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スペイン、Flix の電気化学工場付近のHCB に汚染された農村地域から1997〜1999 年に出生した新生児とその母親98
組を登録し、新生児70 例におけるさい帯血中の有機塩素系化合物(HCB、p,p'-DDE、β-HCH、PCB)濃度を電子捕獲検出器を備えたガスクロマトグラフィーにより測定した。誕生から3
日後にすべての新生児血漿中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度を測定した。新生児のTSH
濃度は全例正常値内(<25mU/L)であり、TSH<10mU/L が60 例、TSH≧10mU/L が10
例であった。p,p'-DDE、β-HCH、PCB-138、PCB-118 がTSH
高値と関連していたが、妊娠齢による補正後の多変量回帰分析では、β-HCH のみが有意であり、TSH≧
10mU/L に対するβ-HCH のオッズ比は1.81(95%信頼区間:1.06〜3.11、p=0.03)であった。一方、HCB
値はTSH 値と関連していなかった。
4)介入研究
Pelletier ら(2002)は有機塩素系化合物は減量中に体脂肪から血流に放出され、安静時代謝率(RMR)の制御に関与する甲状腺の状態を障害する可能性があることに着目し、体重減少に反応した血漿中有機塩素系化合物濃度の上昇が血清中T3
濃度とRMR の低下に関連するかどうか検討した。
16 例の肥満男性に対して、三大栄養素以外の特殊エネルギー制限食で15
週間フォローした。減量前後に血漿中有機塩素系化合物濃度、血清中T3 濃度、RMR を測定した。減量プログラム後に、血清中T3
濃度とRMR の有意な低下が認められた。17 種の有機塩素系化合物(β-HCH、p,p'-DDT、p,p'-DDE、HCB、ミレックス、オキシクロルデン、trans-ノナクロル、アロクロル-1260、PCB-28、PCB-99、PCB-118、PCB-138、PCB-153、PCB-156、PCB-170、PCB-180、PCB-187)が血漿中から検出されたが、減量中に13
種の有機塩素系化合物濃度が有意に上昇した。有機塩素系化合物濃度の変化は減量に対して補正後の血清中T3 濃度(p,p'-DDT、HCB、アロクロル-1260、PCB-28、PCB-99、PCB-118、PCB-170
について有意)とRMR(HCB とPCB-156 について有意)の変化と負の関連性を示した。 |