米国食品医薬品局(FDA)は2月6日、エフェドリンアルカロイドを含む栄養補助食品について、疾病や障害の不当なリスク(unreasonable risk)があるとしてその販売を禁止する最終規則を公布した。この規則は公布から60日後に施行される。
FDAはこれまでにも、エフェドリンアルカロイド含有栄養補助食品に関してさまざまな措置を講じてきている。最初は、1997年6月に、当該製品は有害なので7日間を超えて使用しないようにとの警告表示や量の制限等の提案を行っている。また、2003年2月にはRANDの報告書等の結論を元に、エフェドラ含有栄養補助食品が重大なリスク及び不当なリスクを有する可能性があるとして、運動能力増進作用があるという根拠のない強調表示をやめるよう会社に警告したり、安全性についてのパブリックコメントをもとめている。
2003年12月30日には、今回の販売禁止措置の予定を発表しており、消費者にエフェドラ製品の使用を直ちに止めるように注意を呼びかけると共に、製造・販売業者へもその旨通告していた。
◇2003年2月の措置に関する資料
◇1997年6月にFDAが取った措置
RAND Homepage - Ephedra? Is It Worth the Risk?
4月12日、FDAはエフェドリンアルカロイド含有ダイエタリーサプリメントの販売禁止に関する最終規則の発効を発表した。2つの製造業者がニュージャージー州連邦地裁にFDAの禁止措置の差止めをもとめる仮処分を申請していたが、地裁は4月12日、(最終的判断ではないものの)FDAの禁止措置を延期する必要はないとの判断を下した。
ヘルスカナダは体重減少などをうたって販売しているThermonex(サーモネックス)を、死亡を含む重大な有害作用がおこる可能性があるとして使用しないよう警告した。
※2002年1月にヘルスカナダは、体重減少等をうたったある種のエフェドラ/エフェドリン含有製品(特にカフェインやその他の興奮剤を一緒に含むもの)を使用しないように勧告し該当製品を回収したが、2003年6月再注意を呼びかけた(June 9, 2003)。2002年1月に回収対象となった製品の詳細(エフェドリン含量など)については、このサイトに記載されている。
(http://www.hc-sc.gc.ca/ahc-asc/media/advisories-avis/_2003/2003_43-eng.php
FDAは11月23日、消費者を有害な製品から保護するために、エフェドリンアルカロイドを含むダイエタリーサプリメントに対する措置の強化を発表した。ヒューストンにある地方裁判所は、エフェドラ含有サプリメントVITERA-XTを押収し、この製品を販売していた会社を告訴した。
米FDAの要請でペンシルベニアの検察当局は,ATF Fitness Products Inc.のエフェドリンアルカロイドを含む違法なダイエタリーサプリメント13,500ドル相当の製品の没収を請求し、製品が押収された。FDAの調査によれば、これらの製品は、禁止されているエフェドリンアルカロイドを含有しているか、あるいはエフェドリンまたはエフェドリンアルカロイドを含有していると表示しながらこれらを含んでいなかったことが確認されていた。
エフェドリンおよびエフェドリン類似体を含む栄養補助食品等に関する米国FDAの対応について
【参考情報】
エフェドリンは、天然植物由来である麻黄(マオウ、エフェドラ)などの主要な有効成分である。米国では近年、エフェドラ製品はダイエットや運動能力増強などの目的で広く使用されている。天然エフェドラを含む栄養補助食品は、1994年に制定された栄養補助食品健康教育法(DSHEA)で規制されており、販売禁止のためにはFDA がそのリスクを立証する義務がある。(エフェドリンの化学的合成品は、連邦食品医薬品化粧品法により医薬品として規制されている。医薬品の場合は、市販前に製造業者がその安全性と有効性を証明する義務がある。)
栄養補助食品健康教育法(DSHEA)の下でFDAが栄養補助食品に対し規制措置を講じることができる条件としては、製品が重大なリスク(significant risk)を有する、不当なリスク(unreasonable risk)を有する、差し迫った危険(imminent hazard)がある、製造基準(GMP)に適合していない、根拠のない構造・機能強調表示をしている、などがある。今回FDAがエフェドリンアルカロイド含有栄養補助食品の販売を禁止した最終規則は、上記の条件のうち「不当なリスク」基準を適用している。FDAの結論では、エフェドリンアルカロイド含有栄養補助食品は心臓発作、脳卒中、死亡など重篤な有害事象のリスクがあり、このリスクは当該製品を使用した時の利益を考えても不当である(unreasonable)としている。
