第5節 リスクコミュニケーション 1 はじめに
化学物質に関わる問題の中でも、内分泌かく乱化学物質問題については、科学的に未解明な点が多いことなどの特徴があることからリスクコミュニケーションの実施を困難にしている可能性がある。
今般、厚生労働科学研究「内分泌かく乱物質のリスクコミュニケーションに関する研究」の成果を踏まえ、内分泌かく乱化学物質問題の特徴を整理した上で、ガイドラインを作成した。
また、リスクコミュニケーションに資するため、本書の概要(リスクコミュニケーションと行動計画は除く。)の解説を試みた。
2 内分泌かく乱化学物質問題とリスクコミュニケーション
2−1 リスクコミュニケーションの必要性について(目的)
近年、化学物質の特に安全性に着目した管理に際して、利害関係者間の意思疎通や情報の共有に対する重要性が認められつつある。
なかでも、行政から発信される情報伝達に関しては、
・行政施策の実施に当たって、根拠となる科学的情報をもとにした説明責任を果たすことが求められていること
・適切な情報伝達によって政策への理解を深めることに基づき、社会全体として政策決定についての合意形成が達成されることが重要であること
・立場の違いや考え方の多様化などから、必ずしもリスクコミュニケーションの実施が短期的に政策に対する社会的受容や合意形成に結び付かない場合も想定されるが、その場合であっても、化学物質のリスクに対する理解の深まりが個別の問題発生時の理解の手助けとなることや、情報発信者たる行政への信頼性の向上に寄与するなど長期的な視野からの効
果が期待できること
などから、適切な実施が必要と考えられる。 |