Eurosurveillanceのノロウイルス関連情報
https://www.eurosurveillance.org


オランダの食品由来アウトブレイクのサーベイランス結果(2006〜2019年)
Surveillance and characteristics of food-borne outbreaks in the Netherlands, 2006 to 2019
Eurosurveillance, Volume 27, Issue 3, 20/Jan/2022
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8804662/pdf/eurosurv-27-3-2.pdf(論文PDF)
https://www.eurosurveillance.org/content/10.2807/1560-7917.ES.2022.27.3.2100071

(食品安全情報2022年15号(2022/07/20)収載)


背景

 汚染された食品中の様々な病原体がヒトの疾患の原因となり得る。食品由来疾患全体の実被害において、アウトブレイクによる被害はその一部に過ぎないが、アウトブレイクのサーベイランス実施により、病原体、原因食品、汚染の発生場所、病原体伝播の発生場所などを把握するための手掛かりが得られる。

目的

 オランダで2006〜2019年に登録された食品由来アウトブレイクの状況を把握することである。

方法

 2006〜2019年に初発患者が発生した食品由来アウトブレイクすべてを対象に、年別のアウトブレイク件数・患者数、発生場所、病原体、エビデンスの種類および原因食品について解析が行われた。

結果

○ アウトブレイクの概要

 オランダでは、2006〜2019年に食品由来アウトブレイク計5,657件およびアウトブレイク関連の患者計27,711人が確認された。1年あたりの平均発生数は、アウトブレイクが404件(範囲:206〜756)および患者が1,979人(範囲:1,006〜3,080)であった(図1)。アウトブレイク1件あたりの平均患者数は4.9人(範囲:1〜1,149人)であった。オランダ食品消費者製品安全庁(NVWA)には大部分のアウトブレイク(5,367件、患者25,659人)が、保健当局(PHS:public health service)にはアウトブレイク523件、患者8,844人が報告された。患者が1人のみの1件のアウトブレイクは、1件の国際的アウトブレイクに含まれる事例であった。

図1:食品由来アウトブレイク(n=5,657)および関連患者(n=27,711)の年別発生数(オランダ、2006〜2019年)

(データは、保健当局(PHS)により報告されたアウトブレイク、国内の疾患別サーベイランスシステムを介して検出されたアウトブレイク、オランダ食品消費者製品安全庁(NVWA)により報告されたアウトブレイク、およびその他の調査で検出されたアウトブレイクをまとめたものである。重複して報告された同一のアウトブレイクは1件にまとめた。)


 PHSへの報告件数は2006〜2012年(40〜49件/年)の期間と2013〜2019年(27〜38件/年)の期間との間で減少が見られたが、報告基準の変更はなく、他に明らかな理由も見受けられなかった。一方、NVWAへの報告件数は、2006〜2014年は251件/年(範囲:185〜313)であったが、2015年に基準が変更され、2015〜2019年は622件/年(範囲:398〜736)へと大きく増加した。NVWAへの報告のうち病原体が報告されたアウトブレイクの割合は、2006〜2014年の10.7%から2015〜2019年は5.3%に低下した。

 PHSのみに報告されたアウトブレイクが290件、NVWAのみが5,134件、および両方への報告が233件であった。PHSのみに報告されたアウトブレイクで病原体が検出された割合は、患者由来検体からが86.6%(n=251)、食品/環境由来検体からが0.7%(n=2)および両方からが1.7%(n=5)であった。NVWAのみへの報告で病原体が検出された割合は、患者由来検体からが1.2%(n=62)、食品/環境由来検体からが3.2%(n=164)および両方からが0.2%(n=11)であった。PHSおよびNVWA両方への報告では、同様にそれぞれ41.2%(n=96)、8.6%(n=20)および23.6%(n=55)であった。PHSのみに報告されたアウトブレイクのうち9件(3.1%)およびPHSおよびNVWA両方に報告されたアウトブレイクのうち14件(6.0%)で、強固な疫学的エビデンスが得られた。食品由来検体が病原体陽性となったアウトブレイクは、PHSのみへの報告で7件(2.4%)、NVWAのみへの報告で89件(1.7%)、およびPHSおよびNVWA両方への報告で33件(14.2%)あった。

