内分泌かく乱化学物質とは、内分泌系の機能に変化を与える外因性化学物質のうち生体に障害や有害な影響を起こすものを指すが、現時点では、合成ホルモン剤の薬理効果のような例を除けば、ヒトに対して内分泌かく乱作用が確認された事例はない。この点については、平成13年に中間報告書追補を取りまとめた時点と大きく変わっていない。
中間報告書追補において提示された行動計画について、これまでの取組の成果と、今後、更に進めるべき具体的課題の概要は、以下のとおりである。
(1)試験スキーム(健康影響についての試験と評価の体系)
〔これまでの取組の成果〕
1)スクリーニングについては、@In silico スクリーニング(電算機内予測)、A細胞系、無細胞系を用いたin vitro
スクリーニング試験、及びB卵巣摘出動物又は幼若動物、あるいは去勢動物等を用いたin vivo
試験が実施され、データの蓄積が進んだ。
2)確定試験(詳細試験)については、生体の成長過程(胎児期・新生児期・思春期)や生体反応(神経系、内分泌系、免疫系などの高次生命系に及ぼす変化)を包括的に検討する試験法の開発を進めている。
〔今後の取組〕
1)試験系を構成する各試験についてガイドライン及び評価基準を整備する。
2)精度及び網羅性の高いスクリーニング手法の開発整備を行って、ホルモン様作用(低用量域の作用を含む)を有することが生物学的に説明可能な物質の順位付け、リスト化を継続かつ高度化する。
3)そのためにスクリーニング試験に関しては、エストロゲン受容体に加え、アンドロゲン受容体、甲状腺受容体系等を加え、強化スキームを検討する。
4)マイクロアレイ技術を用いたパスウェー・スクリーニングを第4の項目として追加することを検討する。
5)詳細試験に関しては、神経・内分泌・免疫ネットワークの発生・発達・成熟・老化を考慮した「げっ歯類一生涯試験法」を開発する。
6)リスク評価を行い、ヒトに対する内分泌かく乱作用の可能性があると判断された物質に関して、暴露の実態も踏まえた上で、用途制限や監視等必要な法的措置又は行政措置を講ずる。 |