(食品安全情報2016年8号(2016/04/13)収載)
欧州連合(EU)規則には、クラスBおよびCの採捕水域由来の未清浄の活二枚貝に対して、病原微生物を死滅させるために規定の熱処理が実施されなければならないことが定められている。貝肉内部が90℃以上になるように加熱し、これを少なくとも90秒持続するという方法が認可されているが、今回、これに代わる温度と時間の条件が検討された。二枚貝に関連する最も重要なウイルス性ハザードとして、ノロウイルス(NoV)およびA型肝炎ウイルス(HAV)が特定された。90℃・90秒の熱処理と等価の(同等のウイルス減少効果が得られる)温度−時間の組合せを特定するため、HAVの熱不活化モデルが作成された。このモデルは二枚貝中のHAVの定温熱処理による不活化のデータにもとづいており、Z値は27.5℃と推定された。丸ごとの二枚貝中のウイルスの不活化の評価では、観察されたHAVの不活化は、モデルから予測される以上におおむね高レベルであることが示された。試験に使用された条件および媒体のもとでは、HAVはNoVの代替ウイルスより概して耐熱性が高いことがわかった。このモデルにより、加熱時間および冷却時間がウイルス不活化に及ぼす影響を考慮しない場合に90℃・90秒の熱処理と等価と考えられる代替の熱処理法が示された。実際の工場レベルの熱処理工程では、最終製品の安全性を高めると考えられる加熱時間および冷却時間が存在し、工程デザインに応じてHAV減少効果に違いが生じる可能性がある。このことは、工程全体についての達成基準(Performance Criterion: PC)の設定が必要であることを示している。達成基準は、熱処理によりウイルスをどの程度低減させなくてはならないかをlogスケールで表したものである。リスク評価モデルが作成され、ケーススタディによりPCと二枚貝の喫食によるHAV感染リスクとの関係が明らかにされた。リスク管理者が設定する「適切な衛生健康保護レベル(Appropriate Level of Protection: ALOP)」はPCおよび工程基準(Process Criterion: PrC)に置き換えることができる。非定温での熱処理も考慮することから、現在用いられている温度−時間の組合せによる条件設定より、F値(リファレンス温度での想定上の定温熱処理で基準達成に必要とされる時間)として表されるPrCの方が適切であることが明らかである。
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二枚貝の熱処理に関してEFSAが見解を発表
EFSA advises on heat treatment of bivalve molluscs
14 December 2015
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/151214