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研究概要(2024年度)

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研究概要

生物薬品部では,生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)の品質・有効性・安全性確保に資するレギュラトリーサイエンス研究を行っている.研究業務の対象となる製品には,新有効成分バイオ医薬品及びバイオシミラーが含まれ,新薬開発に加えて社会的観点からアンメットニーズに応えることが期待されるこれら製品について,品質リスクマネジメントに必要とされる評価法の開発と標準化を先導的に実施することで,バイオ医薬品等の品質安全性確保を通じて社会貢献することを組織目標としている.
 衛研が創立150周年を迎えた令和6年度,日本で承認された抗体医薬品が100品目を超えてバイオ医薬品の約半数となる発展を遂げ,抗体薬物複合体や二重特異性抗体の開発が活発化する一方で,政府のバイオシミラー使用促進施策が本格化し,社会的・経済的な要因も含めたアンメットニーズに応えていく必要性がより鮮明になった.このような動向の他,新モダリティバイオ医薬品の候補である細胞外小胞(EV)の実用化推進にも関心が高まる中,それぞれ厚生労働行政への貢献を目標に,以下の研究業務に取り組んだ.
 バイオ医薬品等の品質評価に関する研究として,前年度に続き,AMED創薬基盤推進研究事業の官民共同研究班ではバイオ医薬品開発で課題となる評価法開発と標準化に取り組み,タンパク質凝集体評価に用いられる新規粒子標準の特性と有用性を明らかにすると共に,凝集体および不溶性微粒子の管理戦略構築に関して,ホワイトペーパーを作成した.また,分析法QbDのバイオ医薬品における実装に向けた事例作成を行った.AMED次世代抗体事業では,部位特異的修飾された抗体薬物複合体について,修飾部位とリンカーの構造が細胞傷害活性に及ぼす影響を明らかにし,安全性に関わる重要な特性を見出した.
 AMED医薬品等規制調和・評価研究事業では,バイオ医薬品等の有効性・安全性評価に関する研究として,これまでに実施した免疫原性評価研究を基盤に免疫原性予測のための評価系の開発に着手し,T cell assayによるin vitro予測評価系の構築を行った.抗薬物抗体標準品候補品を提供した抗アダリムマブ抗体パネルについては,国際標準品策定機関(NIBSC)により実施された国際共同検定に協力した.バイオシミラーに関する研究では,日本で流通する抗体医薬品類のバイオシミラー5製品に関して,それぞれ複数ロットの分析を行い,各製品の品質特性プロファイルの差異を明らかにした.公開情報が少ないバイオシミラーの品質に関して,具体的な情報提供につながる重要なデータが得られた(令和7年度に論文公表)
 新モダリティバイオ医薬品候補であるEV製剤の品質評価に関する研究に関しては,イオン交換クロマトグラフィー−多角度光散乱法等を用い,ヒト間葉系幹細胞由来EVの特性の一部を明らかにした.また,間葉系幹細胞由来EV製剤の抗炎症効果の指標として,CXCL-10が有用であることを見出し,新しい評価系を構築した.加えて,天然型EVの品質確保に関するガイドライン案作成に着手した.特筆すべき成果として,山元智史研究員が細胞外小胞に関する発表により,第49回日本骨髄腫学会(令和6年5月)会長特別賞を,日本分子腫瘍マーカー研究会で学術奨励賞(令和6年9月)を受賞した.厚生労働省の後発医薬品等品質確保対策事業では,引き続き,バイオシミラーの品質確保のための調査と製品の試験を行った.国内で流通しているバイオシミラー製剤の試験として5製剤を対象に,生物活性試験あるいは純度試験を実施し,規格への適合性を確認した.
 海外出張は以下のとおりであった.Workshops on Recent Issues in Bioanalysis(令和 6 年 5 月 6 日〜10日,米国サンアントニオに石井明子部長が参加し,抗薬物抗体測定に関するNIBSCとの共同研究成果を発表した.国際細胞外小胞学会(令和6年5月9日〜13日,オーストラリア・メルボルン)に西村仁孝研究員および山元智史研究員が参加し,細胞外小胞に関する研究成果を発表した.国際薬物動態学会(令和6年9月15日〜18日,米国ホノルル)に石井明子部長が参加し,抗薬物抗体のタイター測定法に関する成果を発表した.ICH Q6(R1)専門家作業部会(令和6年11月2日〜6日,カナダ・モントリオール)に石井明子部長が参加し,ガイドラインドラフト作成について討議を行った.ICH Q2(R2)/Q14実施作業部会(令和7年3月13日〜16日,ハンガリー・ブダペスト)に柴田寛子室長が参加し,トレーニング資材に関する討議を行った.
 人事面では,令和5年4月1日から第3室長を務めていた日向昌司室長が令和6年3月末に任期を終え,令和6年4月1日より主任研究官となった.これに伴い,令和6年4月1日より,石井明子が第3室長併任となった.令和6年度の生物薬品部員は,部長石井明子,第1室橋井則貴,鈴木琢雄,西村仁孝,山元智史,第2室柴田寛子,原園景,木吉真人,第3室日向昌司,青山道彦の計10名であった.前年度から継続して,日本薬史学会より森本和滋博士を客員研究員として,京都大学大学院薬学研究科より高橋有己博士,PMDAより安藤剛博士,栗林亮佑博士,生田実優氏,中野歩希氏を協力研究員として受け入れ,共同研究を行った.令和7年3月31日付けで,日向昌司主任研究官が定年退官した(令和7年度より再任用職員として引き続き研究業務に従事)


