■ 水道水質検査方法の開発

 水道水の安全性を確保するため、水質検査には正確性が求められます。そのため、国が定め、検査方法告示/通知として提示する標準検査法は、全国の水道事業体、衛生研究所、および登録検査機関が日常行う水質検査の基本的な方法となることから非常に重要です。
 生活衛生化学部 第3室では、行政あるいは現場からのニーズに対応して、新規水道水質検査方法の開発や既存の検査方法の改良を主たる研究業務としています。さらに、開発した検査方法を、最終的に水道水質の標準検査法とするために、検査方法告示/通知の発出までの各段階においても貢献しています(下図参照)。

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新着情報 (News)

研究課題の例:水道水中農薬の一斉分析法の開発

 農薬類は、水質基準を補完する「水質管理目標設定項目」に該当しており、浄水で検出される可能性の高い102物質(第1候補群)が対象農薬リストに示されていました。また、リストに揚げられていない農薬類についても、国内推定出荷量が一定以上あるものについては、第2候補群、第3候補群に分類され、検出状況の実体把握が行われていました。近年の使用実態の変化や許容一日摂取量(ADI)の見直しを背景に、対象農薬リストの更新が求められていたことから、今回、農薬類の検出のおそれについて改めて検討した結果に基づいて分類見直しが行われ、平成25月28日に厚労省から通知されました農薬類の分類の見直しについて
 以前の対象農薬リストに掲載されていた第1候補群102物質については標準検査法が示されていましたが、今回の分類見直しによって、新たに対象農薬リストに掲載された物質の標準検査法が必要となりました。そこで生活衛生化学部 第3室では、「対象農薬リスト掲載農薬類」、「要検討農薬類」、および「その他農薬類」を対象に、固相抽出-GC/MSおよびLC/MS/MSによる一斉分析法を開発しました。最終的に、これら2法は標準検査法として採用され、それぞれ別添方法5-2および別添方法20として、厚生労働省より通知されました。

GC/MSによる対象農薬のSIMクロマトグラム
GC/MSによる対象農薬のSIMクロマトグラム
LC/MS/MSによる対象農薬のMRMクロマトグラム(ESIポジティブイオンモード)
LC/MS/MSによる対象農薬のMRMクロマトグラム(ESIポジティブイオンモード)
LC/MS/MSによる対象農薬のMRMクロマトグラム(ESIネガティブイオンモード)
LC/MS/MSによる対象農薬のMRMクロマトグラム(ESIネガティブイオンモード)

参考文献

  • 小林憲弘,久保田領志,田原麻衣子,清水久美子,杉本直樹,西村哲治:水道水質管理目標設定項目の候補とされている農薬のGC/MS一斉分析法の開発.環境科学会誌,25(5),378-390 (2012).
  • 小林憲弘,久保田領志,田原麻衣子,杉本直樹,塚本多矩,五十嵐良明:水道水中の農薬類のLC/MS/MS一斉分析法の開発.環境科学会誌,27(1),3-19 (2014).

今後の課題

 現状においては、新たに対象農薬リストに掲載された農薬のうち、標準検査法が設定されていない物質の検査については、各検査実施機関においてガイドラインに基づく妥当性評価を行った検査方法によって行うこととされています。しかし、各検査機関において独自にこれらの物質の検査方法を開発し、さらに、ガイドラインの目標に適合するまで検討を続けることは困難と考えられます。

生活衛生化学部 第3室においては、これらの物質の分析法を引き続き開発し、標準検査法として設定することが急務と考えています。

■ 水道水質検査方法の妥当性評価

 水道水質検査方法の策定と運用に関しては、これまでに幾つかの課題が指摘されていました。

  • 標準検査法の設定には、明確な判断基準の妥当性評価が必要。
  • 新しい標準検査法を検査機関が導入する場合、各検査機関において明確な判断基準の妥当性評価が必要。
  • 標準検査法では「同等以上」の機器等の使用が認められているが、「同等以上」の判断は個々の検査機関に委ねられている。 標準検査法ではない方法が、標準検査法と「同等以上」であることを示すための判断基準と妥当性評価が必要。

 これらの課題に対応するため、「水道水質検査における妥当性評価ガイドライン」が策定され、その改訂版が平成29年10月18日に厚生労働省から通知されました(同ガイドライン改訂版は、平成30年4月1日から施行)。また、平成26年1月15日には、同ガイドラインの補足的位置付けとして、「水道水質検査方法の妥当性評価ガイドラインに関する質疑応答集(Q&A)」が厚生労働省から事務連絡として発出され、生活衛生化学部第3室のWebサイトに掲載しています。

新着情報

ガイドラインの概要

 「水道水質検査方法の妥当性評価ガイドライン」では、添加回収試験を行い、各パラメータがそれぞれの目標を満たすことを確認することとなっています。改訂された同ガイドラインの内容の詳細については、厚生労働省のWebサイトに掲載されている本文をご確認下さい。

ガイドラインの適用例

生活衛生化学部 第3室では、水質管理目標設定項目に該当する農薬類および要検討項目に該当するエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の検査方法の開発において、開発した検査方法の妥当性評価を行いました。
 また、妥当性評価の結果の一部については、水道協会雑誌に論文投稿し、現段階では2013年7月号(固相抽出-GC/MSによる水道水中の未規制農薬の一斉分析法の妥当性評価)および2013年8月号(固相抽出-誘導体化GC/MS法を用いたEDTA検査法の妥当性評価)に論文が掲載されています。

農薬類の検査方法の妥当性評価の試験デザイン
農薬類の検査方法の妥当性評価の試験デザイン
EDTAの検査方法の妥当性評価の試験デザイン
EDTAの検査方法の妥当性評価の試験デザイン

参考文献

  • 小林憲弘,久保田領志,田原麻衣子,杉本直樹,木村謙治,林広宣,山田義隆,小林利男,舟洞健二,三枝慎一郎,古谷智仁,杉本智美,五十嵐良明:固相抽出-GC/MSによる水道水中の未規制農薬の一斉分析法の妥当性評価.水道協会雑誌,82(7), 2-12 (2013).
  • 久保田領志,小林憲弘,田原麻衣子,今村悠佑,木村謙治,小林利男,齋藤信裕,杉本智美,林広宣,古谷智仁,舟洞健二,三枝慎一郎,山田義隆,杉本直樹,西村哲治,五十嵐良明:固相抽出-誘導体化GC/MS法を用いたEDTA検査法の妥当性評価.水道協会雑誌,82(8), 2-11(2013).
  • 小林憲弘,久保田領志,高玲華,安藤正典,五十嵐良明:液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC/MS/MS)による水道水中農薬類の一斉分析法の妥当性評価.水道協会雑誌,83(4), 3・4 (2014).
  • 小林憲弘,久保田領志,木村謙治,金田智,茶木哲,天満一倫,田中美奈子,三枝慎一郎,小林利男,舟洞健二,齋藤信裕,杉本智美,古谷智仁,小嶋和博,平林達也,五十嵐良明:水道水中11農薬を対象とした固相抽出-GC/MS一斉分析法の妥当性評価.水道協会雑誌,83(9),11・2 (2014).
  • 久保田領志,小林憲弘,齋藤信裕,鈴木俊也,小杉有希,田中美奈子,平林達也,五十嵐良明:固相抽出-LC/MS法によるフェノール類検査法の妥当性評価.水道協会雑誌,印刷中.

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