4)断面研究
2000 年12 月31 日までに断面研究と考えられる文献は4 件であった。その後2001 年1 月1 日から2004 年10
月31 日の間に新たに2 件の報告があった。そのうち、Mussalo-Rauhamaa ら(1990)はHCH
について有意なリスクの上昇を観察している。また、Falck ら (1992)は脂肪組織中のDDE
が症例で高いこと(p=0.07)、Guttes ら(1998)はDDE とPCB118
が乳房組織中で有意に高いことを報告している。さらにLucena ら(2001)は、乳房組織中のPCB28
が症例で有意に高いこと、Ahmed ら(2002)は、健常者の血清DDE
レベルが乳がん又は良性乳腺疾患患者に比べ有意に低いこと(p=0.03 )を報告している。
5)エコロジカル研究
エコロジカル研究は2000 年12 月31 日までに3 件の報告があった。その後2001 年1 月1 日から2004 年10
月31 日の間に新たに3 件の報告があった。Grimalt ら(1994)は有機塩素系化合物工場の近隣でHCB
暴露を受けている住民のSIR を算出したが、有意なリスクの上昇はみられなかった(SIR:
1.3)。Kettles(1997)らのエコロジカル研究では、米国ケンタッキー州の120
の郡について、農薬使用量などから計算したtriazine 暴露の程度別にOR
を算出し、暴露が大きい地域で有意なリスクの上昇を観察している。しかしHopenhayn-Rich ら(2002)
は、米国ケンタッキー州の120 の郡について、水道水測定値、トウモロコシ作付面積、Atrazine 販売量から計算したAtrazine
暴露量と乳がん罹患率の間には有意な関連は観察されなかったと報告している。Schreinemacher
ら(2000)のエコロジカル研究では、米国の3 つの州の152 の郡について、クロロフェノキシ除草剤で処理する麦の作付面積別にSRR
を算出したが、リスクの上昇は観察しなかった。Janssens
ら(2001)は、ベルギーの地方自治体別の乳がん死亡率とジャガイモ作付面積、枯葉剤使用量の間に関連を観察している。Koifman
ら(2002)は、ブラジルの11 州における殺虫剤売上高と乳がん死亡率の相関を検討し、40-69
歳代の乳がん死亡率と有意な相関を報告している。2.Diethylstilbestrol
Diethylstilbestrol (DES) と乳がんとの関連については、2000 年12 月31
日までに米国でのコホート研究が5 件報告されていたが、その後2001 年1 月1 日から2004 年10 月31
日の間に新たに1 件の報告があった。Bibbo ら(1978)はRCT のデザインで1951-1952 年にDES
投与を受けた女性2162 名を1976-1977 年まで追跡したが罹患率の有意な増加は観察していない。Brian
ら(1980)のMayo Clinic でDES 投与を受けた女性408
名を後ろ向きに追跡した研究においても罹患数の増加はみられていない。一方、Colton ら(1993)は1940-1960
年にDES 投与を受けた母親3029 名と同数のそうでない母親を1989 年に調査し有意な罹患の増加(RR: 1.29)
を報告している。また、Calle ら(1996) の約50 万人の妊婦を1982-1991
年まで前向きに追跡した調査でも有意な死亡の増加(RR: 1.34)がみられている。Titus-Ernstoff
ら(2001)も1950 年代と1980 年代の2 つのコホートの7560 名を1994
年まで前向きに追跡して有意な死亡の増加(RR: 1.27)を報告している。しかしPalmer ら(2002)は、3
つのコホートからなる6916 人を平均19 年追跡した研究では、有意な罹患率の増加(RR: 1.4 )を観察していない。 |