研究業績

1.バイオ医薬品の品質評価に関する研究

1) 先端的バイオ医薬品の最適な実用化促進のためのCMC分野における創薬基盤技術の高度化に関する研究
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

分析法Quality by Design(QbD)のケーススタディとして,高分子量体及び切断体,宿主細胞由来タンパク質,生物活性を評価対象に設定し,目標分析プロファイル設定に関するケーススタディを行った.また,各評価対象に関し,それぞれ,サイズ排除クロマトグラフィー,定量ELISA,結合活性ELISAを分析技術として選択し,各試験法における分析法操作パラメータの抽出とリスクアセスメントを行った.さらに,各試験におけるリスク低減策を検討し,バイオ医薬品の分析法開発における分析法QbD活用のための留意事項をまとめた.

2) 凝集体及び不溶性微粒子評価技術に関する研究
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

2µmクラス新規粒子標準試料の特性値が得られるように装置パラメータを調節することで,機関間差や特性値との差を小さくできることを示した.200 nmクラス新規粒子標準試料についても共同測定を実施し,概ね全ての機関で特性値が得られること,屈折率及び粘度の高い溶媒で分散することで,実試料の測定時に生じ得る分析上の問題を解決するのに役立つ情報が得られる可能性を示した.凝集体及び不溶性微粒子の管理戦略構築に関してアンケート調査結果をもとにWhite paperを作成した.

3) 高分解能質量分析計を用いたインタクト分析
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

トラスツズマブの強制劣化試料で生じた変化を電荷プロファイル及びペプチドマップにて評価した.その結果,1)中性及びアルカリ性処理においては主に軽鎖N30の脱アミド化が,光照射処理においては,主に重鎖Met255及び重鎖M431の酸化が関与すること,2)脱アミド化(軽鎖N30)及びイソアスパラギン酸形成(重鎖D102)について,pH-グラジエントイオン交換クロマトグラフィー(IEX)から推定された修飾率とペプチドマップ法から得られた修飾率は相関することが確認された.また,ウォーターズ社の質量分析計(MS)を用いてインタクトMSを測定する際の適切なデコンボリューション条件を明らかにした.

4) Fc受容体固定化カラムを用いた抗体医薬品の特性解析法の開発
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

抗体医薬品の新生児型Fc受容体(FcRn)結合性に関し,FcRn/IgG競合イムノアッセイ,表面プラズモン共鳴法,及びFcRnアフィニティーカラムによる分析結果を比較し,新たな抗体医薬品の分析手法としてのFcRnアフィニティカラムの有用性を評価した.FcRnカラムを用いた抗体-FcRn相互作用について論文を執筆した.

