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研究概要(2019年度)

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研究概要

生物薬品部は,平成元年(1989年)に生物化学部からの改組により発足し,令和元年(2019年)春に創部30年を迎えた.生物薬品部の過去の活動や貢献を知るうえで,国立医薬品食品衛生研究所年報の業務報告が非常に役に立ったことから,30周年を記念して,所のHPに掲載されている年報の中から生物薬品部の業務報告を抜粋し,令和元年度はじめに「生物薬品部のあゆみ」として生物薬品部HPに掲載した.生体試料由来医薬品からバイオ医薬品に発展してきた我が国の生物薬品に関する歴史の一端を読み取ることができる資料となっている.現役のメンバーで積み重ねる業務報告が,我が国のバイオ医薬品に関する歴史の新たなページになることを認識し,社会に向けた責務を引き続き果たす必要があると考え,バイオ医薬品の品質・有効性・安全性確保に資するレギュラトリーサイエンス研究に取り組んだ.
 令和元年度は,バイオ医薬品に関連する薬事規制に関して,薬機法改正をはじめとするいくつかの大きな動きがあった.令和元年11月には,ICH Q12ガイドラインが国際調和され,グローバル開発される医薬品のライフサイクルマネジメントの効率化に資する考え方や仕組みが整うこととなった.令和元年12月4日に公布された改正薬機法では,先駆け審査指定制度及び条件付き早期承認制度が法制化されたことに加え,国際的な整合性のある品質管理手法の導入のため,欧米で既に運用されバイオ医薬品での活用事例が多い承認後変更管理実施計画書(PACMP)の利用が可能となり,Q12ガイドラインにも記載のある考え方がより上位の枠組みとしても構築されることとなった.PACMPをはじめとする新たなライフサイクルマネジメント手法の円滑な運用に向けては,生物薬品部でもPMDAや企業関係者と連携して,記載例作成などの取り組みを進めた.
 新たな製品の承認に関して,令和元年は,抗体医薬品5品目を含む8品目の新有効成分バイオ医薬品が承認され,新薬の大半を抗体医薬品が占める状況が続いた.バイオ後続品は8品目が承認され,1年間の承認品目数としてはこれまでで最も多くなった.
 生物薬品部での令和元年度からの新たな取り組みとして,厚生労働省の後発医薬品等品質確保対策事業において,バイオシミラーの品質確保のための調査と製品の試験が開始された.調査に関しては,ジェネリック医薬品品質情報検討会の事務局に生物薬品部が加わり,検討会参加団体の協力を得て,バイオシミラーに関する文献調査を行い,問題指摘論文の抽出と検討会での議論を行った.また,国内で流通しているバイオシミラー製剤の品質評価のため,2品目を対象に生物活性試験を実施し,規格及び試験方法への適合性を確認した.バイオシミラーは,バイオ医薬品の開発経験がない企業により販売される場合もあることから,安心安全な医薬品として受け入れられるには,このような品質情報の継続的な収集と検証が必要と考えられる.
 また,前年度より生物薬品部が事務局を務めて厚労省医薬品審査管理課,PMDA再生医療製品等審査部,及び業界団体関係者と議論を進めていた「バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針」の改正案がまとまり,令和元年6月に厚労省の意見公募に付され,令和2年3月4日に通知として発出された.
 AMED創薬基盤推進研究事業におけるバイオ医薬品の品質評価に関する官民共同研究では,バイオ製薬関連企業24社及び大阪大学と共に,先端的分析技術を用いたタンパク質凝集体評価法の分析性能評価研究などを継続し,秋の班会議では,米国コロラド大学のJohn Carpenter教授,ドイツミュンヘン大学のGerhard Winter教授,Wolfgang Friess教授,及びCoriolis Pharma のTim Menzen博士に参加して頂き,成果発表や話題提供と議論を行った.この内容を,前年度の班会議での議論と共に,日本におけるバイオ医薬品関連の官民共同研究の紹介を含めた原稿としてまとめ,J Pharm Sci誌のSpecial topic commentaryとして投稿し,受理された.
 AMED医薬品等規制調和・評価研究事業では,改変型抗体医薬品の品質安全性確保のため,前年度に続き,低分子抗体医薬品の品質及び安定性評価法の開発を進めると共に,pre-existing抗体の評価系を構築した.研究成果の一部は,「低分子抗体医薬品の品質安全性確保における留意事項」として総説にまとめ,医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス誌に投稿し,受理された.免疫原性評価に関連して,抗薬物抗体パネル整備を行い,リツキシマブ抗薬物抗体パネルの国際標準品としての策定のため,NIBSCとの連携による検討を進めた.次世代型中分子ペプチド医薬品の品質及び安全性確保のための規制要件に関して,不純物に関する検討を中心に議論を行った.新たな研究課題として,我が国に流通するバイオ後続品の品質を先行品との比較により評価する取り組みを開始した.AMEDのその他の事業では,バイオ医薬品の連続生産における品質管理手法に関する検討を進め,技術開発に先導的に取り組む海外企業やFDAを訪問して情報収集と議論を行った.
