3)地域相関研究
「PISA(生徒の学習到達度)研究」の加盟11カ国において、Dorner G ら(2002)は、出生年1984〜1985
年中における母乳中ジクロロ・ジフェニル・トリクロロエタン(DDT)濃度とPISA2000
研究における生徒から得られた精神判断能力の評価との関連性を検討した。また同様に1994〜1995
年のドイツにおける知的発達遅滞児の比率についても調査した。その結果、15歳の生徒の精神判断能力と母乳中総DDT
濃度には有意な逆相関が見られた(p=.001)。さらに三大陸中の10カ国とドイツにおける14の連邦州においても、PISA
International とPISA National(2000)における15 歳の生徒の精神判断能力は母乳中の総DDT
と有意な逆相関性を来した(P<.001)。さらにドイツにおける知的発達遅滞児の比率と1984〜1985 年の母乳中総DDT
値には有意な正の相関が見られた(p<.001)。以上の結果から、DDT
は子供の脳の発達とその後の生活における精神判断能力に有害な作用を誘発することが示唆された。〔考察・結論〕
以上、世界5か国でコホート研究での追跡調査が行われており、生後数ヶ月から学齢期まで、注意機能や反応時間などの神経心理学的評価指標を使用し化学物質暴露との関連を検討し報告されていた。また、新たに3か国の地域においてコホート研究が開始されていた。
高濃度暴露集団における研究では、出生前暴露が児の神経発達等に負の影響を与えていたが、Lai
ら(2002)は暴露の負の影響が年齢とともに一部回復を認めた報告している。また、アジアにおけるコホート研究は台湾における「油症」研究の追跡調査しか行われていなかった。 |