5) LC/MSを用いた宿主細胞由来タンパク質(HCP)試験法に関する研究
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

HCP測定に適した試料調製技術についてモデル試料の測定結果を評価した結果,各HCPの回収率やイオンサプレッションの解消率に差異があるため,測定対象となる試料や評価目的に適した試料調製技術を選択する必要があることを明らかにした.NPD法を活用した網羅的なHCP測定技術についてモデル試料を用いて検討した結果,製造中間体も含めたHCP及び目的物質に由来するペプチドの解析結果を含めるなど,より網羅的なイオンライブラリの作成が重要であること,また,モデルHCPを用いた解析結果を踏まえた判定条件の策定が必要であることを明らかにした.本研究の成果や海外の研究報告等を参考に,LC/MSを用いたHCP分析技術を試験法として実装するための要点について整理した文書を作成した.

6) 次世代抗体医薬品の実用化に向けた品質評価及び管 理手法に関する技術的研究
  (AMED次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業)

デジタル技術の進展を踏まえたバイオ医薬品の品質確保に関する最近の動向について,欧米の規制当局から発出された文書の調査を行い,バイオ医薬品の製造・品質管理における課題を抽出・整理して,総説にまとめた.

7) 質量分析を利用した次世代抗体の構造特性評価手法の確立
  (AMED次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業)

自動分注装置を用いたMAM前処理手法の構築,及びシステム性能評価基準の考案に関する複数MSメーカーとの共同研究の成果を論文として発表した.また,RI標識用リンカー修飾抗体(ペプチドコンジュゲートSKM9-2抗体,リンカー結合数:0〜2本)について,MAMにより2ロットの構造特性の比較を行い,一部のメチオニンの酸化でロット間差が大きいことを明らかにした.さらに,合成酸化ペプチドを用いて,抗体の酸化メチオニンには,S体とR体が存在することを明らかにした.

8) 微生物等を用いて創製される抗体医薬品の構造特性解析
  (AMED 次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業)

酵母由来二重特異性T細胞誘導抗体の構造解析を行い,培養条件やフレームワーク配列の違いにより,O結合型糖鎖の付加量が変化することを明らかにした.また,酵母由来の複数の低分子抗体の糖鎖解析を通じて,酵母における意図しないO結合型糖鎖修飾の有無はコアタンパク質の種類にも依存する可能性を示した.

9)バイオ後続品の品質評価に関する研究
  (AMED医 薬品等規制調和・評価研究事業)

バイオ後続品の開発において実施されている先行バイオ医薬品との品質比較の項目や判定基準等に関する調査結果と,評価技術に関する最近の動向をもとに,バイオ後続品の普及推進と品質確保のため,ガイドラインの運用や理解の助けになるQ&A形式のトレーニング資材を作成した.

10) 製造工程由来不純物である宿主細胞由来タンパク質 の新規評価法の開発
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

前年度までに確立したLC/MS定量手法を利用して,トラスツズマブ,インフリキシマブ及びアダリムマブ等の先行品及び後続品製剤を対象として,残存する複数種類のproblematic HCPの定量を行い,差異を明らかにした

11) 高次構造評価を指向した分光学的手法を用いたバイオ後続品の特性解析法の構築
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

先行品とバイオ後続品の類似性評価において,フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)では通常測定されるアミド領域に加え,糖鎖情報が反映される領域を測定することの有用性を示した.ラマン分光法についてはS-S結合に由来するピークを検出できる条件を確立した.各分光法の識別性を比較し,少なくともFT-IRよりは近紫外円偏光二色性スペクトルの方が識別性が高いことを示した.

12)バイオ後続品の有効性・安全性をリアルワールドで 体系的に評価するシステムの確立
  (厚生労働科学特別研究事業)

バイオシミラーの安全・安心な使用に向けて,承認申請時及び市販後に関する情報発信のためのテンプレートを作成した.また,既承認のバイオ後続品19品目について,承認申請時の情報と,最新の効能効果に関する情報を収集し,ジェネリック医薬品・バイオシミラー品質情報検討会ホームページでの公開用のファイルを整備した.

13)革新的なモダリティの後発品等の開発に備えた医薬 品の品質・安定供給の確保のためのRS研究
  (一般試験研究費)

従来の後発品やバイオ後続品の中間的な分子量の後続品等に関して,欧米における規制動向を調査した.また,逆相HPLCを用いたペプチド関連不純物の検出のための純度試験法を確立して遺伝子組換え品と合成品の両方が上市されているグルカゴンを試料とした分析を行い,確立した手法がぺプチド医薬品後続品等の不純物プロファイルの評価に有用であることを示した.


