世界保健機関(WHO)からのノロウイルス関連情報
https://www.who.int/en/


国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)2021年第1四半期報告(2021年1〜3月)
INFOSAN Quarterly Summary, 2021 #1, January - March 2021
https://www.who.int/news/item/21-04-2021-infosan-quarterly-summary-2021-1

(食品安全情報2021年15号(2021/07/21)収載)


食品安全事例

 2021年の第1四半期に国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)事務局が対応した食品安全事例は、世界保健機関(WHO)加盟の延べ67カ国が関連した計56件であった。このうち生物学的ハザード関連の事例は28件で、その内訳はリステリア(Listeria monocytogenes)が10件*、サルモネラ属菌が9件、大腸菌が4件*、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)およびノロウイルスが各2件、A型肝炎ウイルスおよびビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)が各1件であった(*L. monocytogenesと大腸菌の各1件は同じ事例)。また、化学的ハザードは10件(ヒスタミンが4件、マラカイトグリーンが2件、エチレンオキシド、ピロリジジンアルカロイド、シアン化水素酸、抽出可能シアン化物が各1件)、非表示のアレルゲン/成分は9件(卵、ピーナッツ、乳が各2件、マスタード、大豆、ラクトースが各1件)、物理的ハザードは7件(ガラスが4件、金属が3件)、およびハザードが特定されなかった事例が2件であった。

 2021年の第1四半期のこれら56件の事例に関連した食品カテゴリーは、魚・水産食品(15件)が最も多く、次いで乳・乳製品(9)、ハーブ・香辛料・調味料(5)、食肉・食肉製品(4)、スナック・デザート・その他の食品(4)、食品添加物(3)、果物・果物製品(3)、ナッツ・油糧種子(3)、野菜・野菜加工品(3)、飲料水(2)、砂糖・菓子(2)、アルコール飲料(1)、果物・野菜ジュース(1)、澱粉質根茎類(1)であった。

 INFOSAN事務局は、このような国際的な食品安全事例が発生した際の情報収集において、各国のINFOSAN緊急連絡窓口(ECP:Emergency Contact Point)による迅速な対応に依存している。INFOSANを介した迅速な情報共有により、加盟各国は自国での患者発生を防止するための適切なリスク管理対策を実施することが可能となる。

 全体としては、今四半期に対応した56件の食品安全事例は2020年以前のいずれの四半期の件数をも上回っている。このように活動が活発化した要因は複数あると考えられ、非表示のアレルゲン/成分に関連した食品安全問題の報告件数が増加したこと、公衆衛生リスクに対する一般の認識が高まっていること、そして2019年の第2回世界会議にもとづき加盟国とINFOSANとの連携が強化されたことが挙げられる。2020年にINFOSAN事務局は加盟国に対し、多数のオンラインセミナーやワークショップへの参加を促し、ネットワークにおける利用可能なリソースの活用方法を指導した。

 また、INFOSAN事務局の能力が向上したことで、より広範な食品安全事例に、より効率的に対応できるようになり、加盟国からの要望や要請に対する事務局の的確な対応に結び付いている。


地理的状況

 上記56件の食品安全事例にはWHOが区分しているすべての地域の延べ67加盟国が関連し、地域別の内訳は、多い順に、欧州(45カ国)、西太平洋(19)、米州(18)、アフリカ(9)、東地中海(7)、南東アジア(6)であった。

〇 2021年第1四半期に発生したリステリア(Listeria monocytogenes)による食品汚染事例

 2021年第1四半期にINFOSAN事務局は、リステリア(Listeria monocytogenes)汚染に関連した10件の食品安全事例の報告を受けた。これは、今四半期に報告された全ての食品安全事例の17%に相当する。このリステリア汚染の事例に関連した食品カテゴリーは、主に乳・乳製品(7件)、次いで食肉・食肉製品(2)および魚・水産食品(1)であった。これらの製品はWHOが区分しているすべての地域の加盟国に出荷されており、出荷先の地域別内訳は、欧州(9カ国)、西太平洋(6)、米州(4)、東地中海(2)、アフリカ(1)および南東アジア(1)であった。これらの事例の70%は「食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF)」を介して報告され、また残りの30%はINFOSANのメンバーによって事務局に報告された。INFOSANの事務局およびRASFFのプラットフォームを介した情報共有により、加盟国はリスク管理対策として関連製品の一部を回収することが可能になった。

 最終的な結論ではないが、リステリア汚染の事例の増加は、INFOSAN事務局への食品安全事例報告が過去数四半期にわたり持続的に増加していることを表している。


2021年第2四半期の活動予定

〇 世界食品安全デー(WFSD:World Food Safety Day)

INFOSANの事務局および一部のメンバーは国連食糧農業機関(FAO)と協力し、第3回世界食品安全デー(WFSD)のキャンペーンを立ち上げるためのライブ配信の準備を行った。このライブ配信のニュース放送では、2021年のテーマである「健康的な明日のために、今、安全な食品を(Safe food now for a healthy tomorrow)」が発表され、FAO、WHO、コーデックス委員会(CAC:Codex Alimentarius Commission)の事務局、および世界各国からの出演者による食品安全のための活動が紹介された。第3回WFSDは2021年6月7日に開催予定で、食品安全はなぜ全ての人が関わるべき問題であるのかという点に注目して議論が行われる。キャンペーン立ち上げのライブ配信は、WFSDの以下の公式Webページで視聴可能である。
http://www.fao.org/fao-who-codexalimentarius/world-food-safety-day/en/

 INFOSAN事務局はまた、第3回WFSDの準備として、INFOSANメンバーのため複数のオンラインセミナーの事前開催も企画している。これらのオンラインセミナーでは、第1〜2回WFSDに関連して各国レベルで推進された活動による知見および効果について、メンバーが報告を行う予定である。

 INFOSAN事務局は、WFSDの自国内での広報活動に役立てるためWFSDの以下の公式Webページに定期的にアクセスしてガイダンスを入手するよう呼びかけている。
http://www.fao.org/fao-who-codexalimentarius/world-food-safety-day/en/



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部