■ グリホサート・グルホシネート・AMPA 検査マニュアル
誘導体化-固相抽出-LC/MS/MSによる一斉分析法(別添方法22)
1.対象物質
ここで対象とする農薬は,グリホサート,グルホシネートおよびグリホサートの代謝物のアミノメチルリン酸(AMPA)である.
本法では,対象農薬をクロロギ酸9-フルオレニルメチル(FMOC)と反応させた後に固相抽出を行い,液体クロマトグラフ-質量分析計で測定する.
2.試薬
- (1) 精製水
- 測定対象成分を含まないもの.
- (2) アセトニトリル
- 測定対象成分を含まないもの.
- (3) アスコルビン酸ナトリウム
- 測定対象成分を含まないもの.
- (4) 5%ホウ酸溶液
- 四ホウ酸ナトリウム5gを精製水に溶かして100mLとしたもの.
- (5) 2%リン酸(v/v)
- 測定対象成分を含まないもの.
- (6) クロロギ酸9-フルオレニルメチル(FMOC)溶液
- FMOC0.1gをアセトニトリルに溶かして100mLとしたもの.
- (7) 5mM酢酸アンモニウム溶液
- 酢酸アンモニウム3.9gを精製水に溶かして100mLとした後,精製水で100倍に希釈したもの.
- (8) 固相カラム用溶出液
- アセトニトリル40mLと5mM酢酸アンモニウム溶液60mLを混合したもの.
- (9) 農薬標準原液
- グルホシネート,グリホサート及びAMPAは,それぞれ100mgを別々のポリプロピレン製メスフラスコに採り,それぞれを精製水に溶かして100mLとしたもの.これらの溶液1mLは,グルホシネート,グリホサート及びAMPAを,それぞれ1mg含む.これらの溶液は,冷蔵保存する.
- (10) 農薬混合標準液
- それぞれの農薬標準原液の1mLずつをポリプロピレン製メスフラスコに採り,精製水で100倍に薄めたもの.この溶液1mLは,グルホシネート,グリホサート及びAMPAを,それぞれ0.01mg含む.この溶液は,使用の都度調製する.
3.器具および装置
- (1) 採水瓶
- ポリプロピレン製(100~500mL)のもの.
- (2) メスフラスコ
- ポリプロピレン製(100~500mL)のもの.
- (3) ピペット
- ポリプロピレン製チップを装着可能で,可変式のもの.
- (4) 試験管
- ポリプロピレン製(10~20mL)のもの.
- (5) オートサンプラー用サンプル瓶
- ガラス製(1.5~2.0mL)のもの.
- (6) 恒温槽
- 50℃に保持できるもの.
- (7) 固相カラム
- オクタデシル基を化学結合したシリカゲル又はこれと同等以上の性能を有するもので,充填量が200mgのもの.
- (8) 液体クロマトグラフ-質量分析計
- ア.分離カラム
- 内径2.0~3.0mm,長さ15~20cmのステンレス管で,オクタデシルシリル基を化学結合した粒径が3~5μmのシリカゲルを充填したもの又はこれと同等以上の分離性能を有するもの.
- イ.移動相
- 最適条件に調製したもの.例えば,A液は5mM酢酸アンモニウム,B液はアセトニトリルのもの.
- ウ.移動相組成及び流量
- 対象物質の最適分離条件に設定できるもの.例えば,A液及びB液の容量の比が80:20のものを,B液の容量比を毎分5~10%で上昇させて100%にできるもの.
- エ.検出器
- 選択反応測定(SRM)又はこれと同等以上の性能を有するもの.
- オ.モニターイオンを得るための電圧
- ESI法(負イオン測定モード)により得られたプリカーサイオンを開裂させてプロダクトイオンを得る方法で,最適条件に設定できる電圧.
上記の分析条件例を別添1に示す.
4. 試料の採取および保存
試料は,精製水で洗浄したポリプロピレン瓶に採取し,満水にして直ちに密栓し,速やかに試験する.速やかに試験できない場合は,冷蔵保存し,72時間以内に試験する.
なお,残留塩素が含まれている場合には,試料1Lにつき,アスコルビン酸ナトリウム0.01~0.02gになるように加える.
