欧州疾病予防管理センター(ECDC)・欧州食品安全機関(EFSA)からのノロウイルス関連情報
https://www.ecdc.europa.eu/en
https://www.efsa.europa.eu/en


欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症に関するOne Healthの観点からの報告書(2020年)
The European Union One Health 2020 Zoonoses Report
EFSA Journal 2021;19(12):6971
13 December 2021
https://www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/documents/j-efsa-2021-6971.pdf (ECDC報告書PDF)
https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/european-union-one-health-2020-zoonoses-report (ECDCサイト)
https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.2903/j.efsa.2021.6971 (EFSA報告書PDF)
https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/6971 (EFSAサイト)

(食品安全情報2022年7号(2022/03/30)収載)


要旨

 欧州食品安全機関(EFSA)および欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、欧州連合(EU)加盟27カ国および非加盟9カ国が2020年に実施した人獣共通感染症モニタリングの結果をまとめた報告書を発表した。本報告書では、ヒト、食品、動物および飼料における人獣共通感染症とその病原体に関する主要な統計値が示され、過去と比較した考察が行われている。2020年の加盟国のデータ収集およびそれに関連した統計値には、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック」と「英国のEU離脱」という2つの出来事が影響を及ぼしている。2020年は、ヒトの人獣共通感染症ではカンピロバクター症が最も多く報告され、サルモネラ症が2番目に多かった。EU域内での両疾患の確定患者の傾向は、2016〜2020年の期間にはほとんど変化が見られなかった。家禽類のサルモネラ対策プログラムに関するデータを報告しているEU加盟26カ国のうち14カ国は、2020年にすべての家禽類についてサルモネラ汚染の低減目標を達成した。食品規制当局が様々な家禽類のとたいで実施したサルモネラ検査の結果は、食品事業者による自主検査の結果より陽性率が高かった。この傾向は、ブロイラーとたいにおけるカンピロバクター検査結果についても、食品規制当局および食品事業者の双方からの検査データを提出した加盟国グループでは同様に見られたが、EU全体ではどちらの陽性率も同レベルであった。2020年に報告患者数が3番目に多かった人獣共通感染症は、患者数がサルモネラ症の10分の1程度であったエルシニア症で、4番目は志賀毒素産生性大腸菌(STEC)感染症、5番目はリステリア(Listeria monocytogenes)感染症であった。L. monocytogenesおよびウエストナイルウイルスによる感染症は致死率が最も高く、最も重症度の高い人獣共通感染症であった。2020年は、食品由来アウトブレイクがEU加盟27カ国から計3,086件(2019年から47.0%減少)報告され、これらに関連した報告患者数は20,017人(同61.3%減少)であった。これらの食品由来アウトブレイクで最も多く報告された病因物質は引き続きサルモネラであった。特に懸念すべき「病因物質-食品」の組合せは、「サルモネラ−卵・卵製品」、「ノロウイルス−甲殻類・貝類・軟体動物およびこれらを含有する製品」、および「L. monocytogenes−魚・魚製品」であった。本報告書は、Mycobacterium bovisまたはMycobacterium capraeによる結核、ブルセラ症、トリヒナ症、エキノコックス症、トキソプラズマ症、狂犬病、Q熱、および野兎病に関する最新情報も提供している。

2020年の人獣共通感染症の概要

 本報告書に示された人獣共通感染症の確定患者数のデータが図にまとめられている。2005年以降、カンピロバクター症は毎年最も多く報告されている人獣共通感染症であり、2020年は、人獣共通感染症の全報告患者の60%以上を占めていた。次いで、サルモネラ症、エルシニア症、STEC感染症など、その他の細菌性疾患が高頻度に報告された。報告患者の入院率および転帰にもとづき、各疾患の重症度について記述的な解析が行われた(表)。重症度に関するデータにもとづくと、リステリア症およびウエストナイル熱は致死率および入院率が最も高いことから、重症度が最も高い人獣共通感染症であった。両疾患の確定患者のうち、入院の有無に関する情報が得られた患者はほぼ全員が入院していた。当該情報が得られた確定患者では、リステリア症患者の約7人に1人およびウエストナイル熱患者の約8人に1人が死亡した。

図:欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症確定患者の報告数および人口10万人あたりの報告率(2020年)

注)各棒グラフ右側のカッコ内の数値は確定患者数
a ウエストナイル熱についてはすべての患者(疑い患者および確定患者)の報告数


表:人獣共通感染症確定患者の入院率および致死率(EU、2020年)

NA:当該の情報が収集されなかったことを示す
(a):ウエストナイル熱については非旅行関連のすべての患者(推定患者および確定患者)の報告数
(b):すべてのEU加盟国がすべての人獣共通感染症の入院患者数・死亡者数を報告したわけではない



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部