品では出荷調整が行われていることから,バイオ後続品においても安定供給が課題となっていると考えられた.

12) 次世代抗体医薬品の実用化に向けた品質評価及び管理手法に関する技術的研究
  (AMED 次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業)

次世代抗体医薬品等の製造に用いられる細胞基材について,先端技術を用いた評価法と海外規制動向に関する調査を行い,ICH Q5B, Q5Dガイドライン策定以降に課題となった事項を整理した.最新の技術及び規制動向を反映した細胞基材の開発・利用に関する指針作成を行うワーキンググループを構築した.

13) 質量分析を利用した次世代抗体の構造特性評価手法の確立
  (AMED 次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業)

MAMによる次世代抗体の構造特性評価手法を確立する一環として,複数の市販抗体医薬品を分析対象として,自動分注装置を用いた自動前処理システムを構築した.

14) 微生物等を用いて創製される抗体医薬品の構造特性解析
  (AMED 次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業)

これまでに構築してきたLC/MSを基盤とするペプチドマッピング及び糖ペプチド解析技術等により,研究班で創製された酵母由来の抗体関連タンパク質の結合糖鎖の構造,グライコフォーム,及びジスルフィド結合を明らかにした.

2.バイオ医薬品の有効性・安全性評価に関する研究

1) LC/MSを用いた高分子薬物濃度測定法に関する研究
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

血中バイオ医薬品の濃度測定のための分析法最適化とバリデーション結果をもとに,LC/MSによる抗体医薬品の血中薬物濃度測定に関する技術的要件を取りまとめた.

2) 多重特異性抗体の生物活性・免疫作用評価に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

前年度に構築した発現系を用いてBispecific T-cell Engager(BiTE)型二重特異性抗体を製造し,SPR(表面プラズモン共鳴)法による抗原・免疫細胞受容体に対する結合親和性の評価,レポーター細胞を用いた抗原依存/非依存的な免疫細胞活性化能の評価,ヒト末梢血単核球を用いた標的抗原発現細胞に対する細胞傷害活性の評価を行い,測定原理の異なる生物活性評価手法の特徴について明らかにした.

3) バイオ後続品による有害事象の調査
  (一般試験研究費)

リツキシマブやアダリムマブ等のバイオ後続品について,先行品からのスイッチングに関する臨床試験の事例を調査した.

4) バイオ医薬品の国内外における有害事象報告状況の調査
  (一般試験研究費)

ウステキヌマブに比較してセクキヌマブやブロダルマブで報告数が多い傾向にあることを見だした.

5) 抗薬物抗体評価と標準パネル
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

独自に取得した複数の抗薬物抗体について,Fcγ受容体結合性,補体結合性などの解析を進めた.また,WHO国際標準品設定のための国際協力として,抗アダリムマブ抗体標準品候補10種を調製すると共に,大量発現に関する検討を行った.

6)  抗SARS-CoV-2及び抗薬物抗体評価
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

COVID-19患者試料について抗SARS-CoV-2 抗体の評価を行い,重症度が高い患者ほどSpike proteinに対するIgGの上昇が早い傾向があり,中和活性も類似の挙動を示すことを明らかにした.

7) 免疫原性評価ガイドライン作成に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

免疫原性評価に関する海外規制動向の調査を行い,本邦におけるガイドラインの目次案と各項目に記載すべき内容の概要を作成した.

8) バイオ医薬品に対する抗薬物抗体評価法に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

抗TNFα抗体等のバイオ医薬品を投与された関節リウマチおよび炎症性腸疾患患者血清中の抗薬物抗体の評価を行い,陽性率を明らかにした.

9) PEG化タンパク医薬の輸送/保管条件の最適化を目指した、ストレス負荷下での各種PEG化
  タンパク質の品質評価 (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

PEG-OVAに落下ストレスを負荷することで,タンパク質由来やシリコンオイル由来の微粒子が増加し,マクロファージへの取り込みや抗PEG抗体の産生が亢進し,最終的に排泄が促進されることを示唆した.


3.日本薬局方等における生物薬品関連試験法の整備と国際調和に関する研究

1) 日本薬局方の国際化に関する調査研究
  (医薬品承認審査等推進費)

第十八改正日本薬局方に収載される生物薬品関連の各条,一般試験法,及び参考情報について,告示される日本語版に対応した英語表記の確認を行った.

