(食品安全情報2020年11号(2020/05/27)収載)
英国食品基準庁(UK FSA)は、家庭で調理した食事を地域社会に提供したいと考えている個人およびグループ向けに、食品安全に関する情報およびガイダンスを発表した。このガイダンスは、以下の人々に提供される食事の調理や寄付も対象としている。
・コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状がみられるため自主隔離下にある人
・健康被害を受けやすいため保護されている人
・地域の団体および組織
・英国国営医療サービス(NHS)の職員
地域のグループに提供される食品は、食品法に適合し安全に喫食できるものでなければならない。
慈善団体や地域グループに食品を提供する際に食品衛生証明書は必要ない。しかし、食品を確実に安全に取り扱うことが必要である。
登録について
食品の取扱い・調理・保存・提供の頻度および量が少ない場合は、食品事業者として登録する必要はない。
定期的および組織的に食品提供を行う場合、またはフードバンクを設立する場合は、地域の当局への登録が必要になる可能性がある。
既存のフードバンクは地域の当局に既に登録されており、利用者へのリスクを最小限に抑えるための措置を講じているはずである。
登録が必要か否かは地域当局が決定することになる。
自家製の料理を地域に提供する際や食品を寄付する際の食品衛生
食品を寄付または食事を提供する場合、使用した材料と調理された方法を提供先に確実に知らせることが重要である。これは、提供先の人々に疾患リスクを与えないようにするためである。
事前に包装された食品を寄付する場合は、消費期限(use-by date)、アレルギー物質情報、保存方法などの説明が適切に表示されていることを確認しなければならない。
食事を調理する際に適切な衛生管理に欠かせない4つの主要なポイントは、「洗浄する(cleaning)」、「加熱調理する(cooking)」、「冷却する(chilling)」、「交差汚染(cross-contamination)を避ける」の“4つのC”である。
安全性を保つため食品を適切な方法で保存することが極めて重要である。食品を密封容器に入れて適切な温度下で保存することで有害細菌から守ることができ、異物の混入や他の材料との交差汚染を防ぐことができる。
多数の人に提供するための食事を調理する際に役立つ実用的な助言を以下に示す。
・石鹸と水で習慣的に手指を洗浄する。
・生鮮果物および野菜は調理前および喫食前に必ず洗浄する。
・生の食品とready-to-eat(そのまま喫食可能な)食品は分けて取り扱う。
・消費期限(use-by date)が過ぎた食品は使用しない。
・調理方法の指示に必ず従う。
・食品を提供する前に確実に適切な加熱処理を行う。
・食品調理区域は使用後に適切に清掃および消毒されていることを確認し、使用する予定の調理用具はすべて熱い石鹸水で洗浄する。
・冷凍食品は使用前に冷蔵庫内で安全に解凍する。
・食品を冷蔵庫から出しておく時間は最小限にする。
食品の温度について
サンドイッチなどの要冷蔵食品を冷蔵庫から出しておく時間はできるだけ短時間に留めるべきであり、4時間を超えてはならない。
これを超える場合には、残った食品は廃棄するか冷蔵庫内に戻すべきである。冷蔵庫内に戻した食品を後で提供する際には、室温下に放置せず、できるだけ早く喫食すべきである。
特別な注意が必要な食品
以下の食品は、他の食品より食中毒の原因になりやすい。
・生乳
・生の貝類および甲殻類
・ソフトチーズ
・パテ
・生卵を使用した食品
・加熱済み薄切り肉
これらの食品を提供する場合は、FSAの小規模食品事業者向けガイダンス「Safer food, better business」の中の「特別な注意が必要な食品(FOODS THAT NEED EXTRA CARE)」の章(以下Webページ)を参照すること。
https://www.food.gov.uk/sites/default/files/media/document/foods-that-need-extra-care.pdf(PDF)
食品容器について
食品を容器に入れて提供する場合は、食品への使用に適した包装容器を選択することが重要である。これには、密閉容器や持ち帰り用容器など、様々な使用目的を対象とした包装容器が想定される。運搬される食品の安全性および品質が、これらの容器によって確保される。包装容器には、液漏れ防止や包装紙への染み込み対策として、包装材料に撥液性が必要な場合がある。このタイプの包装材を使用しない場合、化学物質や細菌による食品汚染が生じる可能性がある。また、密閉性が高い蓋をすることで、衛生リスクや液漏れのリスクを最小限に抑えることができる。
ガラス製やプラスチック製の容器は、欠けやひび割れさえなければ安全に再利用できる。ただし、細菌、アレルギー物質および異物混入による交差汚染を避けるため、容器の十分な洗浄を確実に行わなければならない。食器洗浄機で洗える容器の場合、高温での洗浄が可能なため、食器洗浄機を使用しての洗浄が望ましい。食器洗浄機が使用できない場合は、熱い石鹸水を使用して容器を十分に洗浄すべきである。
食品の配達について
食品はすべて安全で喫食に適した状態を保つ方法で消費者に届けられなければならない。
要冷蔵食品は運搬中も冷蔵状態が維持されなければならない。このような状態を保つためには、冷却材を入れた保冷箱や保冷袋での梱包が必要となる可能性がある。同様に、保温が必要な食品も保温袋等で梱包されるべきである。
また、配達過程での交差汚染リスクの可能性を防ぐ必要がある。運搬時の液漏れ等による汚染を防ぐため、食品の梱包をしっかりと行い、アレルゲンフリー食品を分けて梱包することなどで対応可能である。
アレルゲンフリー食品の注文を受けた場合には、配達時にそれがどの容器に入っているかを明確にすべきである。各食品の表示は容器にシールを貼るかメモを書き込むなどで対応可能である。