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[研究結果]
1.Diethylstilbestrol (DES)
オランダのコホート研究では、母親が子宮内DES 暴露を報告した205 例のうち4 例が、DES非暴露群8729 例のうち8
例が尿道下裂であり、有病率比は21.3(95%CI=6.5-70.1)と、子宮内でDES
に暴露された男児における尿道下裂のリスク増加が示唆された(Klip 2002)。
2.エストロゲン製剤
Aarskog(1970)によって妊娠中のプロゲステロン製剤使用が尿道下裂発生のリスクを増すこと指摘されてきた。複数の報告で妊娠中のプロゲステロン製剤使用と尿道下裂発生のリスクが検討されてきたが、1980
年代までは有意な関連を示す報告はなかった。
Czeizel
ら(1988)によると、流産防止薬として使用されていたプロゲステロン製剤のアリルエストレノールによって尿道下裂のリスクが増した。ハンガリーの先天奇形登録を用いた症例対照研究(尿道下裂207、対照162)において、尿道下裂児妊娠中のアリルエストレノール内服率は対照に較べ有意に高かった(p<0.05)。
オーストラリアの妊娠・出産を追跡したコホート研究(対象56,037、尿道下裂77)では、経口避妊薬と有意な関連が認められたのは凹足奇形のみであり、尿道下裂は関連の認められた奇形として挙げられてはいない
(Correy, 1991)。
ICBDMS メンバーの7つのシステムで行なわれた症例対照研究によると、妊娠8-16
週のホルモン製剤の使用が尿道下裂のリスクを増すと報告されている(OR;2.3(95%CI;1.2-4.4))(K_ll_n,1992)。
3.1,1-dichloro-2,2-bis(p-chlorophenyl)ethylene (p,p’-DDE)
Longnecker(2002)らは、1959-66 年におけるCollaborative Perinatal Project
からコホート内症例対照研究において、停留精巣219 例、尿道下裂199 例、多乳頭症167 例を症例群として、対照群552
例と比較した。ガスクロマトグラフィーの回収率で補正した母親の血清中DDE
濃度を4分位し、濃度が最も低い群(<21.4μg/l)を基準(reference)とした場合、最も高い群(≧85.6μg/l)における、停留精巣、尿道下裂、多乳頭症の、人種・トリグリセリド値・コレステロール値で補正したオッズ比は、各1.3(95%CI=0.7-2.4)、1.2(95%CI=0.6-2.4)、1.9(95%CI=0.9-4.0)となり、有意な関連が見られなかった。 |