 研究課題に関して特筆すべき点は,若手研究員の応募課題が競争的研究費の若手枠に採択され,萌芽的な研究が進んだことである(「クライオ電子顕微鏡を用いた抗体IgG-FcγR複合体の構造解析(木吉真人研究員:文科省科研費若手)」,「抗体薬物複合体の非標的細胞内取込に影響を及ぼす特性の解析(青山道彦研究員:AMED規制調和事業若手育成枠)」).
 令和元年度に生物薬品部から発表された主な原著論文は,以下の通りである.青山,橋井,原園,多田,木吉,石井らによる論文“Effects of terminal galactose residues in mannose α1-6 arm of Fc-glycan on the effector functions of therapeutic monoclonal antibodies”(mAbs 2019)では,抗体医薬品のFc部分に結合している糖鎖に関し,非還元末端のGalがα1-6結合したMan側のGlcNAcに結合している場合に,α1-3結合したMan側に結合している場合と比較して,高いエフェクター活性を示すことを明らかにした.これまで明確になっていなかったG1F糖鎖の異性体間の特性の違いを明らかにした成果である.
 多田,青山,石井による論文“Fcγ Receptor Activation by Human Monoclonal Antibody Aggregates” (J Pharm Sci. 2020) では,抗体医薬品凝集体の特性とFcγ受容体活性化の関連について解析を行い,凝集体の粒子サイズなどとFcγ受容体活性化の関連を明らかにした.また,一連の解析を通じて,Fcγ受容体の活性化を介した免疫応答惹起に関する評価において,独自に構築したレポーター細胞を用いた評価系が有用であることを示した.
 鈴木,多田,石井による論文“Development of anti-drug monoclonal antibody panels against adalimumab and infliximab”(Biologicals 2020)では,抗TNFα抗体であるインフリキシマブ及びアダリムマブに対する抗薬物抗体パネルを作製し,抗薬物抗体分析法の評価における有用を示した.多くのバイオシミラーが開発される一方,抗薬物抗体出現による二次無効が問題となることのあるこれら製品における抗薬物抗体分析法の標準化に資する成果である.
 橋井,東阪,石井らによる論文“Generic MS-based method for the bioanalysis of therapeutic monoclonal antibodies in nonclinical studies.”(Bioanalysis 2020)では,LC/MSを用いた生体試料中の抗体医薬品の分析法の標準化を行った結果を報告した.ELISAなどのリガンド結合法を補完する新たな生体試料中薬物濃度分析法として今後の活用が期待される.
 原園らによる論文“NIST Interlaboratory Study on Glycosylation Analysis of Monoclonal Antibodies: Comparison of Results from Diverse Analytical Methods.”(Mol Cell Proteomics 2020)では,米国の標準技術研究所により策定されたモノクローナル抗体標準品を試料として,種々の糖鎖分析法での分析結果を比較する国際共同研究に参加した成果が報告された.
 これらの研究の他,公的試験検査として,医薬品等GMP対策事業において 1品目の評価,後発医薬品品質確保事業において2品目の試験を実施した.また,厚生科学審議会, PMDAにおける審査業務や日局改正などに協力した.
 海外出張は以下の通りであった.石井部長:13th Workshop on Recent Issues in Bioanalysis(米国・ニューオーリンズ:令和元年4月1日 ~4月5日,口頭発表),ICH M10 専門家作業部会会議(シンガポール:令和元年11月16日~20日);柴田室長:ICH Q2(R2)/Q14 専門家作業部会会議(オランダ・アムステルダム:令和元年6月2日~5日),USP Bioassay Workshop(米国・ロックビル:令和元年9月18日~19日),ICH Q2(R2)/Q14 専門家作業部会会議(シンガポール:令和元年11月17日~20日);多田室長:WHO Expert Committee on Biological Standardization (ECBS)(スイス・ジュネーブ:令和元年10月21日~10月24日)

