(食品安全情報2015年13号(2015/06/24)収載)
英国食品基準庁(UK FSA)は食品関連インシデントに関する2014年次報告書を発表した。本報告書によると、2014年には計1,645件の食品、飼料および環境汚染インシデントの届け出がFSAにあった。2014年の届出件数は全体としては最近の数年間と同等レベルであったが、カテゴリー別ではそのほとんどで年ごとに件数が大きく異なっていた。
2014年に届出件数が最も多かった4つのカテゴリーは、微生物学的汚染(24%)、残留動物用医薬品(13%)、環境汚染(12%)、および天然化学物質汚染(9%)であった。
2014年次報告書から、微生物学的汚染インシデントを中心に一部を以下に紹介する。
インシデントの総件数
2014年にFSAに届け出があり、その後FSAが調査を行った食品関連インシデントの総件数(1,645件)は過去3年間と同等レベルであった。インシデント総件数は過去9年間で見ると増加しており、2014年の総件数は2006年より301件多かった(図1)。
図1:英国食品基準庁(UK FSA)に届け出があった食品関連インシデントの総件数(2006〜2014年)
届出件数が最も多かった食品関連インシデントは微生物学的汚染インシデントで、2014年に届け出があったすべての食品関連インシデントの24%がこのカテゴリーであった。このカテゴリーの届出件数は、2、3番目に多かった残留動物用医薬品および環境汚染のカテゴリーを合わせた件数とほぼ等しかった。
微生物学的汚染インシデント
主なカテゴリーのうちで微生物学的汚染のカテゴリーのみインシデントの年間届出件数が毎年徐々に増加している。本カテゴリーのインシデント件数は2006〜2014年に2倍以上に増加した(147件から390件へ)。しかし図2に示すように、最も多く見られる微生物種の間で、インシデント届出件数の経年動向は相互に大きく異なっていた。
図2:微生物学的汚染インシデントの微生物種ごとの件数(英国、2006〜2014年)
大腸菌汚染に関連したインシデントの届出件数が最近急増している。これは、貝類の採捕水域のモニタリング結果に関連した届け出が増加しているためである。採捕水域の貧弱な衛生状態の確認のために高菌量での大腸菌汚染が指標として用いられている。
2014年は、貝類の採捕水域のモニタリングに関連した大腸菌汚染のインシデントが123件報告された。この件数は2012年および2013年の件数の2倍以上である。この増加は、届け出指針やモニタリング方法の変更によるものではなく、気候変動などの自然要因を反映していると考えられる。2014年は、採捕水域のモニタリングと関係のない大腸菌汚染インシデントも、年間件数が前年までと比べ約2倍のレベルであった。この増加の明らかな共通の原因は見当たらない。
2013年まで、サルモネラに関連した微生物学的汚染インシデントが、その他の種々の微生物関連のインシデントに比べ、より多く報告されてきた。この期間に報告されたサルモネラ関連インシデントの多くは、主にバングラデシュ産の汚染paan leaves(キンマの葉)に関連していた。paan leavesに関連したインシデントは2010年までは報告がなかったが、2011〜2013年にはサルモネラ関連インシデントの約半数を占めた。しかし、輸入制限が実施されたためか、2014年のpaan leaves関連のインシデントは13件のみであった。その結果、2014年のサルモネラ関連インシデントの総件数は2010年までのレベルに減少した。
大腸菌とサルモネラを除くその他の微生物関連のインシデントも2006年以降、届出件数が増加している。届出件数の2009年までの増加傾向には明確な特定の原因が見つかっていない。一方、2010年に届出件数が最多となったのは、同年1〜4月にノロウイルス汚染関連のインシデントが多かったことが主要な原因として挙げられる。ウイルス関連のインシデントは、通常は年間18件以下であるのに対し、2010年は62件であった。2011年以降は、届出件数に顕著な増加傾向は見られていない。