トウモロコシ中のモディファイドフモニシン

フモニシンはフザリウム属菌が生産するカビ毒で、主にトウモロコシやその加工品に検出されます。近年、遊離型のフモニシンに加え、そのモディファイド化合物もトウモロコシ加工品に存在することが報告されていますが、モディファイドフモニシンの毒性や汚染実態については明らかになっていないことがほとんどです。そこで、日本人の健康に対するモディファイドフモニシンのリスクを評価するために、日本に流通するトウモロコシ加工品に含まれるモディファイドフモニシンを解析しました。食品検体中の遊離型とモディファイドフモニシンをまとめてアルカリ処理し、加水分解フモニシンへと変換し、LC-MS/MSで定量した値を全フモニシン量としました。その結果、コーンフレーク、コーンスナック、コーンフラワーおよびコーンスープにおける全フモニシン量は、遊離型フモニシンに対してそれぞれ4.7、2.8、2.1および1.2倍でした。全フモニシン量を用いて日本人におけるコーンスナックとコーンフレークからのフモニシンの一日平均摂取量を算出した結果、遊離型フモニシンを用いて算出した場合の3倍となりました。これらの結果より、フモニシンの真のリスクを評価するためには、モディファイドフモニシンも含める必要があると考えられました。
(本研究は、平成30~31年度食品健康影響評価技術研究「フモニシンのモディファイド化合物のリスク評価に関する研究」により行われたものの一部です。)
参考「Food Hygiene and Safety Science 2020,61(4):119-125」

ステリグマトシスチン

日本国内に流通する穀類や加工食品を対象に、LC-MS/MSを用いた分析法を用いてステリグマトシスチン(STC)の汚染調査を2016~2018年に行いました。STCは、アセトニトリルと水の混液(85:15)で抽出し、イムノアフィニティーカラムで精製しました。添加回収試により分析法の性能を評価した結果、平均回収率は100.3%(0.5μg/kg添加)及び92.5%(5μg/kg添加)でした。3年間で583試料の調査を実施した結果、STCの陽性率は19.9%(定量限界値0.05μg/kg)でした。STCは、小麦粉、ハト麦加工品、ライ麦粉、米、そば粉、ホワイトソルガム、大麦加工品、小豆及びトウモロコシ粉から検出されました。陽性率が高かったのは、小麦粉(44.4%)、ハト麦粉(41.7%)とライ麦粉(29.9%)でした。平均濃度が最も高かったのは、ハト麦加工品とライ麦粉の0.3μg/kgでした。最大濃度7.1μg/kgはハト麦粉で認められました。
(本研究は、平成28~30年度厚生労働科学研究費補助金 食品の安心確保推進研究事業「国際的に問題となる食品中のかび毒の安全性確保に関する研究」により行われたものの一部です。)
参考「Food Addit Contam Part A 2019,36(9):1404-1410」

デオキシニバレノール、ゼアラレノン、T-2トキシン及びHT-2トキシン

小麦、大麦と日本国内に流通する食品における4種のフザリウムトキシン「デオキシニバレノール(DON)」、「ゼアラレノン(ZEN)」、「T-2トキシン」、「HT-2トキシン」の汚染実態調査を2010~2012年に行いました。LC-MS/MSを用いた4種のカビ毒の同時分析法を小規模の研究室間共同試験によって評価し、4種のカビ毒の回収率の平均値は77.3から107.2%の範囲でした。 3年間で10種類計557試料の調査を実施し、T-2とHT-2トキシンの両方が小麦、小麦粉、大麦、ハト麦加工品、ビール、コーングリッツ、小豆、大豆と雑穀米で検出されました。ゴマにおいてはT-2トキシンのみが検出されました。T-2トキシンの最高値は小豆で48.4μg/kg、HT-2トキシンの最大値は小麦の85.0μg/kgでした。DONは小麦、小麦粉、ビール、コーングリッツで高頻度に検出されました。日本におけるDONの暫定基準値(1.1mg/kg)を上回る検体は認められませんでした。DONの最大値はハト麦加工品の1,093μg/kgでした。ZENはハト麦加工品、コーングリッツ、小豆、雑穀米とゴマで高頻度に検出されました。ZENの最大値はゴマの153μg/kgでした。
(本研究は、平成22~24年度厚生労働科学研究費補助金 食品の安心確保推進研究事業「食品汚染カビ毒の実態調査ならびに生体毒性影響に関する研究」により行われたものの一部です。)
参考「Journal of Food Protection 2014,77(11):1940-1946」