研究業績

1.バイオ医薬品の品質評価に関する研究

1) バイオ医薬品の凝集体/不溶性微粒子試験法の開発と標準化
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

FI法について,シリコーンオイルとタンパク質凝集体を識別するための解析方法の標準化を目的に,共通のモデルデータを用いて多機関による共同研究を行い,機械学習を使った分類の有用性を示した.サイズ排除クロマトグラフィー,定量的レーザー回折及び共振式質量測定法の分析性能を評価するため,モデルタンパク質凝集体試料を使った共同測定を実施した.

2) 標準的な糖鎖試験法の開発
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

これまでの3年間の多機関での検討結果を基に,N-結合型糖鎖の糖鎖プロファイル法の手順に関する日局参考情報案の作成を行った(2-AB,2-AA及びAPTS法).

3) 宿主細胞由来タンパク質試験法に関する研究
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

①ELISAによるHCP濃度測定において,試料希釈時の撹拌操作ストレスにより測定値が低下することを明らかにした. ②LC/MSを用いたHCPの同定法・定量法における試料調製条件を検討し,従来の汎用条件では酵素消化が十分に進んでおらず,強い変性反応後に消化する必要があることを明らかにした.

4) バイオ医薬品の力価試験法に関する研究
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

力価試験の結果から相対力価を算出する際の留意事項をまとめ,日局バイオアッセイ参考情報案を作成した.

5) Fc受容体固定化カラムを用いた抗体医薬品の特性解析法の開発
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

FcγRIIIa固定化アフィニティークロマトグラフィーによる抗体医薬品などの分離機構を解明するため,酵素消化により,種々の抗体医薬品のFabとFcを分離した後,FcγRIIIaへの親和性を評価した.

6) 改変型抗体医薬品等の構造解析に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

非天然型特殊アミノ酸導入トラスツズマブFab(Tra-Fab)及び抗腫瘍活性を有する低分子化合物などをコンジュゲートしたTra-Fabの高次構造評価を行い,特殊アミノ酸の導入部位,及びコンジュゲート分子の違いにより高次構造の揺らぎに変化が生じることを明らかにした.また,高次構造の揺らぎの変化が凝集体形成に影響を及ぼすことを明らかにした.

7) 改変型抗体の長期安定性の予測法の確立
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

PEG化Fabの熱力学的安定性の測定結果から,分子内の構造が変化し緩く変性した状態を取っていることを明らかにした.また,長期安定性の予測に有用な物性の抽出を行うため,凝集性と第二ビリアル係数を評価した.

8) 改変型抗体医薬品の品質安全性評価に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

HEK293細胞及びTIG3細胞を用いてTra-Fabの毒性評価を行い,ヒトにおいて想定される血中抗体医薬品の濃度範囲において,細胞傷害活性は認められないことを確認した.また,低分子抗体医薬品の開発に際して,品質安全性確保の観点から留意すべき事項を総説としてまとめた.

9) 液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を用いた血中抗体後続品の構造特性評価に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

LC/MSを用いた血中抗体医薬品の糖鎖プロファイル解析手法を確立し,抗体医薬品先行品及び後続品の糖鎖プロファイルの比較データを取得することを目的として,インフリキシマブをモデル抗体医薬品として,ヒト血清試料から,抗体医薬品を回収するための前処理手法を確立した.

10) バイオ後続品の同等性/同質性に用いられる生物活性評価法に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

抗体医薬品の生物活性評価法に関する分析性能比較,特にFcγRIIIaの遺伝子多型が抗体医薬品の生物活性評価に与える影響を様々な評価法で確認し,品質特性の類似性比較における遺伝子多型の影響と各試験系の有用性を検証した.

11) バイオ後続品の同等性/同質性評価に用いられる品質評価手法に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

凝集体及び不溶性微粒子の評価に用いられる各種分析手法について,分析原理や測定可能範囲(粒子径,粒子濃度)など性能に関する情報を整理し,測定条件の最適化を行った.

12) バイオ後続品に関する市販後安全性調査と品質確保に関する研究
  (一般試験研究費)

バイオ後続品の品質評価のための試験法を整備した.

2.バイオ医薬品の有効性・安全性評価に関する研究

1) LC/MSを用いた高分子薬物濃度測定法に関する研究
  (AMED 創薬基盤推進研究事業)

バイオトランスフォーメーションの解析手法を開発する一環として,Peptide Adsorption-Controlled (PAC)-LC/MSを用いた抗体医薬品の定常領域及びCDRペプチドの同時定量手法を構築した.また,複数機関による分析法バリデーションにより,良好な結果が得られることを確認した.

