ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)からのノロウイルス関連情報
https://www.bfr.bund.de/


食品中のウイルスおよび抗菌剤耐性菌
Caution, tasteless! Viruses and antimicrobially resistant bacteria in foods
06.11.2018
https://www.bfr.bund.de/en/press_information/2018/38/caution__tasteless__viruses_and_antimicrobially_resistant_bacteria_in_foods-207701.html

(食品安全情報2019年2号(2019/01/23)収載)


 ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は、「食品関連のウイルス」(2018年11月7日)および「フードチェーンにおける抗菌剤耐性菌」(11月8〜9日)に関する2件のシンポジウムを主催した。

食品関連のウイルス

 ウイルスによる食品由来疾患患者数の増加が続いている。このような疾患の例としてはE型肝炎が挙げられ、ウイルスに感染した飼育ブタおよび野生ブタから製造された食品を介して伝播する。食品由来のノロウイルスおよびA型肝炎ウイルスの患者数も増加している。このようなウイルスの重要性の増加に対応するため、食品由来ウイルスに関する欧州リファレンス検査機関が設立された。食品中のウイルスの検出方法については近年大幅に進歩しているが、これらのウイルスの感染経路およびその伝播の防止策についてはさらなる包括的な研究が必要である。

フードチェーンにおける抗菌剤耐性菌

 近年、ドイツでは畜産における抗生物質の使用量が激減している。獣医師に販売された抗菌性動物用医薬品の量が2011年から記録されている。抗菌性動物用医薬品の販売量は2011年には1,706トンであったが、2017年には食肉生産量が増加したにもかかわらず約733トンと57%減少した。また、BfRのVetCAb(獣医学分野での抗生物質の使用)調査プログラムによると、ドイツ国内で家畜の治療に抗生物質を使用する頻度が低下している。

 同期間に、フードチェーンにおいて複数種類の細菌に抗菌剤耐性率の低下が見られる。鶏肉および七面鳥肉生産に関連した大腸菌汚染について2009〜2016年に行われた調査で、試験を行った抗生物質の大部分に対し、これらの大腸菌の耐性率は顕著に低下した。特に、家畜に対して高頻度にまたは大量に投与される抗菌剤については、使用量および大腸菌の耐性率のいずれにも低下傾向がみられる。しかし、この調査によると鶏肉および七面鳥肉の生産チェーンにおいて耐性率はまだ高く、このことは、ヒトでの耐性菌および耐性遺伝子の由来としてこれらの家禽肉が非常に重要であることを意味している。

 フルオロキノロン系抗菌剤については、全く問題がないわけではない。一部の種類の細菌では、フルオロキノロン系抗菌剤への耐性率が上昇している。治療で使用される頻度に明らかな上昇傾向はみられないが、研究者らは今後の動向を注視することを推奨している。

 最終選択薬と呼ばれる抗菌剤への耐性は医療にとって特に問題である。これらは、ヒトの医療で他の抗生物質による効果がみられない場合に使用される。最終選択薬の重要な代表例は、ポリペプチド性抗生物質のコリスチンである。他の抗菌剤への耐性率が上昇していることから、コリスチンは世界保健機関(WHO)によって格別に重要な抗菌剤と位置付けられている。しかし、現時点で、コリスチンは畜産において最も頻繁に使用される抗生物質の1つである。コリスチンの重要性に鑑み、その耐性の拡散を防止するために世界各国が連携して対策を講じる必要がある。耐性の拡散防止には、この種の抗菌剤の限定的な使用が今後不可欠である。

 近年、世界各国の当局が抗菌剤耐性の拡散を防止する対策を実施している。WHOは「抗菌剤耐性に関する世界行動計画(Global Action Plan on Antimicrobial Resistance)」を開始し、ドイツ連邦政府当局は「ドイツ抗菌剤耐性戦略(DART 2020:German Antimicrobial Resistance Strategy)」の制定により、抗菌剤耐性を低減させる方策を示した。たとえば、家畜の肥育における抗菌性動物用医薬品の妥当な使用を目指し、「ドイツ薬品法2014年4月(German Drug Law of April 2014)」の第16回改定を行ったことが挙げられる。同業他社に比べより多くの抗菌性動物用医薬品を使用している業者は、使用量を減らすための計画書を作成して対策を実施することが義務付けられている。



国立医薬品食品衛生研究所安全情報部