3.その他の物質
有機塩素系化合物以外の化学物質については報告はみられなかった。〔考察〕
DES についてはコホート研究が3
件報告されているが、結果は一致しておらず、もっとも大規模な最近の研究ではリスクの上昇がみられていないことから、DES
が卵巣がんのリスクである可能性は低いと考えられる。
DES 以外の化学物質と卵巣がんの関連を調べた疫学研究は極めて少なかった。研究の種類別ではコホート研究が1
件もなく、残留有機塩素系化合物として無視できないPCB、DDT、HCH、HCB
などの物質に関する研究は皆無でで、因果関係を評価することは不可能であった。農業や農薬暴露を受ける職業との関連を調べた研究も文献検索からはほとんどなかったが、これについては結果が陰性のために出版されないバイアスも考えられた。
以上のように、DES
以外の化学物質と卵巣がんとの関連についての疫学研究の知見は現状では極めて少なかった。しかし、数少ない報告の中で、イタリアでの症例対照研究が農薬やある種の除草剤と卵巣がんリスクとの関連を示唆しており、有機塩素系化合物やその他の化学物質について研究の余地がある。また、日本人における研究は1件もなく、イソフラボンなどの環境要因や遺伝的な差違を考慮すると、日本人での研究が必要であると考えられる。
〔結論〕
内分泌かく乱化学物質と卵巣がんについての疫学研究をレビューしたところ、現時点での知見はほとんどなかった。DES
については複数のコホート研究の結果が一致しておらず、卵巣がんのリスクである可能性は低いと考えられた。DES
以外の有機塩素系化合物などの化学物質と卵巣がんの関連に関する研究はほとんどなく、両者の因果関係を評価することは不可能であった。この点については信頼性の高い研究デザインを用いた研究の必要性が示唆された。
〔参考文献〕
〔表2-3-1
内分泌かく乱化学物質と卵巣癌に関するコホート研究〕
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