生活衛生化学部 第3室-カルタップ・ピラクロニル・フェリムゾン検査マニュアル

カルタップ・ピラクロニル・フェリムゾン 検査マニュアル

LC/MS/MSによる一斉分析法(別添方法20-2)

1.対象物質

 ここで対象とする農薬は,カルタップ,ピラクロニルおよびフェリムゾンである.ただし,カルタップは分解物であるネライストキシンを測定し,カルタップに換算する。また,フェリムゾンは,E体とZ体をそれぞれ測定する.

2.試薬

(1) 精製水
測定対象成分を含まないもの.
(2) メタノール
測定対象成分を含まないもの.
(3) 酢酸アンモニウム
測定対象成分を含まないもの.
(4) アスコルビン酸ナトリウム
測定対象成分を含まないもの.
(5) チオ硫酸ナトリウム
測定対象成分を含まないもの.
(6) 農薬標準原液
ネライストキシン,ピラクロニル,(E)-フェリムゾン,および(Z)-フェリムゾンのそれぞれ10mgを別々の100mLメスフラスコに採り,メタノールに溶かして定容したもの(各農薬100mg/L).これらの原液は,冷凍保存する.
(7) 農薬混合標準液
それぞれの農薬標準原液の一定量をメスフラスコに採り,精製水で薄めたもの.この溶液は,使用の都度調製する.

3.器具および装置

(1) メンブランフィルターろ過装置
孔径約0.2μmのメンブランフィルターを備えたもの.
(2) 液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析計
ア.分離カラム
内径2.1~4.6mm,長さ7.5~25cmのステンレス管にオクタデシル基を化学結合したシリカゲルを充填したもの又はこれと同等以上の分離性能を示すもの(表1参照).
イ.移動相
最適条件に調製したもの(表1参照).
ウ.移動相流量
対象物質の最適分離条件に設定できるもの(表1参照).
エ.イオン化法
エレクトロスプレー(ESI)法で,ポジティブイオンモードのもの.
オ.検出器
選択反応測定(SRM)又はこれと同等以上の性能を有するもの.
カ.フラグメントを得るための電圧
ESI法(ポジティブイオンモード)により得られたプリカーサイオンを開裂させてプロダクトイオンを得る方法で,最適条件に設定できる電圧.
表1. 液体クロマトグラフ装置条件の例
項目 設定値
カラム Shim-pack FC-ODS
(2.0 mm I.D. ×150 mm, 粒径3μm,島津製作所)
移動相A 5 mM酢酸アンモニウム水溶液
移動相B 5 mM酢酸アンモニウムメタノール溶液
グラジエント条件 B5(0min) - B45%(4 min) - B75%(24-27min) - B5%(27.1-40 min)
流速 0.20 mL/min
カラム温度 40℃
サンプルクーラー温度 5℃
注入量 最大100 μL

4. 試料の採取および保存

 試料は,精製水及びアセトンで洗浄したガラス瓶に採取し,満水にして直ちに密栓し,速やかに試験する.なお,残留塩素が含まれている場合には,試料水1 Lに対してアスコルビン酸ナトリウムあるいはチオ硫酸ナトリウム10~20mgを加える.
 ただし,フェリムゾンはアスコルビン酸ナトリウムによって分解するため,フェリムゾンを分析する場合においては,チオ硫酸ナトリウムを用いて残留塩素を除去する.

5. 試験操作

(1) 前処理
検水をメンブランフィルターろ過装置でろ過し,初めのろ液約10mLは捨て,次のろ液を試験溶液とする.
(2) 分析
上記(1)で得られた試験溶液の一定量を液体クロマトグラフ―タンデム型質量分析計に注入し,表2に示すそれぞれの農薬のモニターイオンのピーク面積を求め,必要に応じて下記(3)で求めた空試験のピーク面積を差し引いた後,下記6により作成した検量線から試験溶液中のそれぞれの農薬の濃度(すなわち検水中のそれぞれの農薬の濃度)を求める.
 ただし,ネライストキシンは,下の式からカルタップに換算し,検水中のカルタップの濃度を算定する. カルタップ濃度(mg/L) = ネライストキシン濃度(mg/L) × 1.59
また,フェリムゾンは,E体とZ体それぞれの濃度を合計し,フェリムゾン(E+Z)としての濃度を算定する.
表2. モニターイオンの例
農薬名 プリカーサイオン(m/z) プロダクトイオン※ (m/z)
ネライストキシン 150 105, 61
ピラクロニル 315 169, 241
フェリムゾン(E,Z) 255 91, 132

※プロダクトイオンをモニターイオンとする.

(3) 空試験
精製水100 mLを採り,上記(1)および(2)と同様に操作してそれぞれの農薬のモニターイオンのピーク面積を求める.

6. 検量線の作成

 農薬混合標準液を段階的にメスフラスコに採り,それぞれに精製水を加えて10 mLとする.以下5(2)と同様に操作して,それぞれの農薬のモニターイオンのピーク面積を求め,それぞれの農薬の濃度との関係を求める.

関連情報

  • 小林憲弘,久保田領志,水田裕進,木村慎,木村謙治,宮﨑悦子,植田紘行,齋藤信裕,加登優樹,古川浩司,粕谷智浩,岩間紀知,髙原玲華,林田寛司,塚本多矩,五十嵐良明:水道水中のカルタップ・ピラクロニル・フェリムゾンLC/MS/MS一斉分析法の開発と妥当性評価.水道協会雑誌,印刷中.