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安全性生物試験研究センターについて

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組織図

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沿革

国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター(安全センター)は、昭和52(1977)年12月28日付けの省令改正(昭和53年1月1日施行 厚生大臣 小沢辰男)により、当時の国立衛生試験所(所長 下村 孟)に設置されました。1950年代から私たちの生活環境に次々と導入されてきた様々な化学物質(サリドマイド、砒素、メチル水銀、PCB、等)の毒性による健康への影響が社会的に注目され始め、その行政的要求に対処するための機構として設立されたものです。毒性部、薬理部、病理部が振替新設されたほか、同年、4月変異原性部を新設し、5月にはバイオアッセイ施設を兼ね備えた、本邦唯一の国立のリスクアセスメント研究施設として発足しました(初代安全センター長 池田良雄)。その後の組織改編を経て、平成27(2015)年、安全センターは5研究部(毒性部、薬理部、病理部、変異遺伝部、安全性予測評価部)と実験動物施設による構成となりました。その使命は、生物資源(動物、細胞など)を用いた医薬品、化粧品、食品、食品添加物、農薬、工業薬品、家庭用品などの生活関連化学物質の安全性に関する研究及び試験、並びに、科学的根拠に基づく毒性予測手法を含む総合的な安全性評価を行う事にあります。

 医薬品の安全性試験としては、昭和25(1950)年11月から昭和63(1988)年まで、ブドウ糖注射液等の発熱性に関する国家検定を薬理部(安全センター発足前は、その前身の薬理試験部)で担当してきたほか、本邦での医薬品の安全性試験の実施に関する基準(GLP)の導入(昭和57年3月31日通知)、並びにこれに対応する医薬品の安全確保のための試験法のガイドライン制定にも携わりました。安全センター内には平成26年に(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)に移管されるまでGLP評価委員会が設置されており、現在もGLP査察業務への協力を続けています。更に、新薬の承認審査の毒性評価にも携わり、平成11年10月の新薬承認審査調査会廃止後も、医薬品医療機器審査センター(審査センター、PMDAの前身組織)及びPMDAにおける内部審査に専門委員として協力を続けています。

 化審法に基づく新規化学物質の審査は,現在安全センターの室長および主任研究官で構成される「化学物質安全性評価委員会」で行われ,その後外部の専門家も加えた「化学物質専門家委員会」で審議されてきました。平成15(2003)年以降は、厚労、環境、経産省の三省合同審議会で化審法に基づく審議を進めています。平成21(2009)年には、「2020年までにすべての化学物質によるヒト及び環境への影響を最小化する」という国際合意の達成に向けて改正化審法が交付されています。これを実現するべく、安全性予測評価部第1室を中心として、安全センターとしても全面的な協力体制で臨んでいます。尚、平成2(1990)年から開始されたOECD高生産量化学物質の安全性点検作業に関しては,厚生省生活衛生局が外部委託機関に依頼した試験データの評価を,センター各部の専門家等からなる毒性試験実施検討会および化学物質国際安全対策委員会で評価し,その結果をOECDに報告するとともに今後の試験物質についての情報整理,試験計画作成をもセンター各部の協力の下に行ってきました。なおこれらの結果は,当所の「既存化学物質毒性データベース (JECDB) 」http://dra4.nihs.go.jp/mhlw_data/jsp/SearchPage.jsp)及び「既存化学物質毒性試験報告書」(1994~2006年[vol.1~vol.13]:化学物質点検推進連絡協議会発行)で公表しています。
 また、ダイオキシンをはじめとする内分泌撹乱化学物質の健康影響が社会問題化した際には、基盤研究の遂行と併行して、関連する調査、試験研究に、それぞれの専門的立場からこれに関わり、平成10(1999)年には、厚生省・環境庁による新しいダイオキシン耐容一日摂取量(TDI)の設定に際し、多くの毒性データの評価にも貢献しました。
 最近では、ナノテクノロジーの進展に伴い、生産される多様なナノマテリアルの安全性に関わる基盤研究を進めるなかで、その成果の一部が、アスベストと同様の生体障害性が懸念されている多層カーボンナノチューブ MWNT-7のIARCによるgroup2Bの認定根拠となりました(平成27(2015)年)。