2.バイオ医薬品の有効性・安全性評価に関する研究

1) 抗体薬物複合体の新規薬物分析法の標準化に関する研究
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

アフィニティー精製とインタクトLC/MS分析を組み合わせて,ヒト血漿中の微量抗体薬物複合体(ADC)の平均薬物抗体比(DAR)およびDAR分布を評価するための手法を開発した.また,多重反応モニタリング測定手法を用いるLC/MS(MRM-LC/MS)分析法を利用して,ADCのペイロード結合部位毎の修飾率の変化を評価するための手法を構築した.

2) 免疫原性評価ガイドライン作成に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

「バイオ医薬品の免疫原性評価に関するガイドライン案」に関する意見公募の結果に基づき,本文の改定を行い,最終案を作成した.

3) バイオ医薬品等の免疫原性リスク低減のための規制要件と予測・評価法に関する研究
  (AMED医薬品等規制調和・評価研究事業)

MAPPsの特徴と実施における留意事項,及び免疫原性予測法としての有用性と課題をまとめることを目的に免疫原性が高い陽性対照試料(ボコシズマブ)等を用いた評価を行った.また,World Health Organization(WHO)国際標準品設定のための国際協力として,抗アダリムマブ抗体の共同検定を行った.

4)バイオ医薬品に対する抗薬物抗体の特性解析
  (AMED医薬品等規制調和・評価研究事業)

抗薬物抗体陽性試料におけるタイター測定法について,抗薬物抗体国際標準品や実試料を用いた検討を行い,シグナルノイズ比を代替指標として用いる場合の要件を中心に,免疫原性評価に関するガイドライン補遺に記載すべき留意事項を整理した.

5)In vitro免疫原性評価法:T cell assay
  (AMED医薬品等規制調和・評価研究事業)

In vitro免疫原性予測法として開発されている種々のT cell assayに関して,論文報告を基に,市販ヒト凍結末梢血単核球を用い,3種類のアッセイ系を構築した.

6)抗がん抗体によって惹起される抗体依存性トロゴサイトーシスの分子機序の解明と制御
  (科学研究費補助金)

リツキシマブ,トラスツズマブ,セツキシマブの3つの抗体医薬品をモデル抗体として,フローサイトメトリーを用いて表面抗原が免疫細胞に移動する量を定量するための条件検討を行った.


3.日本薬局方等における生物薬品関連試験法の整備と国際調和に関する研究

1) 日本薬局方の国際化に関する調査研究
  (医薬品承認審査等推進費)

第十九改正日本薬局方に収載される生物薬品関連の各条,一般試験法及び参考情報について,日本語版に対応した英語表記の確認を行った.

2) 医薬品の品質管理の高度化に対応した日本薬局方等の公定試験法拡充のための研究開発
  (一般試験研究費)

抗体医薬品に関するGeneral Monographの案のうち,ペプチドマッピングによる確認試験の案を作成した.

3) 日局各条品生物薬品に含まれる不純物等の規格及び試験法原案の作成及びその検証に関する研究
  (一般試験研究費)

トラスツズマブを用いて,ペプチドマップ法の試料調製及びHPLC分離条件の検討を行い,試験手順を作成した.ペプチドマップ分離条件の検討により,グラジエント時間が分離パターンに及ぼす影響を明らかにした.分離パラメーターが分離パターンに及ぼす影響に関する知見は分析条件の調整を適切に実施するために重要であることを確認した.

4) 日本薬局方国際調和推進事業
  (医薬品承認審査等推進費)

日米欧薬局方の生物薬品各条の調査を行い,相違点を明らかにした.そのうち,調和の必要性と実現可能性を考慮し,グルカゴン,ゴナドレリン酢酸塩,リュープロレリン酢酸塩について,国際調和に必要な具体的な検討項目を明らかにした.

5) 医薬品の規格及び試験方法に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

ICH Q6A「新医薬品の規格及び試験方法の設定」及びQ6B「生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)の規格及び試験方法の設定」ガイドライン改定のため,専門家作業部会において改定の方向性を示すコンセプトペーパーを作成した.また,その内容に基づいて,一般原則およびバイオ医薬品の規格及び試験方法に関する章の素案を作成した.

