(食品安全情報2022年18号(2022/08/31)収載)
食品安全事例
2022年の第2四半期に国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)事務局は、世界保健機関(WHO)加盟の106の国・領土が関連した計46件の食品安全事例に対応した。このうち生物的ハザード関連の事例は22件で、その内訳は、リステリア(Listeria monocytogenes)(8件)、サルモネラ属菌(7件)、ノロウイルス(3件)、A型肝炎ウイルス(1件)、カビ(1件)であり、残りの2件については生物的ハザードを調査中である。また、非表示のアレルゲン/成分に関連した事例は17件(乳(6件)、貝類(2件)、ピーナッツ(2件)、アーモンド(1件)、卵(1件)、グルテン(1件)、ヘーゼルナッツ(1件)、マスタード(1件)、ゴマ(1件)、大豆(1件))、化学的ハザード関連の事例は5件(アフラトキシン(1件)、クロルピリホス(1件)、ヒスタミン(1件)、アルカロイド(1件)、シルデナフィルチオノ類似化合物(1件))、物理的ハザード関連の事例は2件(金属(1件)、プラスチック(1件))であった。
INFOSAN事務局が本四半期に対応した上記46件の事例に関連した食品カテゴリーは、スナック・デザート・その他の食品(11件)、魚・水産食品(7件)、複合食品(5件)、ハーブ・香辛料・調味料(5件)、ナッツ・油糧種子(4件)、果物・果物製品(3件)、野菜・野菜加工品(3件)、食肉・食肉製品(2件)、シリアル・シリアルベース製品(1件)、卵(1件)、食品添加物(1件)、乳・乳製品(1件)、ノンアルコール飲料(1件)であり、残りの1件については原因食品が不明であった。
本四半期の食品安全事例数は依然として高水準である46件に達しており、前四半期(47件)より1件減少しただけであった。INFOSANのメンバーおよび協力機関の積極的な関与により、これらの食品安全事例の52%がINFOSAN加盟各国の緊急連絡窓口(ECP)および情報連絡窓口(FP)を介して、33%が欧州委員会(EC)の「食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF)」を介して、また15%がWHOの様々な経路を介してINFOSAN事務局に報告された。
地理的状況
〇 チョコレート製品に関連して複数国にわたり発生しているサルモネラ(単相性Salmonella Typhimurium)感染アウトブレイク
WHO欧州地域の加盟14カ国および米州地域の加盟2カ国にわたり発生しているサルモネラ(単相性Salmonella Typhimurium)感染アウトブレイクに関連し、2022年5月18日時点で計369人のクラスター患者が特定されている。本アウトブレイクに関するWHOのリスク評価および助言はWHOの以下のWebページから入手可能である。
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2022-DON369
また、疫学調査および微生物学的調査に関する詳細情報は、2022年5月に発表された欧州疾病予防管理センター(ECDC)および欧州食品安全機関(EFSA)による合同迅速アウトブレイク評価の初回の更新(以下Webページ参照)から入手可能である。
https://www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/documents/1st-update-ROA_monophasic-S-Typhimurium-ST34_2022-00014_UK-amended-8-June.pdf
国際的に流通するチョコレート製品の喫食に関連して複数国にわたり発生している本アウトブレイクについて、INFOSAN事務局は本四半期に追跡を継続してきた。INFOSAN事務局は、情報共有を促し重要な情報を提供することで調査を円滑に進めるため、関連加盟国との緊密な連絡を維持している。
本食品安全緊急事例に関連したWHO加盟各国は、INFOSANにより2022年3月に発出された警報(INFOSAN Global Alert)を受けた後、自国で実施した調査やリスク管理対策に関する様々な最新情報をINFOSAN事務局に提供した。これらの情報には、関連チョコレート会社での立ち入り検査、警報の対象製品の回収に関する詳細、当該チョコレート製品の喫食に関連した患者を特定するためのサーベイランスなどが含まれた。一部の加盟国は、当該製品を他国にも出荷していたことを報告しており、輸出先である加盟国に知らせるために必要な情報をINFOSAN事務局に提供している。
INFOSAN事務局は、加盟各国からの更新情報と調査結果を集約した事例概要(incident summary)をINFOSANのコミュニティウェブサイト上で公開しており、新たな情報が得られた時点で更新を行っている。INFOSANのコミュニティウェブサイト内には、加盟各国が調査結果やその他の更新情報を直接報告できる専用ページが設けられている。将来の国際的な食品安全緊急事例発生時の対応に備え、本インシデントへの対応における各国の知見や問題解決策についてもこのスペース内で情報提供されている。
加盟各国は、食品安全緊急時に加盟国間での情報共有を円滑に行うためINFOSANなどのネットワークを構築する重要性を認識している。このような情報交換により、アウトブレイクの発生時に迅速なリスク管理対策を実施することが可能になっている。INFOSAN事務局は、本事例のモニタリングを継続しており、さらなる情報が得られた場合に加盟各国に最新の情報を提供できるようにしている。
〇 米国外にも出荷されたピーナッツバターに関連して米国で発生したサルモネラ感染アウトブレイク
ピーナッツバター製品に関連したサルモネラ感染アウトブレイク(患者数計16人)の発生および当該製品の関連業者による自主回収の情報が、米国のINFOSAN緊急連絡窓口(ECP)を介してINFOSAN事務局に通知された。
米国のECPとの協力により、このアウトブレイクに関連した製品が多数のWHO加盟国に輸出されていたことがINFOSAN加盟各国に通知された。INFOSAN事務局は当該製品を輸入した加盟各国のECPに直接連絡を取り、当該製品の国際的な流通に関する認識を確認し、当該製品の喫食に関連した可能性がある患者の特定など、本事例への対応に関する詳細情報を提供するよう要請した。
当該製品を輸入した加盟各国は、追加実施したリスク管理対策をINFOSAN事務局に報告した。米国以外のWHO加盟国では当該製品の喫食に関連した患者は報告されなかった。
本アウトブレイクの米国での調査に関する詳細情報は、米国疾病予防管理センター(US CDC)および米国食品医薬品局(US FDA)の以下の各Webページから入手可能である。
https://www.cdc.gov/salmonella/senftenberg-05-22/index.html(US CDC)
https://www.fda.gov/food/outbreaks-foodborne-illness/outbreak-investigation-salmonella-peanut-butter-may-2022(US FDA)
https://www.fda.gov/safety/recalls-market-withdrawals-safety-alerts/j-m-smucker-co-issues-voluntary-recall-select-jifr-products-sold-us-potential-salmonella(US FDA)
ニュースおよびその他の活動(タイトルのみ紹介)
〇 INFOSANによる2022年世界食品安全デー記念行事
・食品安全に関する健康会議:2022年世界食品安全デーに食品安全緊急時対応の強化方法に関する専門家会議を実施
・ニカラグア当局がINFOSAN加盟の重要性について議論
・スーダン当局で食品由来疾患アウトブレイク調査に関する研修を実施
〇 西バルカン地域における食品安全緊急時の迅速な情報共有に関するワークショップ
〇 INFOSANへの関与を強化するためのメキシコ当局との共同オンラインセミナー
〇 食品安全緊急時対応に関するグアテマラ当局との共同開催ワークショップ
〇 INFOSANへの関与を強化するためのカンボジア当局との共同開催ワークショップ