2) 日局各条生物薬品に含まれる不純物等の規格及び試験法原案の作成及び検証に関する研究
  (医薬品承認審査等推進費)

USP,EPのキモトリプシン標準品及びα-キモトリプシン市販品のキモトリプシン活性及び残存するトリプシン活性の測定を行うと共に,それらのキモトリプシンを用いて日局グルカゴン(遺伝子組換え)各条確認試験(1)を実施し,酵素活性の差異が試験結果に及ぼす影響を明らかにした.

3) 日本薬局方の試験法開発と規格設定による医薬品の品質確保に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

前年度までの検討結果を踏まえて,日局参考情報「フローサイトメトリー」の素案を作成した.

4) 医薬品の品質管理の高度化に対応した日本薬局方等の公定試験法拡充のための研究開発
  (一般試験研究費)

タンパク質凝集体等の分析法に関して,学術論文を対象にした技術開発状況を調査し,サブミクロン領域の定量的な評価法に課題のあることを明らかにした.また,USPに新たに収載されたフローイメージング法の参考情報について,作成中の原案との相違点を整理した.

5) バイオ医薬品国際標準品の品質評価に関する研究
  (一般試験研究費)

抗インフリキシマブ抗体国際標準品策定のための国際共同検定に参加し,標準品候補品をElectrochemiluminescence(ECL)法で評価した結果をNIBSC/WHOに報告した.

セツキシマブ国際標準品策定のための国際共同検定に参加し,標準品候補品をフローサイトメトリーで評価した結果をNIBSC/WHOに報告した.

6) 医薬品の品質確保のための分析法の開発及びバリデーションに関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

ICH Q(R2)/Q14ガイドラインについて,関係機関への内部意見聴取で集まったコメントに基づいてドラフトを改良し,専門家作業部会内での合意に達した.

7) 生体試料中薬物濃度分析法バリデーションの国際調和に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

ICH M10ガイドライン専門家作業部会において,各極での意見公募で寄せられた意見をもとに議論を行い,ガイドライン本文の改訂を行った.

8) バイオ医薬品のライフサイクルマネジメントに関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

ICH Q12の実装を推進するため,バイオ医薬品の製造所変更を例に,医薬品等変更計画確認申請時に添付する変更計画(PACMP)のモックアップを作成し,生物薬品部のHP上で公開した.また,バイオ医薬品の規格及び試験方法における軽微変更届出対象事項の事例を作成し,「医薬品等の承認申請書の規格及び試験方法欄に係る記載及びその変更」に関する通知・事務連絡の案として提出した.

9) AQbDによる分析法のライフサイクルマネジメントに関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

より進んだ手法を使って分析法を開発時に得られたデータのCTDへの記載例を作成し,留意点を整理した.また,HPLCからUHPLCへの変更を事例に,分析法変更のPACMPについてモックアップの草案を作成した.

10) 日局合成グルカゴン各条定量法等に関する研究
  (医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団研究補助金)

合成グルカゴン定量法等の近代化,及び,ヒトグルカゴンを有効成分とする品目の日局各条試験法の共通化を図ることを目的として,2機関の共同研究により,グルカゴン(遺伝子組換え)各条定量法及び純度試験類縁物質を合成グルカゴンに応用できることを確認した.また,ロット分析を行った.


4.先端的バイオ医薬品等開発に資する品質・有効性・安全性評価に関する研究

1) 抗体薬物複合体(ADC)の非標的細胞内取込に影響を及ぼす特性の解析
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

薬物修飾数・リンカー構造の異なるADCに関して細胞内に移行したADCの定量的評価を実施した.また,ADC凝集体がFcγRを発現する非標的細胞にFcγRを介して取り込まれ,高い非標的細胞毒性を示すことを明らかとした.

2) FcγRIIbを介する抗体医薬品の薬理作用・薬物動態制御機構の解明
  (科学研究費補助金)

前年度に樹立したFcγRIIb安定発現細胞株を用いて,抗体の細胞内取り込みへのFcγRIIb発現の影響について検討した.

3) 抗SARS-CoV-2抗体の特性解析に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

公開されている配列情報をもとに抗体発現コンストラクトを構築し,CHO細胞を用いて合計33クローンの抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体を作製した.これらの抗原(SARS-CoV-2スパイクタンパク質)結合親和性,スパイクタンパク質-ACE2結合に対する中和活性を測定し,多様な特性をもつクローンが含まれることを確認した.ウイルス変異株におけるスパイクタンパク質のアミノ酸変異がこれらの活性に及ぼす影響を明らかにした.

