3)横断面研究(エコロジカル研究を含む)
横断面研究は4 件であった。Schreinemacher ら(1999)は米国、ミネソタ州の4
つの地域で、都市・森林地域に対して除草剤の使用が多い農業地域のSRR
を算出したが、リスクの上昇はみられなかった。Schreinemacher ら(2000)のエコロジカル研究では、米国の3
つの州の152 の郡について、クロロフェノキシ除草剤で処理する麦の作付け面積別にSRR
を算出したが、有意なリスクの上昇は観察しなかった。Hopenhayn-Rich(2002)らのエコロジカル研究では、米国ケンタッキー州の120
の郡について、トウモロコシ栽培面積やatrazine 販売量などから計算したatrazine 暴露の程度別にOR
を算出し、暴露が大きい地域で有意なリスクの低下を観察している。
Koifman(2002)らのエコロジカル研究では、ブラジルの11 州における1980 年代の農薬販売量と1990
年代の卵巣がん死亡率の間には有意な相関性(r=0.71)を認めている。2.Diethylstilbestrol
Diethylstilbestrol (DES)と卵巣がんとの関連については、米国でのコホート研究が3
件報告されていた。Hoover ら(1977)は、一つの病院で結合型エストロゲンのPremarin とDES
の併用投与経験のある女性21 名を後ろ向き研究で調べたところで有意なリスクの上昇(SIR:
30)がみられたことを報告している。ただし、観察数は3 例と少なかった。Bibbo ら(1978)はRCT
のデザインで1951-1952 年にDES 投与を受けた女性2162 名を1976-1977
年まで追跡したところ、暴露群の罹患率は0.6%、非暴露群は0.2%であり、統計的には有意な増加ではなかった。Titus-Ernstoff
ら(2001)は1950 年代と1980 年代の2 つのコホートの7560 名を1994 年まで追跡したが死亡の増加(RR:
0.71)は観察しなかった。Blatt ら(2003)が1 件の症例報告をしていた。15
歳で卵巣小細胞がんと診断された女性で、本症例の母親は祖母がDES による治療下での妊娠例であり、DES
の経世代的暴露が指摘された。 |