6) 医薬品の品質確保のための分析法の開発及びバリ デーションに関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

ICH Q2(R2)/Q14分析法バリデーション/分析法の開発について,Step3パブコメで寄せられたコメントへの対応をまとめると共に,Step4文書の和訳を作成した.

7) バイオ医薬品の承認事項の在り方とライフサイクル マネジメントに関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

本邦において新たに導入された承認事項の変更管理区分(中等度変更および年次報告)に関し,バイオ医薬品の製造工程および規格及び試験方法において,該当する事例を作成するため,海外ガイドラインの調査を行った.また,承認申請書の規格及び試験方法欄における合理化記載の例示を作成し,厚生労働省医薬品審査管理課事務連絡として公表した.

8) Analytical QbDによる分析法のライフサイクルマネ ジメントに関する研究
  (AMED医薬品等規制調和・評価研究事業)

“より進んだ手法”の要素を活用した場合の規格及び試験方法欄の記載と変更カテゴリーの分類の考え方を整理し文書化した.対象とする試験法を議論し,プラットフォーム分析法の事例作成を開始した.

9) 放射性医薬品評価推進事業
  (医薬品承認審査等推進費)

放射性医薬品基準の改定に関する検討のため,主として安全性確保の観点から評価すべき項目について検討した.

10) バイオ医薬品国際標準品の品質評価に関する研究
  (一般試験研究費)

ラニビズマブ国際標準品の共同検定報告書の確認作業を行い,WHO/National Institute for Biological Standards and Control(NIBSC)に報告した.


4.先端的バイオ医薬品等開発に資する品質・有効性・安全性評価に関する研究

1) クライオ電子顕微鏡を用いた次世代抗体医薬品の高次構造解析法
  (AMED次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業)

負染色法を用いた解析を行い,抗体医薬品のヒンジ領域のフレキシビリティに関する知見を得た.また,三次元像の構築を行い,先行品/後続品の比較や,製法変更前後の同等性・同質性の評価に有用である可能性を示した.Fcドメインに結合するペプチド配列をVHHに融合した次世代抗体に関して,レポーターアッセイを用いた評価を行った.

2) コンジュゲート抗体の品質評価に関する研究
  (AMED次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業)

抗体にtri-GalNAcを修飾したLYTACに関して,抗体定常領域6か所を対象に部位特異的修飾体を作成し,特性解析を実施した.その結果,修飾部位の違いがLYTAC活性に影響することを見出した

3) IgA製剤の品質確保に関する研究
  (一般試験研究費)

経口投与されるIgA製剤に関して,文献調査とモデル製品の評価に基づき,品質及び非臨床評価の項目と,管理戦略構築のために必要な検討事項についてまとめた.

4)IgA抗体受容体を介した免疫応答に影響を及ぼす抗体特性の解明
  (科学研究費補助金)

研究で使用するサブクラスや形態などの特性の異なる様々なIgA抗体の作製法,ならびにサイズ排除クロマトグラフィーによる分画・精製法を構築し,特性の異なるIgA抗体を作製した.

5) 抗体医薬品凝集体の非標的細胞取込に関わる受容体の同定
  (科学研究費補助金)

抗体凝集体の受容体の同定に向け,受容体となり得る細胞膜タンパク質に焦点を絞り,スクリーニング結果の再解析を行った.複数の候補分子のノックアウト細胞を作成して,抗体凝集体の取込における寄与を評価したが,抗体凝集体の取込への寄与は認められなかった.

6)体内分布や抗原提示に着目したFcRn親和性改変抗体間の違いに関する研究
  (科学研究費補助金)

血中半減期延長のためにFcRn親和性改変抗体が開発されているが,アミノ酸改変の種類による違いを明らかにするため,FcRn親和性改変抗体のMAPPs assayを行うと共に,cell-based recycling assayの構築を進めた.

7)中分子ペプチド医薬品の品質管理戦略に関する研究
  (AMED医薬品等規制調和・評価研究事業)

「合成ペプチドの品質評価に関するガイドライン案」について,意見公募で収集された意見をもとに本文の改訂を行い,最終案を作成した.また,関連するQ&Aと意見公募で寄せられた意見に対する回答を作成した.

