ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)からのノロウイルス関連情報
https://www.bfr.bund.de/


下痢や黄疸の原因となるウイルス感染から身を守るために
Keep diarrhoea and jaundice at bay
05.06.2020
https://www.bfr.bund.de/en/press_information/2020/20/keep_diarrhoea_and_jaundice_at_bay-247300.html

(食品安全情報2020年17号(2020/08/19)収載)


 “ウイルス”と聞くと、最近はほとんどの人がコロナウイルスを思い浮かべる。しかし、新型コロナウイルスが食品を介して伝播する可能性は考えにくく、現時点では証明されていない。その一方で、食品は疾患の原因となるその他のウイルスに汚染されている可能性がある。食品中に潜むこのような病原性ウイルスでは、ノロウイルス、ロタウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスの4種類が主要なものとして挙げられる。2020年6月7日の世界食品安全デーに際し、ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は、これらの病原性ウイルスから身を守る方法を消費者に紹介する。BfRのHensel所長は、台所での簡単な衛生規範を守ることで感染リスクをかなり低減できると述べている。

 食品中に最も一般的に見られるこれら4種類のウイルスの概要は以下の通りである。

・ノロウイルス

 ノロウイルスは、ヒトの胃腸疾患の原因となり、下痢や嘔吐の症状を伴う可能性がある。ヒトからヒトへの直接感染や汚染表面を介した伝播に加え、レタス、果物、水産食品などの生の食品を介してヒトへの感染が広がることが多い。ノロウイルスは低温による影響を受けないため、冷凍ベリー中にも生残している可能性がある。2019年にロベルト・コッホ研究所(RKI)に報告されたドイツのノロウイルス感染患者数(食品由来感染を含む)は、計78,679人であった。

・ロタウイルス

 ロタウイルスもヒトの胃腸疾患の原因となり、下痢、嘔吐および腹痛の症状を引き起こす。低年齢小児では特にリスクが懸念される。食品を介してヒトに伝播することもまれにある。2019年にRKIに報告されたロタウイルス感染患者数は計36,876人であった。

・A型肝炎ウイルス

 A型肝炎ウイルスはヒトの急性肝炎(感染性黄疸)の原因となり得る。A型肝炎ウイルス感染は国外旅行時の汚染食品や飲用水の喫食・喫飲により最も多く発生するが、輸入食品を介して感染が起こる場合もある。2019年にRKIに報告されたA型肝炎患者数は計873人であった。

・E型肝炎ウイルス

 E型肝炎ウイルス感染の症状は、A型肝炎ウイルス感染と類似した肝臓の炎症である。家畜のブタおよびイノシシ由来の加熱不十分な食品を介して伝播することが多い。これらの動物はE型肝炎ウイルスに感染している場合でも症状がみられないことがある。その場合、動物由来食品のE型肝炎ウイルス汚染は通常は食品表面ではなく既に内部に存在している。2019年にRKIに報告されたE型肝炎患者数は計3,725人であった。


 ほとんどの食品由来病原体は熱に感受性であるため、食品は70℃以上で2分以上加熱すべきである。冷凍ベリー類も喫食前に十分に加熱することが望ましい。サラダや果物など生で喫食する食品は十分に洗浄すべきである。病原体の交差汚染を防ぐため、生の食品(生肉など)とready-to-eat(そのまま喫食可能な)食品(レタスなど)との接触は避けるべきである。

 ドイツでは、2019年末に、新たに食品由来ウイルスのための国立リファレンス検査機関がBfRに設立された。食品由来ウイルスは通常は検出が難しいが、この新しい検査機関では、これらのウイルスの研究や検出を行い、各州の食品規制当局に助言を行っている。



国立医薬品食品衛生研究所安全情報部