(食品安全情報2015年7号(2015/04/01)収載)
果物、野菜、シリアル、スパイスなどの非動物性食品は、日常の食生活において重要な役割を果たしている。通常この種の食品は健康的な食生活に関連しており、健康上の懸念は全くないと考えられている。しかし、時にはこのような食品の喫食が中程度から重度の疾患の原因になる場合がある。
欧州食品安全機関(EFSA)は、非動物性食品のリスクについて過去4年間にわたり詳細な検討を行ってきた。EFSAの生物学的ハザードに関する科学パネル(BIOHAZパネル)は、非動物性食品に関する作業部会の協力のもとに、非動物性食品を汚染する可能性がある病原体(病原性細菌、ウイルス、寄生虫)の公衆衛生リスクを評価した。以下は当該作業部会の部会長による本調査の主要な結果についての説明である。
非動物性食品がもたらすリスクにはどのようなものがあるか
個々の食品には広範な種類のハザードが関連している。作業部会は今回、食品と病原体の組み合わせを特定し、そのリスクランク付けを行った。
上位にランク付けされた組み合わせは、サルモネラと生で喫食される葉物野菜、サルモネラと鱗茎菜類、サルモネラとトマト、サルモネラとメロン、病原性大腸菌と生鮮豆・サヤ・穀類であった。
非動物性食品を介して伝播するその他の病原体としては、ノロウイルス、赤痢菌、バチルス、エルシニア、およびA型肝炎ウイルスが挙げられる。
リスクが最も高い食品は何か
生または最小限の加工で喫食する非動物性食品のうち、欧州連合(EU)域内でリスクが最も高いのは、葉物野菜、鱗茎菜類、トマト、メロン、生鮮豆・サヤ・穀類、スプラウトおよびベリー類である。
これらの食品は生から複雑な加工にいたるまで様々な方法で喫食され、通常は毒性化学物質、毒素、病原微生物などの有害物質に汚染されていない。しかし、時としてこれらの食品の喫食は重症の疾患を引き起こし、それらは死に至る場合もある。たとえば、2011年にドイツでスプラウトに関連して志賀毒素産生性大腸菌感染アウトブレイクが発生し、2,300人以上が入院、53人が死亡した。
非動物性食品による疾患の重症度は動物性食品の場合と比較してどうか
2007〜2011年の欧州について、非動物性食品に関連した食品由来疾患アウトブレイクの患者が占める割合を、動物性食品に関連した食品由来疾患アウトブレイクの患者が占める割合と比較した。非動物性食品によるアウトブレイクは、入院患者数や死亡者数の点で、通常は動物性食品の場合より軽症であるとされている。EFSAの調査結果によると、非動物性食品はアウトブレイクの10%、患者の26%、入院患者の35%および死亡者の46%に関連していた。しかし、2011年に発生した1件の大規模な大腸菌感染アウトブレイクを除外すると、非動物性食品が関連したのは食品由来疾患アウトブレイクによる全死亡者の5%であった。
非動物性食品のリスクは近年上昇しているか
調査対象の期間を通して、非動物性食品に関連する報告アウトブレイクの件数、患者数、入院患者数および死亡者数は増加しているが、記録・報告された全アウトブレイクのうち多く(90%)は依然として動物性食品が原因である。
リスクを低下させるために生産者ができることは何か
生産者および加工業者にとって最も重要なことは、適正農業規範、適正衛生規範、適正製造規範、ハサップ(HACCP)などの食品安全システムの実施である。このようなシステムは様々な微生物学的ハザードの管理に適用可能で、農場から食卓までのフードチェーン全体で実施されるべきである。また、各農場には水源への近接状況、農薬の使用など独自の事情があり、このためハザードは農場ごとに評価されるべきである。
消費者ができることは何か
消費者は、非動物性食品の取り扱い、調理および保存を常に安全な方法で行うべきである。たとえば、手指と台所を清潔に保つこと、生と加熱済みの食品を分けること、食品を安全な温度で保存することなどである。
今回の調査で直面した困難な問題は主に何であったか
今回検討した食品の種類は多岐にわたり、生産、保管、加工、小売りおよび調理の方法も様々である。このような取り組みには、広範囲の専門知識とスキルが必要であった。
この調査にどのように取り組んだか
作業部会には相互補完的で多様な専門知識とスキルがあり、チームが一丸となって取り組んだ。EFSA科学事務局の支援も重要であった。また、欧州疾病予防管理センター(ECDC)のスタッフ、BIOHAZパネルのメンバー、EFSA職員、および食品業界関係者からも情報が得られた。スペインMurciaの葉物野菜農場を訪れ、栽培方法と収穫方法を直接観察できたことは極めて有意義であった。
今回の調査結果はどんなことに役立つか
EFSAの科学的助言は、欧州委員会が非動物性食品中の微生物学的ハザードに対するリスク管理対策を検討する際に有用である。また、欧州の他の機関、各国のリスク評価者とリスク管理者、大学および食品業界にも有益と考えられる。
(食品安全情報(微生物)No.2 / 2015 (2015.01.21)、No.1 / 2015 (2015.01.07)、No.22 / 2014 (2014.10.29)、No.14 / 2014 (2014.07.09)、No.2 / 2013 (2013.01.23) EFSA記事参照)