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研究概要(2020年度)

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研究概要

生物薬品部は,生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)の品質・有効性・安全性確保に資するレギュラトリーサイエンス研究を行っている.
 令和2年度は,令和2年初頭から日本でも問題となった新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,対面の会議や学会が中止され,Web会議形式に移行される中での業務の遂行となった.国衛研では,厚生労働省の補正予算による「新型コロナウイルス感染症治療薬の迅速開発等の体制整備事業」が実施されることとなり,生物薬品部は,そのうち「新型コロナウイルス感染症に係る体外診断薬等の信頼性確保」の一部を担当した.生物薬品部の担当は抗体検査キットの信頼性確保に関する課題であり,医薬安全科学部と共同で,国内で開発あるいは上市されている抗体検査キット計57製品に関し,キットの製造販売企業の協力も得て,一斉性能評価試験を行った.新型コロナウイルス感染症の診断薬として核酸増幅検査及び抗原検査が薬事承認の対象となっているのに対して,本邦では抗体検査は薬事承認の対象外であるが,感染履歴の把握やワクチンの有効性の評価等の研究用途では抗体検査が重要な場合があることから,その信頼性確保はレギュラトリーサイエンスの観点での重要課題と言えるだろう.その他,新型コロナウイルス感染症の治療薬等の評価に関連する研究にも着手し,令和3年度からの新規課題の立ち上げにつながる進捗が得られた.また,これまで感染症を適応症とするバイオ医薬品は限られていたが,新型コロナウイルス感染症の治療薬として,スパイクタンパク質を標的とする抗体医薬品やFc融合タンパク質等,多数のバイオ医薬品の開発が進んでいることから,それらの評価手法についても重要性が増すと考えられる.
 新たな製品の承認に関して,令和2年は,抗体医薬品6品目を含む9品目の新有効成分バイオ医薬品が承認され,抗体医薬品6品目のうち2品目を占める抗体薬物複合体の開発が加速している様子が伺えた.バイオ後続品は2品目が承認された.
 令和元年度から開始された厚生労働省の後発医薬品等品質確保対策事業では,前年度に続きバイオシミラーの品質確保のための調査と製品の試験を行った.国内で流通しているバイオシミラー製剤の試験は,公的試験検査として,5製剤を対象に,生物活性試験あるいは純度試験を実施し,規格への適合性を確認した.バイオシミラーに関しては,ジェネリック医薬品で問題となった品質管理体制の不備に関する指摘はなされていないが,品質の確保された製品の安定供給のため,このような品質情報の継続的な収集と検証が必要と考えられる.
 AMED創薬基盤推進研究事業におけるバイオ医薬品の品質評価に関する官民共同研究では,バイオ製薬関連企業26社及び大阪大学と共に,先端的分析技術を用いたタンパク質凝集体評価法の分析性能評価,糖鎖試験法,宿主細胞タンパク質試験法などに関する研究を継続すると共に,バイオ医薬品の分析法におけるAnalytical QbDの活用に関する検討にも着手した.
 AMED医薬品等規制調和・評価研究事業では,バイオ医薬品等の品質安全性に関する研究課題において,免疫原性評価に関連して抗薬物抗体パネル整備を行い,抗リツキシマブ抗体および抗インフリキシマブ抗体の複数クローンをNational Institute for Biological Standards and Control(NIBSC)に送付し,国際標準パネルの候補としての検討に協力した.バイオ後続品に関する課題では,生物活性評価系の性能評価を行うと共に,我が国に流通するバイオ後続品と先行品との品質特性の比較を行った.また,次世代型中分子ペプチド医薬品に関して,品質確保の考え方をまとめた.令和2年度からの新たな研究課題として,次世代抗体医薬品の品質安全性確保のため,多重特異性抗体等次世代抗体医薬品の品質・安全性評価に関するレギュラトリーサイエンス研究に関する取り組みを開始した.AMED次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業では,研究班での議論の成果として,バイオ医薬品の連続生産におけるPoints to considerをまとめた.
 令和2年度に生物薬品部から発表された主な論文は,以下の通りである.
 木吉,多田,柴田,石井らによる論文“Structural insight and stability of TNFR-Fc fusion protein (Etanercept) produced by Using transgenic silkworms”(J. Biochem 2020)では,バイオ医薬品の生産用基材としての利用が検討されているTgカイコを用いてTNFR-Fc融合タンパク質を調製し,特性解析を行った.Tgカイコ由来TNFR-Fcは,アフコシル型糖鎖を多く含み,FcγRIIIa及びFcRn結合親和性が高いこと,また,Fc部分の高次構造の一部がCHO由来エタネルセプトと異なることや,安定性が低いことが明らかとなり,Tgカイコを用いたバイオ医薬品開発では,糖鎖構造と安定性の評価が重要であることが示唆された.
 塚田,橋井,石井らによる論文“Establishment of a highly precise multi-attribute method for the characterization and quality control of therapeutic monoclonal antibodies”(Bioengineered. 2020)では,抗体医薬品等の品質管理手法の一つとして注目されているmulti-attribute method(MAM)に関し,試料の前処理方法を最適化して,精度の高い分析が可能であることを実証した.
 木吉,多田,柴田,青山,石井による論文“Characterization of Aggregated Antibody-Silicone Oil Complexes; From Perspectives of Morphology, 3D Image, and Fcγ Receptor Activation.”(J. Pharm. Sci. 2020)では,抗体医薬品注射剤において,プレフィルドシリンジに塗布されたシリコンオイルにより生じる凝集体の性質を明らかにする目的で,凝集抗体-シリコンオイル複合体を撹拌により調製し,フローイメージング,共焦点蛍光顕微鏡,FcγR発現レポーター細胞を用いたFcγR活性化アッセイなどの多面的な手法を用いた解析を行い,その特性を明らかにした.
 橋井,東阪,石井らによる論文“Bioanalysis of therapeutic monoclonal antibody by peptide adsorption-controlled LC-MS.”(Bioanalysis 2021)では,LCシステム内への非特異的吸着等を回避しつつ,試料注入量の増加が可能なPeptide Adsorption-Controlled (PAC)-LC/MSに着目し,これまでに独自に最適化した前処理手法を組み合わせた,アフィニティー精製を行わない,簡便,且つ汎用性の高い薬物濃度測定手法を考案するとともに,複数機関による有用性評価を行った.
 石井,柴田,木吉,青山,原園,日向らによる総説”Recent Achievements and Current Interests in Research on the Characterization and Quality Control of Biopharmaceuticals in Japan.”(J Pharm Sci 2020)では,AMED創薬基盤推進研究事業における官民共同研究班での研究の進捗と班会議での議論の内容を,海外関係者に向けて情報発信した.
 これらの研究の他,厚生労働省薬事・食品衛生審議会,厚生科学審議会, PMDAにおける審査業務や日局改正などに協力した.海外出張はすべて中止になり,Web開催された学会等への参加となった.

