(食品安全情報2017年5号(2017/03/01)収載)
2017年のEPI-NEWS第1号(EPI-NEWS No 1-2 - 2017)には、例年と同じく、感染症およびワクチンに関する前年の重要な事例が記載されている。以下に抗微生物剤耐性および食品由来アウトブレイクに関する部分を紹介する。
抗微生物剤耐性
過去20年間、デンマークでは抗微生物剤の使用量および動物・ヒト・食品における抗微生物剤耐性の出現に関するモニタリングが行われており、これは抗微生物剤耐性対策のための科学的基礎となっている。デンマーク工科大学の食品研究所(DTU Food)と獣医学研究所(DTU Vet)およびデンマーク国立血清学研究所(SSI)が主体となって、「デンマーク抗微生物剤耐性モニタリングおよびリサーチプログラム(DANMAP: Danish Integrated Antimicrobial Resistance Monitoring and Research Programme)」を担っている。DANMAPはこの種のプログラムとしては世界で最初のものであり、先行例として国外で頻繁に紹介されている。
欧州諸国間の大規模な協力により、欧州でのカルバペネマーゼ産生性腸内細菌(CPE)の流行について初めて詳細な全体像が得られた。CPEの増加は、耐性菌の出現に関するいくつかの懸念すべき動向のうちの1つである。
グラム陰性桿菌は感染症を引き起こすことが多いため、その多剤耐性は特に懸念すべき事項である。カルバペネマーゼ産生菌による感染症の場合、一般的な抗生物質による治療は極めて困難である。
バンコマイシン耐性腸球菌は検出事例が大幅に増加しており、特にデンマーク首都地域の病院でアウトブレイクを引き起こしたことから、もう1つの重要な課題となっている。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は感染患者の増加傾向が続いている。これには、市中感染の患者の他に国外旅行関連の患者も含まれている。家畜関連のMRSA新規患者数は、2014年のピーク以降増加していない。病院でのMRSA感染は依然として極めて少なく、デンマーク保健当局のMRSA行動計画はその主な目的を果たしていると言える(EPI-NEWS 23/16、http://www.ssi.dk/English/News/EPI-NEWS/2016/No%2023%20-%202016.aspx)。
食品由来アウトブレイクおよびSSIによる実地疫学
SSIが行っている重要な活動の1つは食品由来アウトブレイクの調査である。これには、微生物学および疫学の知識と経験が必要である。SSIはハイレベルなアウトブレイク調査体制を整えて様々な事例に対処しており、大規模な調査を毎年約20件行っている。
2016年にメディアの大きな注目を集めたアウトブレイクは4月のある1週間に発生したノロウイルス感染アウトブレイクで、相互に関連のある23件のアウトブレイクを含み、少なくとも計412人の患者が発生した。このアウトブレイクは、デンマーク獣医食品局(DVFA)およびDTU FoodとSSIとの機関間協力のもとに調査が行われた。この協力関係は何年も前から実施されており、デンマーク独自のものである。感染源はフランスから輸入されたグリーンレタスであった。このアウトブレイク調査では種々の調査ツールが使用された。特にウイルスのサブタイピングにより異なる地域の患者を関連付けることができ、サラダが感染源であることが特定できた(EPI-NEWS 20/16、http://www.ssi.dk/English/News/EPI-NEWS/2016/No%2020%20-%202016.aspx、食品安全情報(微生物)No.12 / 2016 (2016.06.08)にて紹介)。