2) Pre-existing antibodyに着目した改変型抗体医薬品の安全性予測・評価に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

これまでに構築した検出系を活用して非天然型アミノ酸導入低分子抗体,VHH,BiTEなどの非天然型構造を有する改変型抗体を認識するヒト血漿中のpre-existing antibodyの存在を明らかにした.

3) 抗体医薬品に対する抗薬物抗体(ADA)パネルの構築
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

ADAの発現・精製を行い,抗アダリムマブ抗体と抗インフリキシマブ抗体(IgG4型,IgE型,IgM型)計40種を得た.これらの抗体について,薬物(アダリムマブ,インフリキシマブ)に対する親和性,各種ADA測定系でのレスポンスなどの特性解析を行った.確立済みの抗リツキシマブ抗体について,次世代バイオ医薬品製造技術研究組合にて製造された試料の結合活性評価を行い,NIBSCに提供すると共に,国際標準品とするクローンの選別について協議を進めた.

4) 免疫原性評価法に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

①抗薬物抗体分析法の構築における陽性判定基準の設定に影響する統計解析上の要因を明らかにした. ②抗薬物抗体の中和活性やアイソタイプの解析など特性を解析するための測定法の最適化を行った.

5) 補体活性に着目したバイオ医薬品の凝集体特性と安全性との連関
  (科学研究費補助金)

PEG化体などの凝集体や凝集体とシリコーンオイルについて,補体活性化の有無を調査した.

6) Fcγ受容体IIIbを介した,抗体医薬品によるヒト好中球活性化機構の解明
  (科学研究費補助金)

前年度同定したタンパク質の一部がFcγRIIIbを介した細胞活性化の際に活性化することを確認した.また,前年度樹立したFcγRIIa-FcγRIIIb共発現細胞に関し,ヒト好中球を模したレポーター細胞としての有用性を検証した.

7) バイオ後続品による有害事象の調査
  (一般試験研究費)

インフリキシマブのバイオ後続品などによるインフュージョン関連反応などの有害事象について調査した.その結果,先行品と有意差のある場合はあったが,複数の国で共通の傾向は認められなかった.

8) バイオ医薬品の国内外における有害事象発現状況の調査
  (一般試験研究費)

各種のインターフェロン製剤について併用薬などを考慮し,自殺関連有害事象などについて解析を実施した.その結果,製剤間で有意差のある場合はあったが,日本や米国,フランスなどで共通の傾向は見出されなかった.

3.日本薬局方等における生物薬品関連試験法の整備と国際調和に関する研究

1) 日本薬局方の国際化に関する調査研究
  (医薬品承認審査等推進費)

第十七改正日本薬局方第二追補に収載される生物薬品関連の各条,一般試験法,及び参考情報について,適切な英語表記に関する調査を行った.

2) 日局各条生物薬品に含まれる不純物等の規格及び試験法原案の作成及び検証に関する研究
  (医薬品承認審査等推進費)

日局グルカゴン(遺伝子組換え)各条に設定されている逆相HPLCによる純度試験(類縁物質及びデスアミド体)について,合成グルカゴンの純度試験(類縁物質)の分析手法としての適用可能性を実証した.

3) バイオ後続品の品質・安全性・有効性評価のための指針改正に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

「バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針」及び質疑応答集の改正案を作成し,意見公募を経て,最終案を作成した.

4) Analytical Quality by Design (AQbD) による分析法のライフサイクルマネジメントに関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

AQbDを使って分析法を開発した際のデザインスペースについて,開発・運用・要件の考え方をまとめた.CTDに記載すべき要素について議論し,CTDモック素案を作成した.

5) バイオ医薬品のライフサイクルマネジメントに関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

バイオ医薬品の品質に関する教育資材として,承認申請書及びCTDのモック案を作成した.また,ICH Q12ガイドライン及び改正薬機法の円滑な運用のため,バイオ医薬品の承認後変更管理実施計画書(PACMP)の記載例作成に着手した.

6) 生体試料中薬物濃度分析法バリデーションの国際調和に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

ICH M10ガイドライン案の和訳版を作成し,厚労省における意見公募に供した.また,国内関係者からの意見をまとめ,専門家作業部会に提出した.

7) 分析法バリデーション/分析法開発ガイドラインの国際調和に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

ICH Q(R2)/Q14ガイドラインの専門家作業部会においてドラフト案の作成を進めた.内容に関するハイレベルな意見聴取を目的に,関係団体内での説明会を実施した.