研究業績

1.バイオ医薬品の品質評価に関する研究

1) バイオ医薬品の凝集体/不溶性微粒子試験法の開発と標準化
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

Flow imaging(FI)法を使ったシリコーンオイルとタンパク質凝集体の評価について,前年度までに実施した共同研究の議論をFI法標準的試験法案へ反映させた.各種タンパク質凝集体分析法のうち動的光散乱法と超遠心分析法について共同測定に向けた事前検討を行った.

2) 標準的な糖鎖試験法の開発
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

O-結合型糖鎖プロファイル法として,遊離に超塩基及びヒドロキシルアミンを用いる手法について分析条件を検討した.既承認バイオ医薬品のO-結合型糖鎖プロファイルの比較を行い実行可能性を確認した.

3) 宿主細胞由来タンパク質試験法に関する研究
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を用いたHCPの同定法・定量法における測定条件及びデータ解析条件について,モデル工程中間体を試料とした検討を進め,内部標準タンパク質あるいは内部標準ペプチドの必要性を明らかにした.

4) バイオ医薬品の分析法開発におけるAnalytical QbD活用に関する研究
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

バイオ医薬品の品質評価に用いられる分析法の中から,cell-based assayによる生物活性試験及びサイズ排除クロマトグラフィーによる純度試験を例に,Analytical QbDを活用した分析法開発のケーススタディーを行い,分析性能に影響する操作条件を抽出した.