 アウトブレイクが多く発生した場所は、報告先別で異なっていた。PHSのみに報告されたアウトブレイク(n=290)では、一般家庭(n=102、35.2%)、国外(n=70、24.1%)および飲食店/デリ/カフェテリア(n=51、17.6%)の順に多く、NVWAのみへの報告(n=5,134)では、飲食店/デリ/カフェテリア(n=4,181、81.4%)、製造・加工などの施設(plant/facility)(n=370、7.2%)および一般家庭(n=250、4.9%)の順、両方への報告(n=233)では、飲食店/デリ/カフェテリア(n=2、48.1%)【編者注:n=233の48.1%はn=112であり、誤記載と思われる】、ケータリング(n=37、15.9%)、および製造・加工などの施設(n=30、12.9%)の順であった。


○ 病原体

 アウトブレイク5,657件のうち666件(11.8%)で、食品・環境・患者由来の検体から病原体が検出された(表1)。このうち食品から検出されたのは152件(22.8%)であり、残り514件(77.2%)での病原体の検出は患者由来検体、環境スワブ検体からのみであった。アウトブレイク1件あたりの平均患者数は、病原体が食品から検出されたアウトブレイクでは23.4人(範囲:2〜1,149)、環境スワブ検体から検出されたアウトブレイクでは22.5人(範囲:2〜150)、患者由来検体では8.0人(範囲:1〜195)、および病原体が特定されなかったアウトブレイクでは3.6人(範囲:2〜160)であった。

表1:食品由来アウトブレイク(n=5,657)および関連患者(n=27,711)の病原体別・陽性確認状況別の件数(人数)と割合(オランダ、2006〜2019年)

GI:遺伝子群I
GII:遺伝子群II
NA:非適用(not applicable)
other:原因食品不明、または環境スワブ検体陽性・患者由来検体陽性で病原体確定
STEC:志賀毒素産生性大腸菌
a:「その他の病原体」:原因食品から検出された腸炎ビブリオ(アウトブレイク1件)、および食品以外から検出されたエルシニア・エンテロコリチカ(2件)、ロタウイルス(1件、環境スワブ検体陽性)、ジアルジア(2件)、条虫(1件)
b:病原体が原因食品から検出されたアウトブレイク5件、および食品以外から検出されたアウトブレイク4件で、2種類の病原体が検出された。
原因食品から検出された5件:セレウス菌(Bacillus cereus)とウェルシュ菌(Clostridium perfringens)(2件)、セレウス菌と黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(2件)、およびセレウス菌とサルモネラ(Salmonella Enteritidis)(1件)
食品以外から検出された4件:カンピロバクター(Campylobacter jejuni)とノロウイルス、C. jejuniとSTEC、S. TyphimuriumとSTEC、Dientamoeba fragilisとブラストシスチス・ホミニス(Blastocystis hominis)
c:国際的なアウトブレイクに含まれるオランダの患者1人


 アウトブレイク件数と関連患者数が最も多かった病原体はノロウイルスで、サルモネラ属菌、カンピロバクター属菌がこれに続いた(図2)。アウトブレイク1件あたりの平均患者数は、ノロウイルス(22人/件)およびサルモネラ属菌(18人/件)に比べてカンピロバクター属菌(4人/件)では少なかった。最大規模のアウトブレイク3件は、すべてサルモネラが原因であった。これら3件は、2012年にスモークサーモンの喫食により患者1,149人が発生したS. Thompson感染アウトブレイク、2006年にチーズの喫食により患者224人が発生したS. Typhimurium感染アウトブレイク、および2008年に患者195人が発生したS. Enteritidis感染アウトブレイクであった。この2008年のアウトブレイクは卵が原因食品である可能性が高かったが確定には至らなかった。サルモネラ感染アウトブレイクは近年少なくなっており、2006〜2012年は1年あたり15〜22件であったのに比べ、2013年は4件、2014〜2019年は6〜15件であった。カンピロバクター症アウトブレイクは、2006〜2013年に比べると2014年以降は少なくなっている。ノロウイルス感染アウトブレイクは2012年から増加しており、主に環境スワブ検体で検出されている。

