研究内容(第2室)

1. 膀胱に対する発がん性・遺伝毒性の早期検出法開発

DNA 損傷マーカーであるγ-H2AXを用いた、より短期間で実施可能なin vivo遺伝毒性/発がん性評価系の開発を行った。

種々の化学物質を4週間投与したラット膀胱でのγ-H2AX形成
遺伝毒性・膀胱発がん性をともに示す物質で顕著に増加
→ 遺伝毒性膀胱発がん物質の早期検出指標として利用し得る
J Toxicol Pathol, 26:215-21, 2013; Toxicol Sci, 148:400-8, 2015 J Appl Toxicol, 38:537-43, 2018)

2. 芳香族アミンによる膀胱傷害メカニズムの解明

染料の原材料として汎用される芳香族アミン(o-トルイジン・o-アニシジン)による膀胱傷害機序を解明するため、経時的解析を実施した。

o-トルイジンによる膀胱傷害の経時変化
膀胱粘膜での γ-H2AX 形成

o-トルイジンとo-アニシジンはともに膀胱粘膜に対し DNA損傷を誘導するが、その粘膜傷害機序は互いに異なる。Arch Toxicol, 93:753-62, 2019)

3. ヘリコバクター・ピロリ除菌後胃がんの発生機序

ピロリ菌感染スナネズミ胃発がんモデルを用いて、除菌後胃がんの発生機序解明を試みた。

左:除菌後胃がん 右:除菌後に持続する慢性胃炎

除菌によって慢性胃炎は減退する一方、炎症は長期間にわたって持続することが明らかとなり、除菌後胃がんの発生に関与する可能性が示唆された。(BMC Gastroenterol, 13:122, 2013; Helicobacter, 21:131-42, 2016)