5) Fc受容体固定化カラムを用いた抗体医薬品の特性解析法の開発
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

抗体-FcRIIIa分子間相互作用における糖鎖の役割を明らかにするため,抗体及びFcRIIIaの糖鎖構造解析,抗体とFcRIIIaとの親和性解析,結晶化を行った.

6) LC/MSを用いた血中抗体後続品の構造特性評価に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

共同研究機関で精製された複数の臨床血清試料由来インフリキシマブ先行品及び後続品について,LC/MSにより糖鎖プロファイルを明らかにした.

7) バイオ後続品の同等性/同質性に用いられる生物活性評価法に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

ヒト末梢血単核球を用いた抗体依存性細胞傷害活性測定法について,抗体医薬品バイオシミラーの品質特性の類似性比較における分析性能を評価した.

8) バイオ後続品の同等性/同質性評価に用いられる品質評価手法に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

国内で承認され,流通している先行品及びバイオ後続品について,昨年度,測定条件などの最適化を行った分析手法を用い,入手できたロットについてロット分析を行った.

9) 次世代抗体医薬品のバイオトランスフォーメーション解析に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

マレイミド誘導体による標識法及びLC/MSを組み合わせて,血漿試料中の抗体薬物複合体(ADC)由来遊離DM1を分析対象とした高感度薬物濃度測定方法を構築した.

10) 次世代抗体医薬品の安定性評価手法に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

タンパク質凝集体形成初期の分子状態を解析するため,変性初期を再現する加熱条件を検討し,サイズ排除クロマトグラフィーを用いて分離を試みた.異なる2種類の緩衝液に置換した抗体医薬品について保存中の凝集体量を測定し,熱安定性と凝集体量との相関について考察した.

11) バイオ医薬品の連続生産における品質管理手法に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

バイオ医薬品の連続生産の管理戦略を検討するにあたって考慮すべき主要な事項を文書としてまとめ,「バイオ医薬品の連続生産に関するPoints to Consider」を作成した.また,独自に開発してきた抗体医薬品を対象としたMulti-Attribute Method(MAM)解析手法について,分注機を用いて前処理工程の自動化を図った.

12) バイオ後続品に関する市販後安全性調査と品質確保に関する研究
  (一般試験研究費)

国内及び海外でのバイオ後続品の開発動向及びガイドラインの改訂状況について調査した.

2.バイオ医薬品の有効性・安全性評価に関する研究

1) LC/MSを用いた高分子薬物濃度測定法に関する研究
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

前年度までに構築した抗体医薬品の血中薬物濃度測定手法をバイオトランスフォーメーション解析に応用する一環として,複数機関により,モデル抗体医薬品の相補性決定領域由来脱アミド化ペプチドのモニタリングを行うと共に,良好な室間再現精度が得られることを確認した.

2) 抗体医薬品に対する抗薬物抗体(ADA)パネルの構築
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

ADAパネルに適した抗薬物抗体選定のためのADA特性解析として,抗体医薬品に対する中和能や抗体医薬品との複合体の分子サイズを解析すると共に,各種ADA測定系での検出能や,抗体医薬品との親和性などについて多変量相関解析を行った.また,WHOの抗インフリキシマブ抗体パネル作製に関する共同研究のために,作製した抗インフリキシマブ抗体の内,6種を提供した.同じくWHO国際標準品としての策定に向けて検討が進む抗リツキシマブ抗体について,バイアル充填条件の決定に必要な特性解析を実施し,NIBSCに情報提供した.

3) 免疫原性評価法に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

①免疫原性評価のためのガイドライン骨子を作成した.②バイオ医薬品が投与された患者由来血清中の抗薬物抗体分析を行い,抗薬物抗体が検出された検体について,アイソタイプの同定を行った.

4) 多重特異性抗体の生物活性・免疫作用評価に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

BiTE型二重特異性抗体の発現系を構築,発現・精製条件の検討を行い,標的抗原,及び,免疫細胞受容体の異なる6種類の二重特異性抗体(抗原2種×免疫細胞受容体3種=計6種)の試験的製造を行った.