5. 試験操作
- (1) 前処理
- 検水20mL(検水に含まれるそれぞれの農薬の濃度が0.01mg/Lを超える場合には,0.0001~0.01mg/L以下となるように精製水を加えて20mLに調製したもの)をポリプロピレン製の試験管に採り,5%ホウ酸溶液1.0mL,FMOC溶液2.0mLを加え,よく攪拌し,50℃で20分間静置した後,室温に冷却し,2%リン酸を1.2mL加え,これを濃縮用試料とする.
- 【固相カラムによる濃縮操作】
- 固相カラムにアセトニトリル3mL及び精製水3mLを順次注入する.次に,濃縮用試料を毎分2~4mLの流量で固相カラムに流し,更に精製水5mM酢酸アンモニウム1mLを流した後,固相カラム用溶出液1.5mLを緩やかに流し,溶出液の全量を5mM酢酸アンモニウムで2mLとし,これを試験溶液とする.
ただし,濃縮用試料の一定量を液体クロマトグラフ-質量分析計に注入して求めたそれぞれの農薬の定量下限値が,目標値の1/100以下の場合には,この濃縮操作を省略することができ,濃縮用試料を試験溶液とする. - (2) 分析
- 上記(1)で得られた試験溶液の一定量を液体クロマトグラフ-質量分析計に注入し,表1に示すモニターイオンのピーク面積を求め,下記7で求めた空試験のピーク面積を差し引いた後,下記8により作成した検量線から検水中のそれぞれの農薬の濃度を算出する.ただし,AMPAの濃度をグリホサートに換算し,グリホサートの濃度と合計してグリホサートとしての濃度を算定する.
農薬名 | プリカーサイオン(m/z) | プロダクトイオン※ (m/z) |
---|---|---|
グルホシネート | 402 | 108,206 |
グリホサート | 390 | 168,150 |
AMPA | 332 | 110,136 |
※プロダクトイオンをモニターイオンとする.
6. 検量線の作成
農薬混合標準液を段階的にポリプロピレン製メスフラスコに4個以上採り,それぞれに精製水を加えて100mLとする.この場合,調製した溶液のそれぞれの農薬の濃度は,上記5(1)に示す検水の濃度範囲を超えてはならない.以下,上記5(1)及び(2)と同様に操作して,それぞれの対象物質のモニターイオンのピーク面積を求め,それぞれの対象物質の濃度との関係を求める.
ただし,上記5(1)の濃縮用試料の一定量を液体クロマトグラフ-質量分析計に注入して求めたそれぞれの農薬の定量下限値が,目標値の1/100以下の場合には,上記5(1)の固相カラムによる濃縮操作を省略して検量線を作成する.
7. 空試験
精製水を一定量採り,以下上記5(1)及び(2)と同様に操作してそれぞれの対象物質の濃度を求め,上記5(1)に示す検水の濃度範囲の下限値を下回ることを確認する.
求められた濃度が当該濃度範囲の下限値以上の場合は,是正処置を講じた上で上記5(1)及び(2)と同様の操作を再び行い,求められた濃度が当該濃度範囲の下限値を下回るまで操作を繰り返す.
項目 | 設定値 | |
---|---|---|
LC | カラム | Capcell Pak C18(2.0 mm I.D. ×150 mm, 粒径5 μm,資生堂) |
移動相A | 5 mM酢酸アンモニウム水溶液 | |
移動相B | アセトニトリル | |
グラジエント条件 | 移動相B20%(0-5min) - リニアグラジエント - 移動相B90%(15-20min) - 移動相B20%(20.1-29min) | |
流速 | 0.20 mL/min | |
カラム温度 | 40°C | |
サンプルクーラー温度 | 5°C | |
注入量 | 20 μL | |
MS | イオン化法 | ESI法(ネガティブイオンモード) |
プローブ電圧 | -2.5 kV (ESIネガティブ) | |
ネブライザーガス流量 | 540 L/hr | |
コーンガス流量 | 83 L/hr | |
脱溶媒部度 | 400°C | |
イオン源温度 | 120°C | |
データ取り込み時間 | 0.1 sec |