http://www.fda.gov/oc/initiatives/ephedra/february2004/
報道発表、最終規則の官報全文、最終規則の要約、Q&A(質問と回答)、2003年12月の関連資料サイト、2003年2月の関連資料サイ、RAND報告書などがまとめてリンクされている。
Dietary Supplements Containing Ephedrine Alkaloids Final Rule Summary
(http://www.fda.gov/oc/initiatives/ephedra/february2004/finalsummary.html)
Questions and Answers about FDA's Actions on Dietary Supplements Containing Ephedrine Alkaloids(February 6, 2004)
(http://www.fda.gov/oc/initiatives/ephedra/february2004/qa_020604.html)
http://www.cfsan.fda.gov/~dms/ds-ephed.html
FDA Fact Sheet(February 28, 2003)
http://www.fda.gov/bbs/topics/NEWS/ephedra/factsheet.html
FDA Proposes Safety Measures for Ephedrine Dietary Supplements(June 2, 1997)
http://www.cfsan.fda.gov/~lrd/hhsephed.html
FDAによる今回の措置において、エフェドラの安全性及び有効性に関する科学的根拠の主要な資料となったRAND(米国の独立・非営利の科学系研究所)の報告書。
http://www.fda.gov/OHRMS/DOCKETS/98fr/95n-0304-bkg0003-ref-07-01-index.htm
http://www.fda.gov/bbs/topics/NEWS/ephedra/summary.html
http://www.rand.org/publications/RB/RB4556/
(http://www.cfsan.fda.gov/~lrd/fpephed7.html)
FDAは昨年12月30日、禁止措置をとる旨の書簡を60以上もの製造業者に送ると共に、消費者に対してもエフェドラの危険性を訴え即刻使用をやめるように警告していた。
FDAは今後もメーカーが製品の販売などを続けているかどうかインターネットを監視する予定にしている。FDAは、書簡を送りつけたメーカーの多くが当該製品の販売を中止するなど、規制の効果が既にあがっているとしている。
(http://www.hc-sc.gc.ca/ahc-asc/media/advisories-avis/_2004/2004_30-eng.php)
Thermonexはエフェドリン類似体であるシネフリン(synephrine)を含むことから、エフェドリンと同様に高血圧や心血管系に有害な作用(脳卒中、心臓発作、死亡など)を示す可能性がある。ヘルスカナダは先にエフェドリン含有製品、特にカフェインや他の興奮剤を含むエフェドリン含有製品について使用しないよう勧告している。Thermonexはシネフリンの他にカフェインや他のシネフリンの作用を増強する成分を高濃度に含む。他に「ビターオレンジ抽出物」を含む製品や体重減少をうたった商品もシネフリンを含む可能性がある。
Thermonexは米国のBSN社で製造されている。現在カナダで販売されているかどうかは不明であるが国境で輸入を差し止めている。カナダで販売されていることがわかったらヘルスカナダは回収など適切な措置をとるので、消費者が販売店で見かけた場合はヘルスカナダに連絡するよう呼びかけている。
消費者が上記の製品について心配がある場合は、薬剤師や医師に相談してほしい。
またヘルスカナダは、消費者、特に以前から心疾患、高血圧、甲状腺疾患、糖尿病、前立腺肥大、不安、緑内障、褐色細胞種などがある人は、体重減少、ボディビル、エネルギー増強などをうたって販売されている製品を使用する前に医師に相談するように勧告している。
(http://www.fda.gov/bbs/topics/news/2004/NEW01140.html)
(http://www.fda.gov/bbs/topics/ANSWERS/2005/ANS01342.html)
更新: 2005年4月
国立医薬品食品衛生研究所安全情報部