 農薬・残留農薬の安全性評価業務(いわゆる農薬安評)は、安全センターならびに食品部の各委員と,大学等の外部委員の協力のもとに実施してきましたが、平成15(2003)年に内閣府に設置された食品安全委員会にその役割は移管されました。安全センター職員は、食品安全委員会の農薬専門調査会評価部会の専門員として引き続き協力を続けています。尚、平成18(2006)年に施行された残留農薬規制のためのポジティブリスト制について、施行前におこなわれた3年ほどの検討にも、安全センター職員はその任を果たしております。

食品添加物の安全性、特に長期暴露による健康影響への対応は、安全センター設立の直接的な契機にもなった重要課題のひとつです。安全センターでは、ブチルヒドロキシアニソール、臭素酸カリウム、アカネ色素などの発がん性にかかる試験研究を行い、その後の行政施策に対する科学的根拠を提供してきました。一方、平成7(1995)年の食品衛生法(昭和22年法律第233号)の改正において、既存添加物名簿(平成8(1996)年厚生省告示第120号)に収載された天然添加物489品目は、引き続き使用等が認められることとされ、それに伴い、安全性評価の見直しを行うこととされました。これらの既存添加物について、平成8年度厚生科学研究報告書「既存天然添加物の安全性評価に関する調査研究」(主任研究者 林裕造 第4代安全センター長)において、国際的な評価結果、欧米での許認可状況、安全性試験成績結果等から、既存添加物の基本的な安全性について検討した結果、489品目のうち、今後、新たな毒性試験の実施も含め、安全性の確認を迅速に行う必要がある139品目と、「基原、製法、本質からみて、現段階において安全性の検討を早急に行う必要はないもの」150品目、既に国際的な評価がなされており、基本的な安全性は確認されているもの159品目、入手した試験成績の評価により、安全性の検討を早急に行う必要はないもの41品目とに分類されました。安全性の確認を迅速且つ効率的に行う事が求められるとされた139品目、及び、指定添加物のうち指定された時期の古いもの等については、再度安全性の確認が必要であることから、それぞれ、反復投与毒性試験(90日間反復投与毒性試験、等)や遺伝毒性試験(Ames試験、染色体異常試験、等)を順次実施してきました。得られた試験結果は、安全センター各部長、食品添加物部長及び所内外の評価委員からなる検討会で評価しています。最近、ようやくこれらの評価に目処がたったことから、平成29(2017)年度からは、平成8(1996)年度の報告において「基原、製法、本質からみて、現段階において安全性の検討を早急に行う必要はないもの」と分類された150品目のうち、その後、既存添加物名簿から消除された41品目を除く109品目について、安全性の確認を効率的に実施するため、安全性評価の実施の優先順位付けを行い、再評価を開始しています。

 このようにヒトの健康や環境に害を及ぼす危険性(毒性)を把握するために実施してきた動物実験に関する3Rs(Reduction:削減、Refinement:苦痛の軽減、Replacement:置き換え)の促進を巡る国際的な動向にも対応するべく、平成17(2005)年には日本動物実験代替法評価センター(JaCVAM)http://www.jacvam.jp/)が設置されています。安全センター長がその長を務め、事務局が薬理部に新設された新規試験評価室(平成27(2015)年度以降は、組織改編により、安全性予測評価部第2室)におかれました。平成19(2007)年には、第6回国際動物実験代替法会議 (WC6)を主催(会長 大野𣳾雄 所長/元薬理部長)しています。また、平成21(2009)年には日米EU加の4カ国による代替試験法国際協力(ICATM)に関わる協力覚書への署名を行いました。これらの取り組みに対して平成23(2011)年には厚生労働省審査管理課事務連絡として「医薬部外品の承認申請資料作成等における動物実験代替法の利用とJaCVAMの活用促進について」が発出されています。こうした国際協調体制のもと厚生労働省、他省庁、化粧品や化学物質等の業界、大学、学会等と連携して、10を超える日本発のOECD試験法ガイドラインの成立に寄与するとともに、多くの代替法の評価結果を行政に提案するなど、動物実験代替法の推進に向けた活動を実施しています。

