(食品安全情報2014年22号(2014/10/29)収載)
ノロウイルスは、食品取扱者の手から非加熱で喫食される食品に容易に拡散する。手指の衛生管理が十分ではない場合に、保護手袋でウイルスの伝播を完全に防げるわけではない。ノロウイルス感染アウトブレイクの効果的な予防対策としては、保護手袋の頻繁な交換、ていねいな手洗い、清浄な原材料の使用などが挙げられる。
フィンランド食品安全局(Evira)、ヘルシンキ大学およびフィンランド技術研究センター(VTT Technical Research Centre of Finland)の研究グループは、模擬条件を使用し、食品取扱者の手から、そのまま喫食可能な(RTE)食品へのノロウイルスの伝播を調べた。本研究では食品としてキュウリサンドイッチを取り上げた。その理由は、キュウリサンドイッチは原材料が簡単で、調製時にキュウリを繰り返し手で取り扱う必要があるからである。キュウリ自体はリスクの小さい食品である。
ノロウイルスは成人の胃腸炎の主要な原因の一つである。2013年、フィンランドの食品由来感染症の約1/3はノロウイルスが原因であった。食品由来のノロウイルス感染アウトブレイクは、しばしば、感染した食品取扱者や調理者に関連付けられてきた。
ノロウイルスは便や吐瀉物を介したヒト−ヒト感染が特に症状発現時に容易に起こるが、この感染は症状が治まって長時間経過してからでも起こり得る。症状を呈していない人から伝播することもある。さらにノロウイルスは食品、水、様々な物の表面(ドアの取っ手など)、また、時には布などを介して感染する。
食品のノロウイルス汚染に対する手指の衛生の影響を評価する研究が実施された。実験条件下で、ノロウイルスに汚染された手から保護手袋へウイルスが微量ではあるものの再現性良く移行することがわかった。本研究ではまた、表面がノロウイルスで汚染されたキュウリからサンドイッチに移行するウイルス量も測定された。キュウリサンドイッチへのノロウイルスの移行について、汚染された食品素材よりウイルスに汚染された保護手袋による方がはるかに容易に移行が生じた。
今回の結果は、手作りの食品へのノロウイルスの伝播が評価できるように、本研究で作成された数理モデルに取り込まれた。このモデルは、保護手袋を装着してサンドイッチを調理する前に食品取扱者の手から検出されるノロウイルスの量と、食品取扱者の手からサンドイッチに移行するウイルスの量との関係を求めることに使用された。
(原著論文)
Rönnqvist, M., Aho, E., Mikkelä, A., Ranta, J., Tuominen, P., Rättö, M., Maunula, L.
Norovirus Transmission between Hands, Gloves, Utensils, and Fresh Produce during Simulated Food Handling.
Applied and Environmental Microbiology 2014: Vol. 80, No. 17, pp. 5403-5410.