英国食品基準庁(UK FSA)からの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)関連情報
http://www.food.gov.uk/


宅配事業における食品安全:食品の持ち帰りおよび宅配サービスを行う事業者向けの衛生・アレルギー対策に関する助言
Food safety for food delivery: Hygiene and allergy advice for takeaways and food delivery businesses
26 March 2020
https://www.food.gov.uk/business-guidance/food-safety-for-food-delivery

(食品安全情報2020年9号(2020/04/28)収載)

 英国食品基準庁(UK FSA)は、食品宅配サービスを行う事業者向けに、食品安全に関するガイダンスを発表した。

 新規事業者に対しては、食品事業の開業および効果的な食品安全対策に関する詳細な情報を提供している。

 代金の受け取り、顧客データの管理、年齢制限のある製品のオンライン販売などに関する情報および規則については、コンビニエンスストア協会(Association of Convenience Stores)が作成した宅配事業に関する指針で確認できる。

HOME DELIVERY GUIDANCE FOR LOCAL SHOPS
https://www.acs.org.uk/sites/default/files/home_delivery_guidance_updated_3_april.pdf

登録について

 食品を受注し配達する事業を新たに始めようと考えている既存の食品事業者は、事業形態の変更によって、新しい、もしくはこれまでと異なるリスクを考慮する必要がある。配達後も食品の安全性が確実に維持されるように独自の食品安全管理システムを適応しなければならない。

重要事項

 2020年3月17日に規則が緩和され、コロナウイルス感染(COVID-19)アウトブレイク期間中の12カ月間は、パブおよびレストランの温かい食品や飲料のテイクアウト事業が許可されることになった。事業者は、新たにこの事業を開始・終了する際に地域当局に申告しなければならない。

注文の受付について

 宅配サービスの注文を受ける際は、電話、各自Webサイト、その他のオンラインプラットフォーム等を用いることができる。

 インターネット上でメニューや注文書を提供する場合、商品の内容、量、価格およびアレルギー物質に関するすべての情報が明確に読み取れるようにしなければならない。

 食品宅配事業者は、注文を受ける際に顧客にアレルギー物質情報を提供しなければならない。この情報は、口頭(電話)、または書面(Webサイトや印刷メニュー)で提供可能である。

 事業者は、顧客が発注する前にアレルギー物質情報を入手できる場所をWebページ上に示すべきである。外部販売サイト経由で注文された食品を提供する場合には、顧客へのアレルギー物質情報提供に関して外部販売サイト独自の規則がある可能性がある。

 従業員は、特定のアレルギーに関する条件が付いた注文に電話またはインターネットで対応する方法を心得ておくべきである。従業員が注文を受ける際にアレルギー条件に適切に対応できるように、アレルギー物質情報が明記された書類を用意しておくべきである。

食品の宅配に関する衛生指針

 食品事業における適切な衛生管理に欠かせない4つの主要なポイントは、「洗浄(cleaning)」、「加熱調理(cooking)」、「冷却(chilling)」、「交差汚染(cross-contamination)を避ける」の“4つのC”である。

 安全性を保つため食品を適切な方法で保存することが極めて重要である。食品を密封容器に入れて適切な温度下で保存することで有害微生物から守ることができ、異物の混入や他の材料との交差汚染を防ぐことができる。FSAは、事業分野ごとの食品の適切な冷却方法および冷蔵庫の温度に関する詳細情報を提供している。

 食品の宅配サービス事業に切り替える既存の食品事業者は、必要に応じて自社の危害分析重要管理点方式(HACCP)プランの見直しまたは更新を行うべきである。

 FSAは、小規模事業者および小売店向けに、厨房内での衛生・アレルギー物質管理に関する簡素化された実用的な指針を提供しており、食品提供業者向け情報サイト「Safer food, better business」(以下Webページ参照)から入手可能である。このサイトでは、食品宅配時に考慮すべきことに関する助言も紹介されている。

Safer food, better business
https://www.food.gov.uk/business-guidance/safer-food-better-business

受注した食品の配達について

 食品はすべて安全で喫食に適した状態を保つ方法で消費者に届けられなければならない。

 要冷蔵食品は運搬中も冷蔵状態が維持されなければならない。このような状態を保つためには、冷却材を入れた保冷箱や保冷袋での梱包が必要となる可能性がある。同様に、保温が必要な食品も保温袋等で梱包されるべきである。

 食品事業者は、宅配過程での交差汚染リスクの可能性を特定しそれを排除する必要がある。運搬時の液漏れ等による汚染を防ぐため、食品の梱包をしっかりと行い、アレルゲンフリー食品を分けて梱包することなどで対応可能である。

 アレルゲンフリー食品の注文を受けた場合には、宅配時にそれがどの容器に入っているかを明確にすべきである。各食品の表示は容器にシールを貼るかメモを書き込むなどで対応可能である。

運搬用の車両について

 受注した食品の運搬に自家用車(食品事業用でない車両)を使用する場合は、食品の提供・調理を出張して行う事業者向けに、FSAが衛生要件および車両仕様に関する詳細情報を提供している。

Businesses that supply or produce food on the move
https://www.food.gov.uk/business-guidance/businesses-that-supply-or-produce-food-on-the-move

 食品以外の物の運搬にも使用される車両や容器については、汚染リスクを避けるため、積み荷を変える度に効果的な洗浄が必要である。

 HACCPプランは、運搬を対象とする食品の内容を考慮した上での見直しが必要である。

 車両の適合性を確認したい場合には、地域当局に詳細な助言を求めることが可能である。


国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部