4) MHC-Associated Peptide Proteomics(MAPPs)解析によるFcRn親和性の変化が抗原提示
  に及ぼす影響の解明 (科学研究費補助金)

抗原提示細胞にFcRn親和性を上昇させた改変抗体などを取り込ませ,MAPPs解析を行うための精製条件や解析方法について検討した.

5) クライオ電子顕微鏡を用いた次世代抗体医薬品の高次構造解析法
  (AMED次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業)

生理学研究所において,モガムリズマブ,リツキシマブ,トラスツズマブの三種の抗体医薬品製剤のクライオ電子顕微鏡測定を行った.ネガティブ染色法を用いて,撮像を行った.2D classificationを行い、分子像を得た.

6) コンジュゲート抗体の品質評価に関する研究
  (科学研究費補助金)

抗体の特定部位にのみ薬物修飾を施した均一化コンジュゲート抗体を6種類作製した.

7) 中分子ペプチド医薬品の品質特性解析に関する研究
  (AMED医薬品等規制調和・評価研究事業)

研究班で試験的製造された非天然アミノ酸及び環状構造を有する細胞内標的ペプチドを分析対象として,LC/MS解析により不純物の構造推定を行った.また,原理の異なる複数のカラムを用いて,クロマトグラフィーパターンの取得を開始した.

8) 中分子ペプチド医薬品の品質管理戦略に関する研究
  (AMED医薬品等規制調和・評価研究事業)

中分子ペプチド医薬品原薬の品質確保の課題として製造工程に由来する低分子不純物を中心に検討し,ICH M7を参照して,変異原性を示す可能性のある試薬のリスト作成と管理手法に関する検討を行った.

9) IgA製剤の品質確保に関する研究
  (一般試験研究費)

IgAを有効成分とする抗体医薬品の研究開発動向を調査し,品質確保のための課題を考察した.

10) 抗HTLV-1抗体の特性解析に関する研究
  (一般試験研究費)

国立感染症研究所でクローニングされた抗HTLV-1抗体について,CHO細胞を用いて組換えモノクローナル抗体を作製した.


5. 非ペプチド・タンパク質モダリティーバイオ医薬品等の品質評価に関する研究

1) ウイルスベクターの構造特性評価に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

前年度までに構築した構造解析技術によりレンチウイルスベクターの構成タンパク質のペプチドマッピングが可能であることを確認した.

2) エクソソームを含む細胞外小胞(EV)を利用した治療用製剤に関する調査研究
  (一般試験研究費)

エクソソーム製剤の品質確保の要件を検討するため,実用化が想定される製品の目標製品プロファイルを調査した.また,エクソソームを含む細胞外小胞を利用した治療用製剤の品質確保の要件の一つとして,セルバンクの評価・管理における留意事項をまとめた.

3) マイクロバイオーム製剤の品質確保に関する研究
  (一般試験研究費)

マイクロバイオーム制御を目的とした製剤について,国内の研究開発動向を調査した.

4) SARS-CoV-2抗体検査キットの性能評価に関する研究
  (一般試験研究費)

新型コロナワクチンの有効性評価等に用いられる抗体検査キットの評価のため,患者血清から標準品Lot2を調製し,WHO国際標準品を参照して抗体価を測定した.

5) 小胞体における糖タンパク質分解メカニズムの解明に関する研究
  (一般試験研究費)

小胞体における糖タンパク質の糖鎖依存分解経路を明らかにする一環として,同経路に関与することが知られているER Degradation Enhancing alpha-mannosidase like protein 2 (EDEM2)-Thioredoxin domain containing 11(TXNDC11)複合体のジスルフィド結合の位置を特定した.

6) SARS類縁ウイルスのワクチン開発に資する改変抗原タンパク質の構造特性評価に関する研究
  (一般試験研究費)

SARS類縁ウイルス間で構造的に保存されているタンパク領域に対して優位に抗体が作られるように糖鎖付加部位を改変したSARS-CoV-2スパイクタンパク質の部位特異的糖鎖解析を行い,各付加部位の糖鎖占有率を明らかにした.

7) 新規生薬エキス製剤EFEに関する研究
  (一般試験研究費)

新規生薬エキス製剤EFEについて,COVID-19治療薬としての効力を裏付ける前臨床薬理試験の考え方や分子機構について整理した.また,鎮痛作用の評価方法について検討した.