2.有機塩素系化合物
PCB 等の有機塩素系化合物の暴露に関しては、男子不妊症の外来患者を対象とした研究が4件あり、血清中(Rozati
ら、2002;Hauser ら、2002;Hauser ら、2003 あるいは血清及び精漿中(Dallingaら、2002)の有機塩素化合物濃度と精液所見との関連を検討しているが、いずれもそれらの暴露
と精液の質低下の関連性を示していた。スウェーデンの一般若年男性集団を対象とした断面研究(Richthof
ら、2003)では、PCB 及びその代謝物と、精子数及び精子運動性との間に負の相関を認めている。また、PCB/PCDF
類を直接暴露した油症患者の男性を対象とした台湾の症例対照研究(Hsu
ら、2003)では、暴露男性における精子数減少と形態異常との関連を示した。3.フタル酸類
フタル酸暴露についてはアメリカ合衆国で行われた研究が2 件検索された。1
件は男性不妊外来患者で尿中のフタル酸代謝産物濃度の精子への影響を検討した断面研究(Duty
ら、2003-1)で、コメット法で検出した精子DNA
損傷パラメータと尿中モノエチルフタル酸濃度と関連性を示したが、他のフタル酸代謝物との関連は認められなかった。もう1件(Duty
ら、2003-2)の男性不妊外来患者を対象とした症例対照研究では、尿中のモノブチルフタル酸及びモノベンジルフタル酸と精子濃度及び精子運動率との間に用量反応相関性が認められた。
4.スチレン
スチレン暴露に関する文献も2
件あり、どちらも同じ研究グループによるイタリアの繊維強化プラスチック工場の労働者を対象にした症例対照研究である。一方の研究(Migliore
ら、2002)では、暴露群と近隣在住の非暴露群との間で通常の精液検査結果に有意差を認めなかったが、コメット法による精子核DNA
断片化率は暴露群において有意に高かったことから、コメット法による精子核DNA
の評価は通常の精液検査より、スチレン暴露による精子への影響をより高感度に検出できるとしている。もうひとつの研究(Naccarati、2003)では、FISH
法による精子染色体検査で両群間の精子染色体の異数性及び二倍性の頻度を比較したが、有意差は認められず、精子染色体の数的異常には年齢や喫煙などの因子が関連していると結論していた。 |