(食品安全情報2016年12号(2016/06/08)収載)
2016年4月はじめに胃腸感染症のアウトブレイクが複数報告され、地域食品管理事務所は、疑いのある共通の感染源として直ちにLollo Biondaレタス(コーラルレタス)を特定した。デンマーク獣医食品局(DVFA: Danish Veterinary and Food Administration)は、これらのアウトブレイクは相互に関連しているか、病因物質は何か、およびレタスが本当にこれらすべてのアウトブレイクの共通の感染源なのかを解明するため、デンマーク国立血清学研究所(SSI)およびデンマーク工科大学食品研究所(DTU Food)と協力して包括的な調査を開始した。
計23件のアウトブレイクを対象に、客室乗務員やレストランの客などのさまざまなグループの計1,497人について調査が行われた。これらの人のうち412人(28%)が嘔吐・下痢またはそのいずれかの症状を呈していた。2件のアウトブレイクについて実施された疫学コホート研究により、Lollo Biondaレタスを使用した料理が原因食品として示唆された。この結果は、他の患者グループもすべて同種のレタスを喫食していたという調査結果により裏付けられた。いくつかのアウトブレイクでのレタスの追跡調査から、問題のレタスは1業者が販売したフランス産Lollo Biondaレタスであることが明らかになった。当該レタスは1卸売業者が主にレストランや仕出し業者に販売したもので、この卸売業者は2016年4月7日にレタスを市場から自主的に撤去した。
患者の症状からノロウイルス感染が示唆され、患者28人の検体から遺伝子型I(GI)のノロウイルスが検出されたことからノロウイルス感染が確定した。さらに9つの患者グループの計22人に由来するウイルスについてタイピングを実施した結果、これらすべてが同じサブタイプ(GI.P2-GI.2)のノロウイルスであることが示され、原因食品が共通であるという仮説が裏付けられた。検査のための便検体を確保するため、DVFAおよびSSIは全グループの有症患者に検体容器および料金前納の返信用封筒を直接手渡した。検体はSSIに送付された後、ウイルスおよび細菌の検査が行われ、また、異なる地域由来の検体の相互比較および相互関連の特定ができるようサブタイピングが行われた。これと同時に数件のアウトブレイク調査で採取されたレタス検体についてDTU Foodによる検査が行われ、レタス1玉から患者由来と同じ遺伝子型のノロウイルスが少量検出された。
解説
本件におけるレタス汚染の原因はまだ特定されていない。フランス産Lollo Biondaレタスを原因とする一連のアウトブレイクは本件が2件目であり、1件目は2010年に発生した(EPI-NEWS、 No.5 - 2010、http://www.ssi.dk/English/News/EPI-NEWS/2010/No%205%20-%202010.aspx)。デンマークのノロウイルスアウトブレイクの調査で様々なサブクラスター由来の臨床検体が非常に多数提出されたのは本件が初めてであった。初診時から積極的に検体容器を患者に配布し、広範な病原体の検査やサブタイピングのための検体採取を全国レベルで実施したことが、本件の全体像の時宜を得た把握や個々のアウトブレイクを越えた患者間の相互関連の特定に役立った。本アウトブレイクは、仕出し業者に販売された汚染レタスが限られた期間内に多数の感染者を発生させる高い可能性を有していたこと、従って、迅速な調査、患者検体および食品の適時のサンプリング、感染源に関する疑いのみにもとづいた食品業者による自主的な製品撤去などが重要であることを明確に示している。
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25 May 2016
http://www.ssi.dk/English/News/News/2016/2016%20-%2005%20-%20EPI-NEWS%2020%20Norovirus.aspx