8)中分子ペプチド医薬品の品質特性解析に関する研究
(AMED医薬品等規制調和・評価研究事業)

研究班で試験的製造されたMatrix metalloproteinase-14(MMP14)を標的としたPDCを分析対象として,比較対象とする劣化試料を調製した.また,モデルPDC及び劣化試料の結合活性等の評価を行い,生物活性の差異を明らかにした.


5.非ペプチド・タンパク質モダリティーバイオ医薬品等の品質評価に関する研究

1) エクソソーム製剤の品質管理戦略構築に関する研究
  (AMED医薬品等規制調和・評価研究事業)

イオン交換HPLCを利用して分画したエクソソーム試料を用いて,精製前後や画分間の粒子径分布や粒子表面分子の分析を行い,エクソソーム試料の不均一性を評価する特性解析手法を開発した.生物活性の評価に関しては,新規抗炎症のマーカーとしてダイナミックレンジの広いC-X-C motif chemokine ligand 10を同定した.またmiRNAライブラリーを用いたスクリーニングでは35のmiRNAを抗炎症作用を有するものとして同定した.本研究課題から得られた知見をもとに,細胞外小胞(EV)研究に関わる国内の産官学の関係者と共同でエクソソーム製剤の品質管理戦略に関する留意事項を明確にした.

2) 医療応用可能なエクソソームの大量産生系と評価方法の確立
  (科学研究費補助金)

エクソソームの分泌促進作用を持つmiRNAとしてmiR-3202の同定とその機能の確認を行なった.抗炎症作用はmiRNA処理をして分泌促進させたエクソソームでも同等に発揮することを明らかにした.また性状比較としてフローナノアナライザーを利用した単一粒子解析を行い,単一粒子レベルでもいくつかのエクソソームマーカーの発現率に違いは見られず,miRNA処理で増加したエクソソームについても同じであることを示した.

3) 細胞外小胞(EV)の脂質に注目した乳がん新規リキッドバイオプシーの開発
  (科学研究費補助金)

血漿中からのEV抽出の工程に,最新のエクソソーム分離技術と独自のワークフローを導入することで,脂質測定のさらなる精緻化・高速化を行った.最新のエクソソーム精製機械を導入し,その精製されるEVの評価を行った.また,血清より精製されるエクソソームに多く含まれるリポタンパク質の除去について検討を行った.いくつかのポリマーがリポタンパク質の除去に適していることを示した.

4) 去勢抵抗性前立腺がんに対する細胞外小胞スクリーニング法を用いた新規免疫増強薬の探索
  (科学研究費補助金)

がん細胞が死ぬ際に放出する特殊なエクソソームを検出する系を作成した.アポトーシス小体に特異的に存在するカルレチキュリンを標的とし,シグナルを検出可能であった

5)リポソームとの膜融合を利用したエクソソーム内タンパク質ラベリング法の開発
  (科学研究費補助金)

エクソソーム由来タンパク質の詳細な組成解析を目的に,エクソソームとリポソームが膜融合する現象を利用し,エクソソーム中のタンパク質を特異的に標識可能なラベリング手法の開発を開始した.研究に用いるリポソームの調製法を確立し.蛍光色素を利用した膜融合条件を検討した.

6)デザイナーエクソソームによるアクティブターゲティング法の開発
  (AMEDスマートバイオ創薬等研究支援事業)

改変エクソソームの産生細胞の候補としている293細胞について,未改変の細胞由来のエクソソームをサンプルとして,改変エクソソームの評価法について検討を行った.

7)エクソソーム製剤の保存安定性の向上に資する研究
  (一般試験研究費)

複数試料のエクソソーム試料を調製し,保存前後の特性評価結果を行うことで,エクソソームの保存に好ましい緩衝成分や添加剤の種類,pHの検討を実施した.

8)新興感染症等の緊急時に用いられる回復者血漿製剤の品質確保に関する研究
  (一般試験研究費)

新型コロナウイルス感染症に対して実施された回復者血漿療法に関して,臨床試験成績と使用された回復者血漿の品質に関する調査を行った.また,回復者血漿中の中和抗体価の測定法について,複数の評価法の性能比較を行った.これらの結果をもとに,新興感染症等の緊急時の備えとして,回復者血漿を治療薬として用いる際の留意点をまとめた.