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2)症例対照研究
Sukdolova ら(2000)は、PCB に暴露された米国のモホークインデアンの30
歳以上の女性を対象に、甲状腺機能低下症の症例対照研究を行っている。ほとんどのPCB
同族体の血清レベルが症例の方で低かったが、PCB156 とPCB118
については症例で高かった。ただし、統計的に有意かどうかは不明である。
Langer ら(2003)はスロバキアにおいて、化学工場勤務者と化学工場付近の環境汚染地域の住民に対してPCB
と他の有機塩素系化合物濃度を測定し、有機塩素系化合物が甲状腺機能に及ぼす影響について検討した。
PCB 製造化学工場の長期間勤務者と工場付近住民101 例(男59 例、女42 例:23〜73
歳)の汚染地域群、Stropkov のPCB 低暴露地域住民360 例(男180 例、女180 例:21〜74
歳)の対照地域群における甲状腺容積、(超音波による)甲状腺の低エコー域及び結節、抗甲状腺性ペルオキシダーゼ(抗TPO)抗体及びRIAで測定した血清中甲状腺刺激ホルモン(TSH)異常値の存在を調べた。PCB、HCB、γ-HCH、p,p'-DDT、p,p'-DDE
の血清中濃度を高分解ガスクロマトグラフィーにより測定した。
対照群(2045±147ng/g 脂質)と比較して、暴露群では血清中PCB 値(7300±871ng/g
脂質)が非常に高値であった。HCH
を除いて、すべての有機塩素系化合物とその総計の値には正の相関性(P<0.001)が認められた。汚染地域群では、PCB
値最高濃度群(PCB10000〜58667ng/g脂質)に分類された23 例(男17 例、女6
例)で甲状腺容積が最も大きく、他の438 例では甲状腺容積は14.2±0.29mL
であった。これらのデータから、甲状腺容積に影響を及ぼす可能性がある血清中PCB 濃度の閾値は約10000ng/g
脂質であることが示唆された。二元ANOVA
分析では、汚染地域群では全例甲状腺容積が対照地域群よりも有意に大きいことが示された(P<0.001)。
汚染地域群の男性では、甲状腺の低エコー域、甲状腺結節、抗TPO 抗体陽性、TSH
値異常の頻度が対照地域群の男性よりも高かったが、女性には相違はみられなかった。 |