ノロウイルス感染症の発生動向
    

ノロウイルス感染症と感染性胃腸炎

ノロウイルス感染症は,散発発生,集団感染症,食中毒を問わず年間数百万人の患者が発生していると推定されています。これは年間のノロウイルス食中毒患者報告数の数百倍にあたります。感染者の多くは乳幼児,小児の子供です。感染症発生動向調査の「感染性胃腸炎」報告数から年次推移をみると,2000年以降増減はあるもののほぼ横ばいで推移していたが,2006/07シーズン(ここでは、1シーズンを9月〜翌年8月とします)は最大の報告数が記録されました。2012/13シーズンは,2006/07シーズンに次ぐ流行であると報道されています(2012年12月14日現在)。

「感染性胃腸炎」報告数はノロウイルス患者発生数を示すデータとしてしばしば利用されていますが,その情報利用には以下の2点に留意する必要があります。最初に,「感染性胃腸炎」はノロウイルス以外に,ロタウイルス,サポウイルス,アストロウイルス,アデノウイルスなどの他の多くのウイルスや細菌も原因となり,必ずしもノロウイルスによる感染性胃腸炎を意味しません。特に,冬季に乳幼児で流行するロタウイルスの患者数は無視できる数ではありません。一般的な傾向としては,11月から翌年の3月頃まではノロウイルスが流行し、年明けから春先にかけてロタウイルス流行が流行することが多いとされています。

2点目として,ノロウイルス感染は小児のみならず大人でも起こりますが,「感染性胃腸炎」は小児科定点からの報告のみで大人や高齢者の散発感染例はほとんど把握されていません。そのため,ノロウイルス感染による感染性胃腸炎の年齢別の発生割合を必ずしも正確に反映しているものではありません。

ノロウイルス集団感染の発生動向

ノロウイルスによる集団感染症は,従来,保育園,小学校など子供の集団施設での発生が主体でしたが,2003年頃から北海道など特定の地域で高齢者施設の集団感染事例報告が増加し、注目されていました。そのような中,2004年末から年明けにかけて広島県福山市での死亡者を伴う集団感染が大々的に報道されて以降,全国各地から高齢者施設集団感染が多数報道されました。厚生労働省が緊急調査した同時期の集計では,236施設で発生し,患者7,821人,ノロウイルス陽性者5,371人(推定を含む),死亡者12人となっています。同様の調査はその後行われていませんが,国立感染症研究所感染症情報センターに地方衛生研究所から報告される集団発生報告に基づくと,その後も高齢者施設で集団発生が多発し,20006/07シーズンは464件が発生しています。その後,高齢者施設での集団感染は減少傾向を示しています。一方,ここ数年は再び保育園や小学校での集団発生が増加傾向にあります。これらの高齢者施設や学校等での集団感染事例の増減には,流行するノロウイルスの遺伝子型が関連していることが,最近の研究から示唆されています。

 

      

関連情報   

感染症発生動向調査における感染性胃腸炎報告数(国立感染症研究所)

感染性胃腸炎とは(国立感染症研究所)

食品媒介胃腸炎集団発生事例(国立感染症研究所) 

 

  

(平成24年12月27日掲載)    


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