研究内容(第1室)

1. アカネ色素の腎発がん機序に関する研究

脱離エレクトロスプレーイオン化法を用いたイメージング質量分析(DESI-MSI)により、アカネ色素投与後のラット腎臓においてアントラキノン骨格を有する複数の構成成分が異なる分布パターンを示すことを明らかしました。さらに、変異原性を有するルシジンとルビアジンはアカネ色素の発がん標的部位である髄質外層外帯に特異的に分布することを明らかにしました。(Food. Chem. Toxicol., 161: 112851, 2022

2. アセトアミドのラット肝発がん機序に関する研究

肝発がん物質アセトアミドが肝臓において染色体異常を誘発することを明らかにしました。また、病理組織学的に細胞質内封入体として捉えられた大型小核では核膜構成タンパクの消失やDNA損傷の蓄積が経時的に生じることを明らかにしました。(Arch. Toxicol., 95: 2851-2865, 2021

3. 化学発がん過程における遺伝子突然変異誘発機序に関する研究

複製忠実度が低下したDNAポリメラーゼζ(Polζ)を発現するRev3lL2610M gpt delta miceを用いて、Polζがbenzo[a]pyrene誘発DNA損傷の損傷乗り越え複製(TLS)およびミスマッチ伸長反応を行うことを明らかにしました。(Mutagenesis, 47: 44-52, 2021

4. レポーター遺伝子導入動物を用いた包括的毒性試験

gpt deltaラットを用いた包括的毒性試験により、ラット肝発がん物質アセトアミドは肝毒性有することを明らかにしました。一方、肝臓において突然変異頻度の変化は認められず、肝発がん過程における突然変異誘発性の関与は乏しいと考えれました。(Toxicol.Sci., 177:431-440, 2020

5. マウス肝増殖性病変の分子病理学的特徴に関する研究

Piperonyl butoxide (PBO)の長期間投与によりマウス肝臓に発生する2つの増殖性病変(結節性肝細胞過形成と肝細胞腺腫)は、それぞれ異なる分子病理学的特徴を有していることを明らかにしました。(Toxicol. Pathol., 47: 44-52, 2019

6. アカネ色素の腎発がん機序に関する研究

アカネ色素の構成成分ルシジン配糖体が肝スルフォトランスフェラーゼにより代謝活性化され、腎臓にDNA損傷、遺伝子突然変異を引き起こすことを明らかにしました。(J. Appl. Toxicol., 39:650-657, 2019

7. 細胞内微小環境が遺伝子突然変異に及ぼす影響

香気成分エストラゴールの突然変異誘発性がフルメキンが引き起こす細胞内微小環境の変化によって増強されることを明らかにしました。(Food Chem. Toxicol., 129:144-152, 2019

8. 香気成分エストラゴールの肝発がん機序に関する研究

香気成分エストラゴールの突然変異誘発には特異的DNA付加体の形成に加えて、セリン/スレオニンフォスファターゼ2A(PP2A)のリン酸化によって生じる細胞増殖活性が重要であることを明らかにしました。(Toxicol. Appl. Phramacol., 336: 75-83, 2017

9. NRF2の遺伝子異常を有するヒトにおける大腸発がんリスクに関する研究

Nrf2欠損マウスにおける酸化ストレス介した小腸発がん機序に、COX2を介した細胞増殖活性の亢進が関与することを明らかにし、ヒトNRF2の遺伝的多形が大腸発がんのリスクとなる可能性を示唆しました。(Cancer Med., 5:1228-1238, 2016)

10. アクリルアミドの発がん機序に関する研究

アクアリルアミドのマウス肺発がん過程に、アクリルアミドの代謝物グリシドアミドから生じる7-GA-Guaが脱塩基することで生じる遺伝子突然変異が寄与することを明らかにしました。(Mutagenesis, 30:227-235, 2015

11. DNA傷害性・変異原性包括試験によるアカネ色素の発がん原因成分の同定

レポ―ター遺伝子導入動物を用いたin vivo変異原性試験と網羅的DNA損傷解析により、アカネ色素の発がんの原因が構成成分であるルシジン配糖体から生じるDNA損傷であることを明らかにしました。(Chem. Res. Toxicol., 86:1112-1118, 2012; Anal. Bioanal. Chem., 406:2467-2475, 2014

アカネ色素(Madder color; MC)