(食品安全情報2017年19号(2017/09/13)収載)
食品由来疾患のサーベイランス、予防策および制御対策の優先順位を決定するには、年間の食中毒患者数・入院患者数・死亡者数の推定が必要である。本研究の目的は、2008〜2013年のフランスにおけるこれらの推定値を得ることであった。主要な15種類の食品由来病原体(細菌10種類、ウイルス3種類、寄生虫2種類)について検討したところ、これらの病原体による年間の食中毒患者数は128万〜223万人、入院患者数は16,500〜20,800人、死亡者数は250人と推定された。食中毒患者数および入院患者数の70%以上は、カンピロバクター属菌、非チフス性サルモネラ属菌およびノロウイルスによるものであった。非チフス性サルモネラ属菌およびリステリア(Listeria monocytogenes)が食中毒関連死亡の主要な原因であった。E型肝炎ウイルスは、フランスで毎年約68,000人の患者の原因になっていると推定され、これまであまり認識されていなかった食中毒病原体であることが示唆された。フランスでの食品由来疾患の年間患者数・入院患者数・死亡者数はかなりの数に上ることから、食品安全政策の立案者は食品由来疾患の予防および制御対策の優先順位を決定する必要がある。