8) 日本薬局方の試験法開発と規格設定による医薬品の品質確保に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

生物薬品の生物活性評価などに用いられるフローサイトメトリーに関して,海外薬局方における動向を調査し,米国薬局方,及び,欧州薬局方に収載されている内容について整理した.

9) バイオ医薬品の品質確保の基本的考え方に関する検討
  (医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団研究補助金)

ICHガイドライン(Q5シリーズ・Q6B)を対象に,バイオ医薬品の品質確保における主な要素や基本となる考え方を抽出し,ICH Qカルテットの考え方を取り込んだバイオ医薬品の品質確保における基本的考え方をまとめた.

10) 純度試験としてのペプチドマップ試験法構築に関する研究
  (医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団研究補助金)

試料調製を行う際に,人為的な修飾の起きにくい条件(pH 6前後)と還元アルキル化及びトリプシン消化の効率的な条件(pH 7.5-8)には差があることから,各タンパク質ごとに最適な条件を設定する必要があることを確認した.

11) 日本薬局方等の医薬品品質公定試験法拡充のための研究開発
  (一般試験研究費)

日局参考情報「バイオ医薬品の品質確保の基本的考え方」収載原案を作成した.

12) バイオ医薬品国際標準品の品質評価に関する研究
  (一般試験研究費)

ベバシズマブ国際標準品策定のための国際共同検定に参加し,標準品候補品の生物活性を評価した結果をNIBSC/WHOに報告した.

4.先端的バイオ医薬品等開発に資する品質・有効性・安全性評価に関する研究

1) 質量分析を用いた糖タンパク質の網羅的な部位特異的糖鎖差異解析手法の開発
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

これまでに検討した糖ペプチド濃縮技術,及び糖ペプチド同定技術を用いて,モデル培養細胞等由来の酵素消化物を試料として,糖ペプチドデータの集積を行った.

2) 特殊ペプチドの品質評価手法に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

ペプチド医薬品(PD-L1結合ペプチド)について,含まれる類縁物質の構造を解析すると共に,これらの類縁物質の多くが活性を保持していないことを確認した.また,非臨床毒性試験に供するペプチド試料(PD-L1結合ペプチドとその酸化体及び立体異性体)について,生物活性の解析などを実施した.

3) 中分子ペプチド医薬品の品質安全性確保に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

中分子ペプチド医薬品原薬に含まれる不純物評価・管理の考え方を整理するため,想定される不純物リストを作成し,毒性の観点から注意が必要なものを抽出した.

4) バイオ医薬品の連続生産における品質管理手法に関する研究
  (AMED 医薬品等規制調和・評価研究事業)

バイオ医薬品の連続生産における品質評価に関して,海外の企業及び規制当局を訪問して,調査を行った.また,抗体医薬品を対象としたMAMのための前処理手法を最適化すると共に,同手法を用いたMAMにより,20種類以上の翻訳後修飾ペプチドのモニタリングが可能であることを実証した.

5) 抗体薬物複合体(ADC)の非標的細胞内取込に影響を及ぼす特性の解析
  (AMED医薬品等規制調和・評価研究事業)

薬物修飾数・リンカー構造の異なるADCを複数種類作製すると共に,作製したモデルADCを用い,ADCの特性解析系,標的・非標的細胞への移行性評価系を構築した.

6) 抗体医薬品の分子設計に起因するFcRn親和性の変化が動態等に及ぼす影響の解明
  (科学研究費補助金)

ヒトFcRnトランスジェニックマウスに蛍光共鳴エネルギー移動型の標識を施した各種FcRn親和性改変抗体を投与し,改変抗体種によって,臓器への蓄積量や分解の程度が異なることを明らかにした.また,FcRn親和性改変抗体の血中濃度の推移や抗薬物抗体の産生について検討を開始した.

7) FcγRIIbを介する抗体医薬品の薬理作用・薬物動態制御機構の解明
  (科学研究費補助金)

ヒト肝類洞内皮由来の複数種類の細胞株について,内在性FcγRIIbの発現量,及び,FcγRIIbの介在する抗体の細胞内輸送評価系としての適用可能性について検討を進めた.

8) クライオ電子顕微鏡を用いた抗体IgG-FcγR複合体の構造解析
  (科学研究費補助金)

数種類のIgGとFcγRを試料として,タンパク質溶液の分散性を評価する負染色を行った.その結果,リツキシマブとFcγRIの組み合わせにおいて,最も良好な負染色の結果が得られ,像が得られることを明らかにした..