Eurosurveillanceのノロウイルス関連情報
https://www.eurosurveillance.org


高所得国における医療施設関連の食品由来アウトブレイク:経済協力開発機構(OECD)加盟16カ国を対象とした文献レビューおよびサーベイランスデータ解析(2001〜2019年)
Healthcare-associated foodborne outbreaks in high-income countries: a literature review and surveillance study, 16 OECD countries, 2001 to 2019
Eurosurveillance, Volume 26, Issue 41, 14/Oct/2021
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8518306/pdf/eurosurv-26-41-5.pdf(論文PDF)
https://www.eurosurveillance.org/content/10.2807/1560-7917.ES.2021.26.41.2001278

(食品安全情報2022年19号(2022/09/14)収載)


背景

 医療施設関連の食品由来アウトブレイク(Healthcare-Associated(HA)-FBO)は、特に健康被害を受けやすい人々に深刻な結果をもたらす可能性がある。

目的

 本研究の目的は、HA-FBOの現状を把握し、予防のための公衆衛生上の推奨事項を提示することである。

方法

 経済協力開発機構(OECD)加盟国で発生したHA-FBOについて、PubMed(対象期間:2001年1月〜2019年4月26日)、シャリテ・ベルリン医科大学(Charité, University Medicine Berlin)のアウトブレイクデータベース(対象期間:2001年1月〜2019年4月26日)および手動検索によるリファレンスリストを用いて検索したほか、ドイツのサーベイランスシステムからも2012〜2018年のHA-FBOを検索した。さらに、欧州食品安全機関(EFSA)のデータベース(対象期間:2010〜2018年)の解析を行った。

結果

 PubMedおよびアウトブレイクデータベースの検索の結果、OECD加盟16カ国ではHA-FBOが57件発生しており、件数が多かった国は米国(11件)、ドイツ(11件)および英国(9件)であった。また、ドイツのサーベイランスシステムには28件のHA-FBOが記録されていた。計85件のHA-FBOを病原体別にみると、上位3種類はサルモネラ(24件)、ノロウイルス(22件)およびリステリア(Listeria monocytogenes)(19件)であった(表1)。死亡者数は、L. monocytogenes感染によるHA-FBOが最も多かった。

表1:医療施設関連の食品由来アウトブレイク(HA-FBO)の病原体別・医療施設別分布(OECD加盟の高所得16カ国a、2001〜2019年、n=85)

NA:該当なし
OECD:経済協力開発機構
a OECD加盟国であるが高中所得国であるトルコは対象外
b 人獣共通感染性である複数の血清型:Salmonella Enteritidis、S. Bovismorbificans、S. Brandenburg、S. Corvallis、S. Derby、S. Infantis、S. Javiana、S. Muenchen、S. Newport、S. Oranienburg、S. Typhimurium
c サルモネラ感染HA-FBOの1件およびノロウイルス感染HA-FBOの1件については、医療施設における患者数が不明
d 定着(感染ではない)


 HA-FBOに高頻度で関与がみられた原因食品は、複合食品(16件)、野菜・果物(15件)および食肉・食肉製品(10件)であった。リステリア症、サルモネラ症およびノロウイルスによるHA-FBOに関連がみられた上位3種類の食品カテゴリーが表2に示されている。

表2:医療施設関連の食品由来アウトブレイク(HA-FBO)においてリステリア症、サルモネラ症またはノロウイルス感染症に関連した上位3種類の食品カテゴリーと、その患者数・死亡者数(OECD加盟の高所得16カ国a、2001〜2019年)

NA:該当なし
OECD:経済協力開発機構
a OECD加盟国であるが高中所得国であるトルコは対象外
b リファレンス:リストに挙げられた論文のリファレンスのみ。ドイツのサーベイランスシステム「SurvNet」から得られたHA-FOBについては下記URLのSupplementary dataよりSupplement S1の表S1参照
https://www.eurosurveillance.org/content/10.2807/1560-7917.ES.2021.26.41.2001278#supplementary_data
c 生の豚肉に関連したSalmonella Muenchen感染アウトブレイク1件(文献38)は除外(医療施設関連の患者数の報告なし)
d 冷凍イチゴに関連したノロウイルス感染アウトブレイク1件(文献41)は除外(医療施設関連の患者数の報告なし)
注記:この表は上位3種類の食品カテゴリーのみの表示であるため、合計値は総計とはならない


 HA-FBOの原因として、健康被害を受けやすい患者による高リスク食品の喫食、不適切な調理時間・温度、台所と食品の不十分な衛生管理、および食品取扱者による病原体の保有が報告されていた。

結論

 HA-FBOを予防するには、健康被害を受けやすい人々への高リスク食品の提供を避けるべきである。適切に行われるアウトブレイクサーベイランスはアウトブレイクの早期探知に役立ち、その有効性を維持するには病院・食品安全当局・公衆衛生当局の間での分野を越えた緊密な協力と情報交換が必要である。



国立医薬品食品衛生研究所安全情報部