図2:カンピロバクター属菌(150件)、サルモネラ属菌(188件)およびノロウイルス(205件)による食品由来感染アウトブレイクの年別の件数および患者数(オランダ、2006〜2019年)

濃青色バー:食品由来検体で確認
水色バー:患者由来検体のみで確認
黄色バー:環境スワブ検体で確認


 セレウス菌、ウェルシュ菌および黄色ブドウ球菌は患者で確認されることは稀で、ほとんどが食品から検出される。原因食品が特定されたアウトブレイクで多く検出された病原体はセレウス菌、サルモネラ属菌、ノロウイルスの順であった(表1)。


○ アウトブレイクの発生場所

 食品由来アウトブレイクの発生場所は、病原体未確定のアウトブレイクでは飲食店/デリ/カフェテリアが81.1%(4,991件中4,046件)で最も多く、製造・加工などの施設(7.2%)、一般家庭(5.0%)がこれに続いた(表2)。原因食品が特定された食品由来アウトブレイクでは、飲食店/デリ/カフェテリア(59.2%)、製造・加工などの施設(17.1%)、一般家庭(6.6%)の順に多かった。環境スワブ検体が陽性であったアウトブレイクでは、飲食店/デリ/カフェテリア(64.8%)、ケータリング(17.2%)、公共施設(6.3%)の順であった。患者由来検体で病原体が確定したアウトブレイクでは、飲食店/デリ/カフェテリアが32.4%、一般家庭が27.5%、国外が17.6%であった。

表2:食品の調理・提供などが行われた場所別および病原体の確定状況別の食品由来アウトブレイクの件数と割合(オランダ、2006〜2019年(n=5,657))


○ 食品

 原因食品が確定したアウトブレイク152件において食品165品目が陽性であった。このうち、アウトブレイク7件で食品2品目に陽性が見られ、3件で3品目に陽性が見られた。これら計10件のうち、9件はセレウス菌・ウェルシュ菌・黄色ブドウ球菌の組み合わせが検出され、残り1件は家禽肉からのS. Enteritidisと複合食品からのセレウス菌であった。また、セレウス菌と黄色ブドウ球菌の両方に陽性であった食品が2品目(複合食品)あった。

 全体で、最も多かった汚染食品は赤肉(n=31)と複合食品(n=30)であった(表3)。複合食品、シリアル/パスタ/米、および赤肉によるアウトブレイクで、セレウス菌、ウェルシュ菌および黄色ブドウ球菌が高頻度に検出された。その他に病原体と食品の組み合わせで多かったのは、カンピロバクターと乳製品、サルモネラと赤肉、S. Enteritidisと卵、A型肝炎ウイルスと果物/野菜、ノロウイルスと貝類、サバ毒と魚(アウトブレイク11件のうち10件がマグロ)であった。

表3:原因食品が確定したアウトブレイクにおける病原体別の汚染食品の数(オランダ、2006〜2019年(n=165))

GI:遺伝子群I
GII:遺伝子群II
STEC:志賀毒素産生性大腸菌
a:赤肉は牛肉、豚肉
b:複合食品は、野菜、食肉、米など複数の材料が混合で使用された食品
c:このうちアウトブレイク7件では食品2品目が陽性、3件では3品目が陽性


結論

 長期間にわたるアウトブレイク調査の結果解析により、食品由来アウトブレイクが持続的に発生していることが確認される。食品由来疾患は様々な食品および病原体が原因となって発生し、多くのアウトブレイクで病原体が不明であることから、その管理と根絶が困難になっている。



国立医薬品食品衛生研究所安全情報部