 このほか、国際的に多くの機関・機構(WHO(世界保健機関)、FAO(国際連合食糧農業機関)、OECD(経済協力開発機構)、IARC(国際がん研究機関)、IPCS(国際化学物質安全性計画)、ICH(日米 EU 医薬品規制調和国際会議(International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use、ICH;平成27(2015)年10月以後は、医薬品規制調和国際会議 [International Council for Harmonization of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use、ICH新法人])など)の安全性評価に関わるプロジェクトにも参加してきました。昭和55(1980)年には、WHOが計画した国際化学物質安全性計画(IPCS)に、国立医薬品食品衛生研究所が本邦のリード機関として参画することなり、以後、化学物質情報部(現、安全性予測評価部第3室)が中心となってIPCSの安全性カード(ICSC)http://www.nihs.go.jp/ICSC/)の提供を行っています。平成2(1990)年4月に設立されたICHにおいては、日本の行政機関の代表として各種の専門家会議に出席するなど、欧米の専門家と共に医薬品毒性試験ガイドラインの作成に携わっています。
 さらに、インドネシア共和国国立医薬品食品品質管理試験所技術協力事業に参画し、技術協力や長期出張を含む人的交流(昭和59(1974)年~平成元(1989)年)、日米科学技術協力協定に基づく化学物質の安全性評価に関する意見交換・情報収集のための海外専門家との交流事業(非エネルギー部門、テーマ 毒性学: 昭和56(1981)~平成10(1998)年)及び、化学物質リスクアセスメント確立に関する米国環境科学研究所(NIEHS)と合同の日米会議の開催(昭和56(1981)~平成5(1993)年に計4回)、国際協力事業団(JICA)による中国天津薬品検験所技術プログラム(平成6(1994)年~平成10(1998)年)及び中国医薬品安全性評価センタープロジェクト(平成11(1999)年~平成18(2006)年)への参画、韓国医薬食品局(KFDA)国立毒性学研究院とのレギュラトリーサイエンス共同研究ワークショップ開催(平成12(2000)~平成18(2006)年に計3回)、なども行ってきました。

 安全センター各部の研究活動は、特に毒性学分野において常にその中心にあって、日本毒性学会(前日本トキシコロジー学会:改称時の理事長は黒川雄二第5代安全センター長/元日本毒科学会:初代役員に大森義仁第2代安全センター長)の創設やその発展にも指導的立場から深く関わってきました。また、それぞれの時代における化学物質の健康障害に関わる課題には、行政対応に先駆けて、科学的根拠となる基盤的研究を進めて参りました。こうした活動は世界的にも評価されており、平成9(1997)年には、米国がん学会機関誌であるCancer Researchの表紙およびそのCover Legend(Vol.57 No.7)(cancerres.aacrjournals.org/content/canres/57/7/local/front-matter.pdf)に化学発がん研究機関として紹介されています。直近では、全ゲノム解読に伴う網羅的遺伝子発現解析技術の毒性学への導入に積極的に取り組み、平成13(2001)年から5年にわたりToxicogenomics International Forumを主催(井上達第6代安全センター長)するなど、現在のトキシコゲノミクスプロジェクトの基盤を築きました。更に、毒性部を中心に、化学物質に対する大規模なトキシコゲノミクスプロジェクトを推進し、マウスに対して140化学物質、のべ6.5億遺伝子、ラットに対して200化合物、のべ5.2億遺伝子のデータを保持するに至っています。今後、これらのデータベースと安全性評価の専門的知見を取り込み、人工知能(AI)を活用した「ヒトにおける安全性予測評価基盤技術」を開発し、その検証と実利用研究を遂行するべく、安全性予測評価部を中心に国衛研全体の協力の下「化学物質安全性ビッグデータベースの構築と人工知能を用いた医薬品・食品・生活化学物質のヒト安全性予測基盤技術の開発研究」に取り組んでいます。

 平成30(2018)年には、研究所の移転に伴い、これまでの用賀庁舎から、川崎殿町庁舎への移転を完了しました。奇しくも安全センター創立40年の節目とも重なり、これまでの国立研究機関ならではの継続性の必要な地道な調査研究を維持しつつ、科学技術の進展に伴う新たな研究活動にも取り組むことで、研究所の掲げるレギュラトリーサイエンスの展開をめざして参ります。

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歴代の安全性生物試験研究センター長

初代 池田 良夫(故人) 昭和53(1978)年1月 ~同年7月
二代 大森 義仁(故人) 昭和53(1978)年7月 ~昭和61(1986)年3月
三代 戸部 満寿夫(故人) 昭和61(1986)年4月 ~平成02(1990)年2月
四代  林 裕造(故人) 平成02(1990)年3月 ~平成07(1995)年3月
五代 黒川 雄二 平成07(1995)年4月 ~平成13(2001)年3月
六代 井上 達 (故人) 平成13(2001)年7月 ~平成22(2010)年3月
七代 西川 秋佳 平成22(2010)年4月 ~平成30(2018)年3月
八代 平林 容子 平成30(2018)年4月 ~

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