ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)からの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)関連情報
http://www.bfr.bund.de/


コロナウイルスが食肉製品を介して伝播する可能性は低い
Meat products and coronavirus: transmission unlikely
19 June 2020
https://www.bfr.bund.de/cm/349/meat-products-and-coronavirus-transmission-unlikely.pdf

(食品安全情報2020年14号(2020/07/08)収載)


 ドイツでは、最近数週間にとさつ場や食肉カット施設の従業員が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染している。そのため、食肉製品やその他の食品を介してもコロナウイルスへの感染が起こり得るのかという質問が多くの人から出ている。現時点で得られている知見にもとづくと、その可能性は考えにくい。理論的には、食肉や食肉製品はとさつや食肉カット・加工工程においてコロナウイルスに汚染される可能性はある。しかし、ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は、食肉製品の喫食や汚染された食肉製品との接触を介したSARS-CoV-2への感染事例があるとの認識はない。現時点での知見によると、ブタや鶏などの家畜がSARS-CoV-2に感染することはないため、これらの生きた家畜を介してSARS-CoV-2がヒトに伝播する可能性はないと考えられる。BfRのHensel所長によると、コロナウイルスが増殖するためには生きている動物またはヒトを宿主として必要とし、食品の内部や表面で増殖することはできない。ヒトが食肉や食肉製品の喫食を介してSARS-CoV-2やその他のコロナウイルスに感染し得ることは示されていない。この件に関し科学的に価値のある新しいデータが得られた場合には、BfRが直ちに調査および評価を行い、情報発信する予定である。

 食品由来感染症から身を守るためには、食肉や家禽肉を喫食前に必ず十分にむらなく加熱調理すべきである。


 一般に、衛生規則が守られない場合、汚染された手指などにより間接的に、またくしゃみや咳によって直接的に、コロナウイルスは感染者からソーセージや食肉に移行し得る。しかし、食肉処理場や食肉カット施設で通常は遵守義務がある衛生規則や感染予防対策により、食肉や食肉製品の病原体汚染リスクは最小限に抑えられており、SARS-CoV-2汚染リスクについても同様である。小売施設においては、食肉や食肉製品はカウンターのケース等によってくしゃみや咳の飛沫から守られており、汚染リスクが最小限に抑えられている。

 塗抹による感染は、汚染された直後の食品に触れた手から鼻、目、口などの粘膜にウイルスが移った場合にのみ理論的には可能であると考えられる。しかし、環境中でのコロナウイルスの安定性は比較的低い(以下Webページ参照)ことから、塗抹感染を介した伝播が起こり得るのは汚染後短時間のみであると考えられる。
https://www.bfr.bund.de/en/can_the_new_type_of_coronavirus_be_transmitted_via_food_and_objects_-244090.html (新型コロナウイルスに関するFAQ)
現時点で得られている知見にもとづくと、食肉製品の喫食という伝播経路は現在発生中のSARS-CoV-2感染アウトブレイクに関与していない。

 ウイルス感染を防ぐためには、食品調理時に定期的な手洗いを行うことや手を顔に近づけないことなど、普段からの一般的な衛生規範を守ることが極めて重要である。

 また、喫食前に食肉や家禽肉全体を70℃以上で最低2分間加熱するか、目安として肉汁が透明になり、食肉部分が白っぽい色(家禽肉)、灰色がかった色(豚肉)、灰褐色(牛肉)になるまで加熱することで、食品由来感染症のリスクは低減できる。



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部