3 今後、必要な調査研究等の課題の提言
本邦における内分泌かく乱化学物質の生体影響研究は、歴史が浅い。そうした相対的に短い研究期間ながら、この期、国際的に注目される知見が得られ、それらの研究が厚生労働科学研究として世界に発信されつつある点は評価されよう。他方、内分泌かく乱研究では、上記に通覧してきたとおり、その試験法の面からも、リスクアセスメントの面からも、それぞれに認識の進展は著しいにもかかわらず依然として不明の点が多い。その理由は、この問題の基盤となる知見で新たな知見が集積しつつも、根幹に関わっていて解明されていない事柄にもとづいているように考えられる。したがって、今後の課題としては、そうした基盤研究の引き続く重要性を強調せざるを得ない。
以上によりさしあたり以下のような個別的な諸課題が引き続き検討されるべきと考えられる。
(1)高感受性期−胎生期・新生児期・思春期の問題
形態形成期、すなわち機能的安定性の成立する前の、胎生期での影響に関して、無視できない不可逆的な事象が指摘されている48,49。また、グローバルアセスメントでは触れられなかったが、性に関するホメオステーシスの不安定な思春期についても、研究上、注目されるべきと考えられる4。臨界期への暴露が与える影響の評価基準は、いまだ定まっていない。例えば早発老化(premature
ageing)を引き起こす可能性の指摘もあるが、その真偽もそれに対するリスク認識も定まってはいない。ただし、実験動物学的には、早発老化は、種々のエピジェネティックな発がん性の上昇や前倒しを引き起こすことが知られている。 |