業務内容

衛生微生物部第一室では、医薬品等の微生物学的な安全性確保に関する業務を行っています。日本薬局方の微生物関連試験法に関する業務を担当します。  

無菌試験

(更新日時:令和3年7月1日)

【日本薬局方 <4.06> 無菌試験法】

 無菌試験は、無菌製剤の出荷判定試験として、対象微生物が検出されないことを確認する試験です。無菌製剤の例として、注射剤、点眼剤、眼軟膏剤、注射用水、腹膜透析用剤等が挙げられます。衛生微生物部第一室では、無菌試験用の設備を有しており、医薬品の安全性に関する業務を行っています。

(参考)
1) 厚生労働省:第十八改正日本薬局方.,2018; pp.131-133.
2) 菊池裕,林克彦,工藤由起子:第十七改正日本薬局方無菌試験法の実施環境に則した国立医薬品食品衛生研究所における運用体制の整備., 国立医薬品食品衛生研究所報告2019; 137: pp. 52−59.(http://www.nihs.go.jp/library/eikenhoukoku/2019/052-059.pdf

エンドトキシン試験

(更新日時:令和3年7月1日)

【日本薬局方 <4.01> エンドトキシン試験法】

 エンドトキシンとは、グラム陰性細菌の外膜成分のリポ多糖(Lipopolysaccharide、LPS)で構成され、内毒素とも呼ばれます。細菌から放出されますが、熱に耐性があり、分解や除去が難しい物質です。
 エンドトキシンは、触れても、口に入っても、毒性を示しませんが、直接的に血中に入ると発熱作用を示し、最悪の場合には死に至ります。医療機器、医薬品等(注射剤、透析用剤等)では、エンドトキシン汚染量を管理して、無害な範囲に制御することが求められます。
 衛生微生物部第一室では、エンドトキシン試験に関連する試験研究業務を行っています。エンドトキシン試験は、カブトガニ(Limulus polyphemusTachypleus tridentatusCarcinoscorpius rotundicauda等)の血液が、エンドトキシンに反応する現象を利用して、検出する試験です。エンドトキシン試験に必要な試薬は、カブトガニから害がない程度に血液を採取して(カブトガニの献血)、製造されています。
 注射剤が発熱性を有する現象は、20世紀初頭に、医薬品の静脈注射が普及してから確認され、注射剤の安全性確認のために、ウサギに投与して確認する発熱性物質試験法が開発されました。ウサギを用いた試験法は、エンドトキシン以外の発熱性物質も検出される優位点がありますが、エンドトキシンの毒性は、その他の発熱性物質よりも強い(数千から数万倍の強さ)ことから、また、動物福祉の観点から、代替法としてエンドトキシン試験が普及しています。
 2010年頃からは、遺伝子組換え技術によってエンドトキシンを検出する試薬を製造する試みがなされており、カブトガニの献血を使用しない試験系が開発されています。

マイコプラズマ否定試験

(更新日時:令和3年7月1日)

【日本薬局方 参考情報 バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品の製造に用いる細胞基材に対するマイコプラズマ否定試験】

 抗体医薬品、細胞医薬品等では、医薬品等の製造に細胞培養技術が応用されています。細胞の培養では、無菌性が求められますが、細菌のうち、マイコプラズマでは、その検出が難しいことが知られています。
 細胞培養には、様々な菌種のマイコプラズマが混入することが知られています。マイコプラズマは、ヒト、動物、土壌等に広く分布し、菌種によっては、呼吸器感染症(マイコプラズマ肺炎)や性感染症の原因菌です。マイコプラズマの増殖速度は、一般的に遅く、マイコプラズマが検出されないことを培養で確認すると、少なくとも約1ヶ月間(28日間)が必要です。抗体医薬品、細胞医薬品等では、消費期限が短い物があることから、PCR法などの核酸増幅法(Nucleic acid Amplification Test、NAT)を利用した試験系が開発されています。