5) バイオ後続品による有害事象の調査
  (一般試験研究費)

エタネルセプトやインフリキシマブなどのバイオ後続品について,先行品からのスイッチングに関する臨床試験の事例を調査した.

6) バイオ医薬品の国内外における有害事象発現状況の調査
  (一般試験研究費)

G-CSF製剤や抗体医薬品などについて,間質性肺疾患などの発現機序を文献調査した.


3.日本薬局方等における生物薬品関連試験法の整備と国際調和に関する研究

1) 日本薬局方の国際化に関する調査研究
  (医薬品承認審査等推進費)

第十八改正日本薬局方に収載される生物薬品関連の各条,一般試験法,及び参考情報について,適切な英語表記に関する調査を行った.

2) 日局各条生物薬品に含まれる不純物等の規格及び試験法原案の作成及び検証に関する研究
  (医薬品承認審査等推進費)

日局グルカゴン(遺伝子組換え)各条に設定されている確認試験(1)ペプチドマップを合成グルカゴンの確認試験として適用できることを確認した.

3) バイオ後続品の品質・安全性・有効性評価のための指針改正に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

本邦におけるバイオ後続品の開発・審査の考え方を海外関係者と共有することを目的に,「バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針」の英語版の案を作成した.

4) Analytical Quality by Design (AQbD) による分析法のライフサイクルマネジメントに関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

作成したCTDモック素案について議論を行い,修正案を作成した.また分析法の承認後変更管理実施計画書(PACMP)モックについても素案を作成した.

5) バイオ医薬品のライフサイクルマネジメントに関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

バイオ医薬品の品質に関する教育資材として,より進んだアプローチを取り入れた抗体医薬品の製法及び品質評価に関する承認申請書及びCTDのモック案を作成した.また,ICH Q12の実装に向けて,スケールアップを伴う原薬製造所の変更を例として, PACMPの記載例を作成した.

6) 生体試料中薬物濃度分析法バリデーションの国際調和に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

ICH M10ガイドライン専門家作業部会において,各極での意見公募で寄せられた意見をもとに議論を行い,ガイドライン本文の改定作業を行った.

7) 分析法バリデーション/分析法開発ガイドラインの国際調和に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

ICH Q(R2)/Q14ガイドラインの団体内意見聴取用最終ドラフトを作成し,コメント募集を2回実施した.

8) 日本薬局方の試験法開発と規格設定による医薬品の品質確保に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

フローサイトメトリー法を生物薬品の規格及び試験方法に適用する際の試験方法・試験成立条件に関する検討を行い,抗体医薬品のcell-based binding assayの試験方法の記載例を作成した.

9) 医薬品の品質管理の高度化に対応した日本薬局方等の公定試験法拡充のための研究開発
  (一般試験研究費)

バイオ医薬品の重要品質特性となるタンパク質凝集体などの分析法について,米国薬局方参考情報の改正前後での変更点を整理し,国際調和の提案に向けた課題を明らかにした.

10) 純度試験としてのペプチドマップ試験法構築に関する研究
  (医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団研究補助金)

試料調製を行う際に,人為的な修飾の起きにくい条件(pH 6前後)と還元アルキル化及びトリプシン消化の効率的な条件(pH 7.5-8)には差があることから,各タンパク質ごとに最適な条件を設定する必要があることを確認した.

11) バイオ医薬品国際標準品の品質評価に関する研究
  (一般試験研究費)

トラスツズマブ国際標準品候補の生物活性を評価し,結果をNIBSC/WHOに報告した.

4.先端的バイオ医薬品等開発に資する品質・有効性・安全性評価に関する研究

1) 質量分析を用いた糖タンパク質の網羅的な部位特異的糖鎖差異解析手法の開発
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

前年度に引き続き,虚血再灌流処理ラット腎組織の薄切切片を用いて,腎線維化に関連する糖ペプチドの探索を行い,虚血後腎線維化の進行に伴い,複数の糖ペプチドの発現量に変化がみられることを明らかにした.

