(食品安全情報2014年25号(2014/12/10)収載)
アイルランド食品安全局(FSAI)が2013年の年次報告書を発行した。このうち食品インシデントに関する内容の一部を紹介する。
食品関連インシデント
食品関連インシデントは、食品事業者によって、または公的管理の際に公的機関によって指摘された問題、あるいは「食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF)」を介した他国からの情報によって特定された問題から発生することがある。
2013年、FSAIは2012年(n=404)より11%多い449件の食品関連インシデントに対応した。食品関連インシデントは、重大な食品関連インシデント(full food incident)、重要度の低い食品関連インシデント(minor food incident)および複数国にわたる食品関連苦情(cross-country food complaints)に分類され、さらに2013年には食品偽装に関連するインシデントのために新しいカテゴリーが導入された(表)。
2013年、FSAIは2012年より55件(34%)多い217件の重大な食品関連インシデント(食品偽装インシデント9件を含む)の調査を行った。ハザード別では、化学的ハザードが最も多く(70件)、次いで微生物学的ハザード(47件)、その他のハザード(44件)、アレルゲン(24件)、その他の生物学的ハザード(マイコトキシンを含む、16件)であった(図)。化学的ハザードの内訳は、成分/添加物によるものが最も多く(28件)、次いで殺虫剤/残留動物用医薬品(13件)、化学物質汚染(12件)、食品接触材料からの移行(8件)であった。
重要度の低いインシデントに関しては、FSAIは2013年に2012年より23件(16%)少ない計141件の調査を行った。また、FSAIは2013年に91件の複数国にわたる食品関連苦情に対応した(2012年は75件)。全449件の食品関連インシデントに関連した食品の原産国は39カ国で、このうち17カ国が欧州連合(EU)加盟国であった。全体の36%のインシデント(160件)にアイルランド共和国が原産の食品が関連し、以下、英国が19%(85件)、北アイルランドが5%(24件)、ポーランドが3.1%(14件)、フランスが2.9%(13件)、中国が2.7%(12件)の順であった。
図:重大な食品関連インシデントにおけるハザードの分布(2013年、計217件)
表:食品関連インシデントの件数(2009〜2013年)
食品関連アラート(国内向け)
2013年、FSAIはインシデント24件に関連して食品関連アラート25報を発した。このうち9報がカテゴリー1のアラート(alert for action)で、16報がカテゴリー2(alert for information)であった。これらの食品関連アラートのうち、9報が腐敗または病原体による汚染に、5報が馬肉混入に、4報ずつが異物または不純物の混入に、1報ずつが不適切なラベル表示、偽造品、または違法成分を含む補助食品にそれぞれ関連していた。食品関連アラートはすべてFSAIのWebサイトに掲載され、希望者にはテキストメッセージが電子メールで配信された。
食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF)
食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF)は、EU加盟国、欧州委員会(EC)および欧州食品安全機関(EFSA)などの間で食品・飼料・食品接触材料等から検出されたハザードに関する情報が共有できるように、ECが管理を行っている通報システムである。
本システムを介して2013年に発信された新規通知(original notification)は計3,132件で、内訳は食品関連が2,641件、飼料関連が272件、食品接触材料関連が219件であった。新規通知のうち警報通知(alert notification)は584件、フォローアップ情報(information for follow-up)は429件、注意喚起情報(information for attention)は679件、そして通関拒否通知(border rejection notification)は1,440件であった。これらに加えて38件のニュースが発信された。
FSAIは2013年に本システムを介して、アイルランドに輸入されたか、またはアイルランドから輸出された食品(30件)、飼料(2件)および食品接触材料(8件)に関連して計40件の新規通知を発信した。この件数は2012年より13件少なかった。2013年に食品または食品接触材料について本システムを介して発信した新規通知のうち、28件においてアイルランドが当該製品の原産国であった。この件数は2012年より10件多かった。RASFF全体での新規通知3,132件のうち85件(食品関連が71件、飼料関連が7件、食品接触材料関連が7件)で当該製品がアイルランドに輸入されていた。
食品由来疾患アウトブレイク
伝播の媒体として食品が疑われる疾患アウトブレイクが発生した場合、FSAIは、感染症のサーベイランスや疫学調査を担当するアイルランド保健サーベイランスセンター(HPSC)とその他の公的機関に緊密に協力して業務を行う。HPSCの暫定データによると、2013年には8件の胃腸炎(感染性胃腸疾患)アウトブレイクで食品が原因として疑われた。8件の内訳は、サルモネラ症アウトブレイクが4件、ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)感染アウトブレイクが2件、急性感染性胃腸炎アウトブレイクが1件およびノロウイルス感染アウトブレイクが1件であった。これら8件のアウトブレイクで計102人が罹患し、3人が入院した。VTEC感染アウトブレイクのうちの1件(大腸菌O157が原因菌)では、疾患と生乳由来チーズに疫学的および微生物学的関連が認められた。