食品のウイルス標準試験法検討委員会  
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  設立の背景

  

近年、ノロウイルス、サポウイルス、A型およびE型肝炎ウイルスなど、食品を介して感染するウイルス(食品媒介性ウイルス)が国民に多くの健康被害をもたらせています。食品媒介性ウイルスに対する有効な対策の構築や食品や農水畜産物のウイルス汚染に関し国民に正確なリスクコミニケーションを行うためには、食品中のウイルスの汚染量や汚染率を正確に把握し、信頼性のある科学的根拠を得ることが重要です。


食品中のウイルス汚染量を調べる基本は、生きたウイルスを培養し、感染性ウイルス量を定量することですが、多くの食品媒介性ウイルスは培養が困難か不可能であることから、PCR法やリアルタイムPCR法などの遺伝子検査に基づく検査が行われています。そのため、現在の食品からのウイルス検出法は、生きたウイルスを定量できないという本質的な問題を抱えていますが、それ以外に以下のような解決すべき問題点があります。

  1. 現在、食品からのウイルス検出法がいろいろと開発・改良されています。食品のウイルス検査は、食中毒原因究明検査など高い検出感度が重要な検査と出荷前の自主検査など簡便性・迅速性が重要な検査のように、検査目的により検査法に特に求められる特徴が異なります。そのためおのずと検査法自体も検査目的により異なったものになります。それらの異なる検査法の有用性を評価するためには、比較の基準となる標準的な検査法が必要です。

  2. 遺伝子検査を行うためには、食品成分からウイルス粒子を分離、濃縮する必要があり、その食品からのウイルスの回収率が検査結果に大きな影響を与えます。化学物質の場合は食品からの回収率をモニターするための標準物資が存在し、その標準物質を用いた回収率を考慮し食品中の汚染量が求められていますが、現在の検査法ではその回収率が考慮されていません。また、食品の処理方法によっても検査結果にばらつきがみられます。そのため、報告者により食品の汚染量や汚染率に大きな違いが認められています。

  3. 食品から定量的にウイルス遺伝子を検出するためには、リアルタイムPCRの標準曲線を作成するための標準プラスミドDNAや回収率をモニターするための添加回収用標準ウイルスが必要ですが、公的機関を除き供給体制が確立していません。そのため、公的検査機関以外の検査機関での食品ウイルス検査の実施が困難な状況にあります。

  4. 食品中のウイルスの検査法に関する外部精度管理体制が存在しないため、各検査機関での結果の信頼性が客観的に担保されていません。

以上のように、現在の食品中のウイルス検出・定量法には検査法自体の問題に加え検査体制においても種々の問題点を抱えており、細菌や化学物質の食品検査と比較して大きく立ち遅れている現状にあります。さらに、輸入食品に伴うウイルス性食中毒の発生等から、コーデックス委員会食品衛生部会では食品中のウイルス制御に関する規範作成が新規事業として取り上げられているなど、国際的にも食品のウイルス制御が強く求められており、今後国際的なウイルス検査の標準化も視野に入れる必要があります。


これらの背景から、食品中のウイルス検出法の開発を促進し、その評価を客観的に行うとともに検査の精度管理を行う体制が求められており、今回、食品のウイルス標準試験法検討委員会を立ち上げるものです。


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