2) 特殊ペプチドの品質評価手法に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

研究班で作製した各種Plexin B1結合ペプチドに関して,PlexinB1との結合活性をSurface plasmon resonanceで解析すると共に,PlexinB1とSema4Dの結合阻害活性をAlphaLISAで解析した.ペプチドの立体異性体や劣化試料などについてもAlphaLISA解析を実施したところ,アルカリ処理による活性の低下が顕著であった.さらに,ペプチドのアルブミン結合性を解析した.

3) 中分子ペプチド医薬品の品質安全性確保に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

中分子ペプチド医薬品原薬の開発における留意事項をまとめ,「中分子ペプチド医薬品の品質評価・管理に関する考え方(案)」を作成した.

4) 抗体薬物複合体(ADC)の非標的細胞内取込に影響を及ぼす特性の解析
  (AMED医薬品等規制調和・評価研究事業)

前年度構築した実験系を用い,薬物修飾数・リンカー構造の異なるADCの非標的細胞内取込を評価した.また,ADCの凝集が非標的細胞移行性に関連する可能性を見出した.

5) 抗体医薬品の分子設計に起因するFcRn親和性の変化が動態等に及ぼす影響の解明
  (科学研究費補助金)

FcRn親和性改変抗体(アダリムマブ改変体)の血中濃度の推移や抗薬物抗体の産生について解析した.また,抗原や抗薬物抗体と複合体を形成することによる分布などへの影響について解析を行ったところ,複合体形成により臓器への蓄積量が変化し,改変体の種類や,複合体形成に用いる抗原や抗薬物抗体の種類によって影響の強さが異なっていた.

6) FcγRIIbを介する抗体医薬品の薬理作用・薬物動態制御機構の解明
  (科学研究費補助金)

ヒト肝類洞内皮細胞株にFcRIIbを遺伝子導入し,発現量の異なる複数クローンのFcRIIb安定発現細胞株を樹立した.

7) クライオ電子顕微鏡を用いた抗体IgG-FcγR複合体の構造解析
  (科学研究費補助金)

溶液中の生体分子の構造を高い解像度で観察できるクライオ電子顕微鏡を用いて,抗体-FcgR複合体の高次構造解析を行った.構造決定のためには,抗体-FcgR複合体を調製した後,グリッド上でのタンパク質が凝集を回避できる条件の設定が重要であることを見出した.

8) 抗SARS-CoV-2抗体検査キットの分析能評価に関する研究
  (一般試験研究費)

SARS-CoV-2に対する抗体検査キットの分析性能評価のため,COVID-19患者血清から標準血清を調製し,多機関による一斉性能評価試験を実施した.また,SARS-CoV-2に対するモノクローナル抗体を使ったイムノクロマトキットの性能評価を行い,キットや用いる抗体によって陽性判定となる抗体濃度が異なる傾向が認められることを明らかにした.

9) アルブミン融合ラクトフェリンに関する共同研究
  (一般試験研究費)

新規融合タンパク質であるアルブミン融合ラクトフェリンに関して,FcRnとの結合性を測定し,その特性を明らかにした.

10) トランスジェニック(Tg)カイコ発現TNFR-Fc融合タンパク質(エタネルセプト)の特性解析
  (一般試験研究費)

Tgカイコを用いて生産されたTNFR-Fc融合タンパク質(エタネルセプト)について,N結合型糖鎖構造,高次構造,Fc受容体との親和性,ターゲット(TNF)との親和性,安定性などの解析を行った.Tgカイコ由来TNFR-Fc融合タンパク質はアフコシル型糖鎖を多く含み,FcRIIIa及びFcRn結合親和性が高いこと,また,Fc部分の高次構造の一部がCHO由来エタネルセプトと異なることや,安定性が低いことを明らかにした.

11) 酵母(Pichia pastoris)発現アダリムマブFabの特性解析
  (一般試験研究費)

酵母を用いて発現した,アダリムマブのFabの特性に対する糖鎖付加の影響を評価した.糖鎖付加Fabは,野生型と比較して,凝集性及びマウスにおける抗原性が低いことを明らかにした.ラットに投与した後,薬物動態学的挙動を解析した結果,糖鎖付加Fabの半減期は,野生型Fabよりも短いことを示した.