第三室

スタッフ
室長 田中 庸一 Tanaka Yoichi
主任研究官 塚越 絵里 Tsukagoshi Eri
研究補助員 佐藤 寛奈 Sato Kanna
研究補助員 小川 菜美子 Ogawa Namiko

業務紹介

第三室では、副作用発現の予測及び防止その他医薬品及び再生医療等製品の安全性の確保に関する研究を行っています。個人の持つ背景要因に基づいて作用発現の予測を行い、医薬品の安全性を確保するために、医薬品の安全性や作用に関連する遺伝要因の探索やゲノム薬理学的情報の利用に関する研究を実施しております。また、再生医療等製品の安全性評価法の開発と標準化に関する研究を実施しております。研究結果をガイドライン策定や国際標準化に反映することを目標としています。

  1. 医薬品による重篤な副作用に関するゲノムバイオマーカーの探索研究

    医薬品の副作用の中には重篤化するものがありますが、その発症には個人によって差があることが知られており、その要因として個人の持つ遺伝要因があります。この場合、副作用が発症しやすい遺伝子型を明らかにすることで、副作用を未然に防ぐ検査の導入や発症機序の解明につながります。第三室では、厚生労働省医薬局医薬安全対策課及び日本製薬連合会のご協力の下、医薬品使用に伴う重症薬疹、横紋筋融解症、間質性肺疾患に関して発症した患者さんの血液からDNAを抽出して遺伝子解析を行っています。発症患者さんが頻度高く保有する遺伝子多型について検討を行っています。

  2. 重症薬疹に関連するゲノムマーカーを利用した発症予測に関する研究

    Stevens-Johnson 症候群(SJS)及び中毒性表皮壊死症(TEN)等の重症薬疹について、痛風治療薬アロプリノールや、抗てんかん薬カルバマゼピン、ゾニサミド、フェノバルビタール、フェニトイン、解熱鎮痛薬、サルファ剤等のゲノムマーカーを探索し、ある種のHLA型を持っているとこれらの副作用が起こりやすくなることを発見しました。これらのマーカーを用いて、簡便・迅速に発症を予測できる検査法の構築を行っております。各医薬品の発症リスクを評価し、副作用発生の懸念が少ない医薬品を選択することで、安全で効果的な個別化治療の実現を目指して研究を行っております。

  3. ファーマコゲノミクスの臨床実装に関連する基盤情報を充実させる研究

    薬物を代謝する代謝酵素やトランスポーターに遺伝子多型があることで、代謝活性が変動して基質となる薬物の体内動態に影響し、薬物の作用発現に影響することが分かってきております。また、特定の医薬品ではヒト白血球抗原(HLA)の遺伝子型によって、副作用が発現する頻度が高いことが分かってきております。このような遺伝要因による情報は、電子化された添付文書等(電子添文)に記載されている医薬品がありますが、欧米と比較すると情報記載内容等に差があります。本邦の電子添文への医薬品作用に関連する遺伝情報の記載方法について、エビデンスの調査を通して検討しております。また、遺伝子多型による薬物動態への影響を生理学的薬物速度論(Physiologically-Based Pharmacokinetics, PBPK)モデルを利用して予測して、予測結果を利用した電子添文への反映を検討しております。

  4. 遺伝子治療用製品に関連するバイオアナリシスにおける分析性能に関する研究

    遺伝子治療用製品はベクター(ウイルスや脂質ナノ粒子等)に目的の遺伝子を搭載して投与されます。安全性や効果は、遺伝子の体内分布や体外への排出を定量して評価されます。定量は主に定量PCR(qPCRやデジタルPCR)が用いられますが、分析性能の評価法が未整備となっています。第三室では、生体試料や排出物中の遺伝子治療用製品のコピー数をqPCRやデジタルPCRで定量する方法について分析性能評価法の開発と標準化に向けた研究を行っています。また、ウイルスを利用した製品では、製品に対する抗体の存在が安全性や効果に影響します。そのため、ベクターを利用する製品を投与するに当たり、評価が必要となる抗ウイルスベクター抗体の分析法の開発と標準化を目指して研究を行っています。

  5. 小児医薬品の開発における既臨床データ利用に関する研究

    小児に対する臨床試験が実施されていないために、小児薬用量が示されていない医薬品があり、臨床利用できない医薬品があります。第三室では、経験的に使用したデータや成人のデータを利用して安全性や効果を評価する方法を検討し、小児におけるドラッグロスを減らすことを目標に研究を行っています。

【今後の展望】
医薬品の作用は、患者さんが併せ持つ背景情報によって個人差が大きいため、一律の治療では安全性が確保できない場合があります。患者さんの背景情報に基づく、個別化された治療を実施するための基盤整備に関する研究成果を創出し、医薬品の安全性確保に貢献したいと考えております。

<< 前のページに戻る