(食品安全情報2021年7号(2021/03/31)収載)
オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)は、14種類の胃腸疾患病原体による罹患数および死亡者数を毎年調査している。疾患実被害は障害調整生存年(DALYs:Disability Adjusted Life Years)によって表される。DALYsは疾患による病的状態または疾患による早期死亡で失われる健康な生存年数を示す国際的な尺度である。
調査対象の14種類の病原体は、食品を介して(感染の約40%)のみでなく、環境(地表水など)、動物およびヒトを介しても体内に侵入する。感染経路別の割合は、病原体によって異なる。14種類の病原体による2019年のDALYsの合計は、2018年および2017年と同程度であった(11,000 DALYs)。食品由来感染による2019年の実被害は4,200 DALYsと推定され、2018年(4,300 DALYs)よりやや減少した。
疾患実被害の総費用(COI:cost-of-illness)は4億2,300万ユーロと推定され、2018年(4億2,600万ユーロ)より減少した。疾病費用には、直接医療費、患者とその家族が負担する経費(交通費など)、欠勤による経済的損失などが含まれている。
食品由来感染による2019年のCOIは1億7,400万ユーロで、2018年(1億7,100万ユーロ)からやや増加した。DALYsおよびCOIの2019年と2018年の違いは、一部の病原体による感染患者数の変動が主な原因である。ノロウイルス、ロタウイルス、クリプトスポリジウム属菌およびカンピロバクター属菌での変動が特に大きい。
RIVMは、オランダ保健・福祉・スポーツ省(VWS)の委託を受けてこの調査を行っている。この調査の結果により、オランダの食品由来疾患による実被害および曝露経路に関する理解が深まり、経年動向が把握できる。