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〔研究結果〕
1.PCB・ダイオキシン
1)コホート研究
Weisglas-Kuperus
ら(2000)は、オランダのPCB/ダイオキシン研究において、就学前までのフォローアップを行い、ロッテルダム地区で1990 年6
月〜19920 年2 月に登録された207 組の健常白人系親子からなるコホート群の免疫系への影響を評価した。PCB
暴露は、母体血とさい帯血中、母乳中、児の42 ヶ月時のPCB-118, -138, -153, -180
の総計と定義した。母乳については17 種類のダイオキシン類も測定した。193 人が解析対象となった。周産期のPCB
暴露は喘鳴を伴う息切れの率の低下と関連していた(ΣPCB(母体血)OR=0.44、P=0.05)。最近のPCB暴露は再発性の中耳炎の増加(ΣPCB(児血)OR=3.06、P=0.02)、水痘の増加(ΣPCB(児血)OR=7.63、P=0.03)、喘息/気管支炎の減少(ΣPCB(児血)OR=0.01、P=0.01)と関連していた。また、母乳のmono-ortho
とplanner PCB のTEQ が再発性の中耳炎の増加に関連し(mono-ortho PCB TEQ OR1.17,
P=0.01; planner PCB TEQ OR 1.10, p=0.04)、dioxin TEQ
は咳、胸部うっ血、喀痰に関連していた(OR=1.06, P=0.04)。以上によりPCB
暴露は感染症への罹患を増やし、それがアレルギー罹患の低下につながる可能性があると考察している。
しかし、同じ研究で学童期までフォローアップを続けた結果では(Weisglas-Kuperus ら、2004)、167
人が解析対象となった。周産期のPCB
暴露は3から7歳の水痘の罹患率低下に関連していた(ΣPCB(母体血)OR=0.53、P=0.03;ΣPCB(さい帯血)OR=0.04、P=0.02)。喘鳴を伴う息切れの率も低下した。(ΣPCB(母体血)OR=0.59、P=0.04)。出生後のPCB
暴露は再発性の中耳炎に関連していた(ΣPCB(母乳)*母乳期間OR=1.19、P=0.04)。ここでは、感染症の増加と一貫した関連は認めず(水痘は減少、中耳炎は増加)、バックグランドレベルのPCB
暴露は免疫系に影響を与える可能性があるとの考察になっている。
Tusscher
ら(2003)はオランダ35組の健常白人系親子からなるコホート群において血液・免疫系への影響を評価している。ダイオキシン暴露は、母乳中のdioxin-like
PCB を除いたダイオキシンのTEQ で評価した。そのため、総ダイオキシン(dioxin+dioxin-like
PCB)はdioxin-like PCB を除いたダイオキシンのTEQ を2倍した。初期の、母乳中のダイオキシンTEQ
を周産期の暴露指標、母乳期間を加味して出生後の暴露指標とした。
27人が解析対象となった。周産期のダイオキシン暴露はアレルギーの減少と関連していた(P=0.023)。また、出生後のダイオキシン暴露もアレルギーの減少に関連していた(P=0.03)。 |