食品からの微生物標準試験法検討委員会(標準試験法検討委員会)について


・標準試験法検討委員会とは

これまでわが国の食品の微生物検査は、厚生労働省からの告知・通知法および食品衛生検査指針をもとに、行われてきました。告知・通知法は長期に渡り見直されることなくそのまま用いられているものがあります。これまで試験法策定は公開ではありませんでした。告知・通知法の無い微生物においては、食品衛生検査指針の試験法が用いられることが多いわけですが、この方法は公定法ではありません。検査指針の原稿は執筆担当者に任されており、指針の版を改めるたびに、その実行性の評価を受けることなく試験法は書き換えられてきました。
食品の微生物試験法の信頼性を向上させ、実効性の高い試験法として広く使われるためには、食品の試験法はどうあるべきであるかの議論を行ったうえで、その方向性を確認する必要があります。そこで、食品の細菌検査に関係する専門家を集め、食品の微生物試験法はどうあるべきかを議論し、その基礎となる標準試験法作成のガイドラインを作成し、今後の食品の細菌検査の方向性を示すために、“食品からの微生物標準試験法検討委員会”を立ち上げることになりました。
				

・標準試験法検討委員会の課題

わが国における食品の細菌標準試験法はどうあるべきかの方向性を示すのが目的です。
現在、国際的に広く認められている食品の細菌試験法は、そのプロトコール作りの段階から、多くの専門家や、実際に試験を行う技術者の意見を広く求め、試験法案を検討し、コラボスタディーにより、複数の試験室で実行性の評価を行ったのち、最終案がまとめられています。
さらに、一度作成された試験法も常に修正が必要かどうかの検討が加えられています。
わが国の標準試験法策定に当たっては、このような手法をどのように取り入れてゆけば、より良い試験法ができるであろうかの議論を行い、“NIHSJ(標準試験)法”策定に当たって守るべき重要な箇所を検討し、標準試験法作成の注意点をまとめたガイドラインを作りたいと考えています。
細菌標準試験法策定にあたっての議論のポイントは以下のように考えています。
				
  1. 最も基準となる標準的な細菌試験方法は、培養法である。
  2. 試験法作成に当たっては原案作成段階から公開とし、その妥当性を、多くの専門家や技術者に意見を求める。
  3. 試験法ができあがる段階で、その実行性について複数の試験室で評価を受ける。
  4. よりよい試験法として、必要であれば、常に見直しを行い2~3の手順に従い修正が加えられる。
  5. 国際的に認められている試験法との互換性や、同等性を尊重する。
  6. その他

このような検討により期待される効果

食品の細菌試験の基準となる“NIHSJ(標準試験)法”を持つことは、主に以下のようなメリットが考えられると思います。
				
  1. 食品の細菌試験法が、その作成段階から公開されることにより、より多くの人から意見を求めることができ、より良い試験法策定が期待できる。
  2. 最終試験法は、多くの試験室の評価を受け、実行性が担保された方法となる。
  3. プロトコールに従って試験を行えば、適切な精度での細菌試験が期待されると共に、試験技術の精度に関する評価を行うことが可能である。
  4. 規格化された“標準法”は、他の試験法の尺度として使えるようになり、今後開発される食品のリスクマネージメントに適した迅速法や簡便法などの評価を、標準法を尺度として行うことができる。
  5. 標準法と同等以上の精度や感度であると確認された迅速法は、それに準ずる方法と考えることができ、それぞれの目的に適した試験法が広く利用できる道を開くことになる。
  6. より簡便でコストの安い優れた迅速試験法を開発するメリットが見えることにより、さらに優れた食品からの微生物試験法の開発を活性化する。
標準試験法検討委員会が作るガイドラインに従って、食品の微生物標準試験法が策定されれば、これにより、今後新規に開発される微生物試験法を、この標準法と比較することが可能となり、同等ないしはそれ以上の正確さで微生物を検出可能であるかについて、客観的に評価する尺度が確立します。この尺度の確立により、必ずしも菌の分離を必要としない食品のリスクマネージメントに適する、迅速試験法の評価が可能となります。培養法では不可能であった試験の迅速化を期待できる、分子生物学的手法を応用した試験法の導入が可能となり、よりすぐれた迅速高感度な試験法の開発の活性化が期待されます。
				
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