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5.農薬
農業に従事する母親から出生した男児に停留精巣のリスクが増加する、という報告がある。Weidner(1998)らは、デンマークの人口登録、患者登録、不妊症データベースを用いて、両親の農業、造園業への従事と、停留精巣・尿道下裂の発生との関連を検討した(停留精巣男児6177
人、対照23,273 人)。その結果、母親の造園業従事で有意なリスクの上昇が認められた(RR=1.67
95%CI=1.14-2.47)。農業従事では有意ではないがリスクの上昇が認められた(RR=1.28
95%CI=0.94-1.73)。父親の農業・造園業従事では、関連がみられなかった。(農業:RR=1.08
95%CI=0.93-1.24 造園業:RR=1.28
95%CI=0.80-2.04)一方、Kristensen(1997)らの、ノルウェイ
の出生登録、人工登録、農業登録により、家庭の農業・造園業・畜産業と、先天奇形の発生との関連を調べた報告によると、停留精巣に関しては、有意なリスクの上昇がみられなかった(OR=0.77
95%CI=0.58-1.03)。しかし、殺虫剤の暴露によりリスクの上昇がみられる、としている(殺虫剤の購入:OR=1.70
95%CI=1.16-2.50 殺虫剤の購入と野菜の栽培:OR=2.32 95%CI=1.34-4.01)。
Wang(2002)らは、停留精巣患児99 例(年齢1-14 歳:左側30 例、右側27 例、両側42
例)を症例とし、1症例当たり対照例2例をマッチさせて、同一質問票を用いて面談でのアンケート調査で症例対照研究を行ったところ、父親の職業的農薬暴露で有意なオッズ比の上昇が認められた(OR=12.79、
95%CI=2.90-56.43)。 |