■ 水道水質検査方法の開発と妥当性評価

 水道水の安全性を確保するため、水質検査結果には正確性が求められます。そのため、全国の水質検査機関(水道事業体、衛生研究所、登録検査機関等)が水質検査を行う際の標準的な検査方法である告示法・通知法は、妥当性が検証された方法である必要があります。
 生活衛生化学部 第3室では、行政や水質検査機関のニーズに対応して、新しい水道水質検査方法の開発や、既存の検査方法の改良を行なっています。さらに、開発した検査方法を、妥当性評価(バリデーション試験)を経て最終的に標準検査方法とするために、告示法・通知法の発出までの各過程においても貢献しています(下図参照)。

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 一方、水道水質検査方法の運用に関しては、これまでに幾つかの課題が指摘されていました。

  • 新しい標準検査法を検査機関が導入する場合、各検査機関において明確な判断基準の妥当性評価が必要。
  • 標準検査法では記載例と「同等以上」の機器等の使用が認められているが、「同等以上」であることを示すための判断基準と妥当性評価が必要。

 これらの課題に対応するため、「水道水質検査における妥当性評価ガイドライン」が策定され、その改訂版が2017年10月に厚生労働省から通知されました(2018年4月施行)。また、2018年3月には同ガイドラインの補足として「水道水質検査方法の妥当性評価ガイドラインに関する質疑応答集(Q&A)」が厚生労働省から事務連絡として発出され、本Webサイトに掲載しています。
 「水道水質検査方法の妥当性評価ガイドライン」では、標準検査方法を新たに検査室へ導入する場合等には水道水を用いた添加回収試験を行い、ガイドラインに定められた各性能パラメータ(選択性、真度、併行精度、室内精度)がそれぞれの目標を満たすことを確認することとなっています。また、検量線の妥当性(キャリーオーバー、真度、精度)についても評価が必要となっています。

 生活衛生化学部 第3室では、検査方法の開発段階で得られた知見を基に、水道水質検査マニュアル妥当性評価SOP水道水質検査方法に関する質疑応答集(Q&A)を作成して本Webサイトで公開しています。

検査方法の開発例:水道水中農薬の一斉分析法

 農薬は「水質管理目標設定項目」に位置付けられ、浄水から検出されるおそれがある物質が対象農薬リストに示されています。また、近年の検出実態等を考慮して、対象農薬リストは随時、見直しが行われています。2013年3月の分類見直し農薬類の分類の見直しについてによって、新たに対象農薬リストに掲載された農薬の検査方法が必要となったことから、生活衛生化学部 第3室では、固相抽出-GC/MSおよびLC/MS/MSによる一斉分析法を開発しました。これらは標準検査方法として採用され、それぞれ別添方法5の2および別添方法20の2として厚生労働省より通知されました。

GC/MSによる対象農薬のSIMクロマトグラム
GC/MSによる分析対象農薬のSIMクロマトグラム
LC/MS/MSによる対象農薬のMRMクロマトグラム(ESIポジティブイオンモード)
LC/MS/MSによる分析対象農薬のMRMクロマトグラム(ESIポジティブイオンモード)

参考資料

妥当性評価の適用例:農薬およびEDTAの妥当性評価

 生活衛生化学部 第3室では、水質管理目標設定項目の農薬類、要検討項目のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の検査方法の開発において、開発した検査方法の妥当性評価を行いました。

農薬類の検査方法の妥当性評価の試験デザイン

農薬類の検査方法の妥当性評価の試験デザイン
農薬類の検査方法の妥当性評価の試験デザイン

参考資料

EDTAの検査方法の妥当性評価の試験デザイン

EDTAの検査方法の妥当性評価の試験デザイン
EDTAの検査方法の妥当性評価の試験デザイン

参考資料

関連リンク