(食品安全情報2017年2号(2017/01/18)収載)
ノロウイルスは約6年ごとにその活動が活発になり、大流行年には届出患者およびアウトブレイクの報告数が著しく増加する(特に病院および居住型の介護施設から)。直近の世界的大流行は2012年に発生し、オーストラリアのシドニーから始まった。その原因株(Sydney 2012株)はノロウイルス遺伝子群IIに属している。この遺伝子群は2002年以降アイルランドおよび全世界で検出されている優勢な群である。
2016年9月、ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)の研究者らは新しい3種類のノロウイルス株としてKawasaki 308、New Orleans 2009/Sydney 2012およびGII.P16/Sydney 2012株を確認した。後者2株はSydney 2012株に由来し、3株ともオーストラリアで冬季に広範に発生した患者の原因株であった。これらの新しい株の出現が、現在アイルランドで報告されているノロウイルス患者増加の原因である。これらの大流行の背景には、ノロウイルスに対する集団免疫のレベルの問題がある。ノロウイルスに対する免疫は不完全かつ一時的で、持続期間は数カ月にすぎない。一時的な免疫とゆっくりしたウイルス変異が重なることにより、ノロウイルスの活動は上昇と下降を繰り返すという疫学的特徴がある。
2016年12月19日までの5週間に、アイルランド保健サーベイランスセンター(HPSC Ireland)に報告されるノロウイルス感染の週間患者数は3倍になった(29人から97人に)。このノロウイルス活動の上昇は欧州および北米で観察されており、広範囲にわたり大流行する時期に入りつつあることを示すさらなる裏付けとなっている。
過去の例では、今回のような大流行が年末の数週間内に始まった場合、それらは8〜12週間続くのが一般的である。したがって、ノロウイルスの活動が上昇した今回の状況は、少なくとも2017年2月末頃まで続くと考えられる。