試験法検討案作成方針


わが国における食品を対象とした細菌試験法では、食品の規格・基準の定められているものについては、基本的に告示法で、またそれぞれ食品衛生上の問題が生じた事例に対応して、病原細菌と原因となりやすい食品の組み合わせによる個々の試験法が通知法により示されている。この告示および通知によって示された方法のみがわが国の公定法と理解されているが、これらは長期にわたり改正が行われていないものがあり、今後国際的に広く認められている試験法との整合性を考慮する必要がある。
一方わが国では従来から厚生労働省監修の「食品衛生検査指針・微生物編」があり、ここに記載された方法が標準的なものとされて、広く利用されている現状がある。2004年改訂の「食品衛生検査指針・微生物編」には、上記の告示および通知法とわが国で現在広く行われている標準的な細菌試験法が網羅的に収録されているが、個々の細菌については食品からの検出法という指針を示しているにすぎない。
食品からの細菌試験は日常の食品の衛生検査と食中毒の原因究明などであるが、その目的によって試験法が異なって当然である。しかし、これらの試験は全ての試験法が、微生物学的な本質を踏まえつつ、科学的に検証できる評価を踏まえたもので構成されていなければならない。告示および通知法の見直しや食中毒菌試験の統一化も重要であるが、それを含めた食品にかかわる細菌の科学的根拠に基づき、バリデートされた標準的試験法を改めて策定することが急務である。
そこで、標準試験法検討委員会では、統一した方向性を持った “食品からの細菌試験標準試験法“を作成することの重要性を確認し、標準法を以下の4つの手順に従って作成することとした。この標準法は、培養法を有する微生物については、原則として培養法を基準として採用し、国際的に広く認められた試験法との互換性を考慮して作成する。プロトコールの作成に当たっては、公開により広く意見を求め、実行性のあるより妥当なプロトコール作りを行う。
これらの基本方針が担保されるように、以下の4つのステージを満たし、作成したものを標準法として公開することにした。

◎原案(ステージ1)
標準試験法検討委員会(親委員会)は、作業部会を立ち上げる。
作業部会は文献調査や情報収集により、関連する国際的な標準法の比較表を作成し、それを基に“原案のたたき台”を親委員会に提出する。
親委員会では、このたたき台を議論し、当該検査法の方向性を確認した上で、“原案”としてまとめる。
その作成方針を含めて、インターネット上に公開、期間を設定し意見を求める。
ここで、文書にて第三者組織(日本食品微生物学会や、衛生微生物技術協議会等)の意見を求める。	
◎作業部会案(ステージ2)
各作業部会は、国立研究機関、大学、地方衛生研究所、食肉検査所、登録検査機関、検疫所等の協力を受けながら、原案の検討箇所を設定し、実験データから細かいプロトコールの検討を行い、重要な指摘がある場合はそれを考慮した “作業部会案”を作成する。
作業部会案は、親委員会に提出するとともに、一定期間インターネット上で公開し広く意見を求める。さらに、文書にて第三者組織の意見を求める。
◎コラボ実施案(ステージ3)
インターネットや第三者組織の意見などを参考とし、親委員会は作業部会案について議論し“コラボ実施案”とする。
コラボスタディーの規模や協力施設の数等を示し、インターネット上で公開し、意見を求める。
コラボスタディー参加者を募る。
◎標準試験法(最終ステージ)
作業部会は、複数の検査機関でコラボスタディーによりその実行性を評価する。
親委員会は、コラボスタディーの結果を受け、作業の進行が方針に従って行われているかの確認を行った後、“NIHSJ(標準試験)法”として公開する。
尚、親委員会は、方針通りに作業部会が機能し、標準法作成が順調に行われたかを確認し、不備な点があれば、“食品からの微生物標準試験法作成方針”の見直しを行う。
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