ノロウイルス食中毒の発生動向

 

ノロウイルスによる食中毒は,感染性胃腸炎の多発時期と一致して,11月から急増し,12月をピークとして,3月まで多く発生しています。近年のノロウイルスの食中毒は夏場を含み通年性に発生がみられます。2002/03〜2010/11シーズンの食中毒統計を中心としてノロウイルス食中毒の発生動向をまとめました。


二枚貝関連食中毒事例
カキによるノロウイルス食中毒は,2002/03シーズンはノロウイルス食中毒事例の約27%を占めていましたが、その後2006/07シーズンまでは減少傾向にあり,同シーズンではノロウウイルス食中毒513事例のうち、わずか13事例(2.5%)を占めるにすぎませんでした。しかし,それ以降再び増加傾向にあります。2002/03〜2010/11シーズンの平均では約11%がカキが原因となっています。2011年は,岩カキ関連事例が6月を中心に5月〜8月に7件と多発しました。同時期にはカキフライが関連した事例も5件が報告されていますが,加熱不十分のカキフライが原因と推定されます。カキ以外の貝類では,シジミ,アサリ,ハマグリなどが関連した事例が23件報告され,特に,アサリの醤漬け・酒漬が原因食品となった事例が多くを占めています。


食品取り扱い者からの食品の二次汚染による食中毒事例
現在のノロウイルス食中毒は,食品取扱者からの食品の二次汚染を原因とする事例が多くを占めています。原因食品としては,施設提供料理,会席料理,仕出弁当,宴会料理など,具体的な食品の種類が特定されないケースが大半を占めます。これは,ノロウイルスが極微量のウイルスによって感染が成立し、また、食品のウイルス汚染量が少ないことなどから,食品からのウイルス検出が困難であることが大きな理由です。原因食品が特定された事例では,刺身、寿司、サラダ,餅,菓子(おはぎ,ケーキなど),パン,サンドイッチ等による事例が報告されています。


その他のノロウイルス食中毒
その他のノロウイルス食中毒として,欧米では「〜ベリー」(ストロベリー,ラズベリー,ブルーベリーなど)による食中毒が注目されています。2012年9月ドイツの複数の州で中国産のイチゴが原因と推定される患者数10,000人を超えるノロウイルス食中毒が発生しました。また,レタスなどの生鮮野菜による食中毒も発生しています。これらは,ノロウイルスに汚染した水の土壌汚染あるいは,ノロウイルス汚染水を収穫後の洗浄に使用したことにより、食品が汚染したものと考えられています。わが国では,井戸水,地下水などの水を介した食中毒事例が4件報告されています。ノロウイルスの汚染を受けた水の直接的,間接的な摂取による感染や,輸入生鮮野菜や果物についても注意を払う必要があります。


発生場所と発生規模
ノロウイルス食中毒事例は,飲食店,旅館,仕出屋,事業場,病院,学校など様々な施設で発生しています。特に,飲食店での発生が半数以上を占めますが,2006/07シーズンは仕出屋や旅館を原因施設とする事例の増加が目立ちました。 1事例当たりの患者数は,製造所,仕出屋が多く,それぞれ1事件当たり平均117人,101人の患者が発生しています(2002/03〜2010/11シーズン平均)。


大規模食中毒事例
2007年から2011年までに発生した食中毒事例のうち,患者数が最も多かった事例は2007年12月に奈良県で発生した仕出弁当が原因と推定されるノロウイルスによる食中毒事例で,摂食者4,137人のうち1,734名が発症しました。その事例を含め患者数ワースト20のうち,ノロウイルスによる事例10件を含む11件がウイルス(他の1事例はサポウイルス)によるものです。ノロウイルスによる事例についてみると,原因施設では10件中7件が仕出屋,学校(給食施設),飲食店,製造所が各1件,原因食品は10件中8件は不明(仕出弁当等が推定),かみかみ和え(推定),ミニきなこねじりパンが各1件です。

   

2012年12月には、広島市で弁当を原因とする患者数1,976人(2013年1月7日,広島市報道資料)に上る大規模ノロウイルス食中毒が発生しました。この患者数は、ノロウイルスによる食中毒としてはノロウイルスの食中毒の集計を始めた1998年以降最多となります。

         

        
関連情報   

ノロウイルス食中毒 2011年現在 (国立感染症研究所)

 

   

(平成24年12月27日掲載、平成25年1月10日最終更新)      


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国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部第四室ノロウイルス関連情報>ノロウイルス食中毒の発生動向

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